用量依存性(用量比例性)とは?
第I相試験の用量漸増で、血中濃度のデータが集まってきます。10 mgから30 mg、100 mgと上げたとき、曝露を表すAUCやCmax投与後に達する最も高い血中濃度。薬がどれくらいの速さで届くかの指標。詳しく →がきれいに3倍、10倍と伸びるのか、それとも途中で頭打ちになったり、逆に跳ね上がったりするのか。用量と曝露の関係をどう読み、どこまでを「比例している」と見なすかで、次の用量の決め方も安全域の見積もりも変わってきます。

用量依存性(用量比例性、dose proportionality)とは、用量を増やしたときに曝露(AUCやCmax)が同じ比率で増える関係を指します。用量を2倍にすればAUCも約2倍、これが成り立つ状態を線形PK(薬物動態)と呼びます。多くの薬は臨床で使う用量域ではこれに近くふるまいますが、吸収・代謝・排泄やトランスポーター、タンパク結合のどこかが飽和すると比例から外れ、曝露が用量ほど増えない(劣加算)か、用量以上に跳ね上がる(過加算)かのどちらかに振れます。比例しているかは、用量で割った曝露(用量正規化AUC)を並べるか、べき乗モデルの傾きで判定します。
なぜそうなるのか
静脈投与なら、曝露の総量AUCは用量をクリアランス(CL、薬を血液から取り除く速さ)で割った値で決まります。経口なら、ここに吸収されて全身へ届いた割合であるバイオアベイラビリティ投与した薬のうち、未変化のまま全身循環に到達する割合。静脈内投与を100%として比較する。詳しく →(F)が掛かります。CLもFも用量によって動かない定数であれば、用量を上げた分だけAUC遠心中の試料の沈み方を光で測り、分子の大きさや会合状態を調べる分析装置です。純度や凝集の評価に使います。詳しく →はまっすぐ増える。これが線形PKで、用量比例性が成り立つ状態です。
比例が崩れるのは、体のどこかに処理できる上限があるからです。薬を代謝する酵素も、細胞膜で薬を運ぶトランスポーター細胞膜にあり薬を細胞外へ汲み出したり内へ引き込んだりして、体内濃度を左右するタンパク質。詳しく →も、血漿中で薬をつかまえるタンパクも、数に限りがあります。濃度が低いうちは濃度に比例して処理が進みますが(ミカエリス・メンテン型(Michaelis–Menten)の一次速度)、濃度が上がって処理能力の目安であるKmに近づくと、速度は最大値Vmaxで頭打ちになり、見かけのクリアランスが下がります。すると曝露は用量以上に増えます。抗てんかん薬のフェニトインが典型で、わずかな増量で定常状態増殖と引き抜きが釣り合い、細胞密度や代謝の指標が時間で大きく動かない状態。詳しく →の血中濃度が大きく跳ね上がります。逆に、溶解度や取り込みトランスポーターが律速になって高用量ほど吸収率が落ちる薬では、曝露は用量ほど伸びません。
つまり用量比例性は薬の良し悪しというより、投与した用量域でどの処理経路も飽和していないかどうかの問題です。
現場で分かれるところ
比例しているかの線引きに、唯一の決まった基準はありません。使う手法で結論が変わります。よく使うのはべき乗モデル(power model)で、曝露と用量をそれぞれ対数に変換して直線をあてはめ、その傾きβを見ます。完全に比例するならβは1、βが1より大きければ過加算、1より小さければ劣加算です。Smithらは2000年に、この傾きの90%信頼区間が、生物学的同等性二つの製剤が同程度に全身へ届くことを示すこと。後発品の評価などで用いる。詳しく →で使う0.8〜1.25の範囲から導いた許容幅に収まれば比例とみなす基準を示しました。用量の幅が広いほどこの許容幅は狭くなるので、同じデータでも判定は厳しくなります。
ただしこの基準は用量域が広いと通りにくく、Hummelらは2009年に、評価の目的によってはもっと緩い幅(傾きで0.5〜2.0に相当する例を提案)でよいとしています。確認を目的とする試験と、傾向をつかむ探索的な試験で、求める厳しさを変えるという考え方です。
判定の結果は、次の投与設計と安全性の見積もりに直結します。過加算の薬は、高用量で曝露が想定以上に伸びるため、増量したときの副作用リスクを過小評価しやすい。劣加算の薬は、用量を上げても曝露が頭打ちになり、効果が伸びなくなる用量の見極めが要ります。どちらも、ひとつの用量のデータを単純に外挿して別の用量の曝露を読むと外します。
用量比例性は「ある・ない」の二択ではなく、どの用量域で成り立つかの話です。報告書に「用量比例性を示した」とあったら、検討した用量の範囲と、どの手法でどの許容幅を使って判定したかまで確かめます。狭い用量幅で緩い基準による結論なら、別の用量へ外挿する根拠としては弱いことがあります。
もっと詳しく知るなら
曝露そのものであるAUC・Cmax・Tmax投与後にCmaxに達するまでの時間で、薬物の吸収速度の指標として用いられる。詳しく →を血中濃度曲線からどう読み分けるかは、AUC・Cmax・Tmaxとはにまとめています。比例が崩れる仕組みを、代謝酵素やトランスポーターの飽和、血漿タンパク結合の飽和、抗体の標的介在性クリアランス(TMDD)抗体が標的に結合して複合体ごと消失するために生じる、用量応答の非線形な振る舞い。まで原因ごとに掘り下げ、蓄積や安全性への影響まで追ったものは、非線形薬物動態とはで扱っています。
用量依存性化合物の量を増やすほど反応も増える関係。Ames試験では陽性と判定する根拠の一つになる。詳しく →とは、用量を上げたときに曝露が同じ比率で伸びるかという関係で、成り立つかどうかは薬の良し悪しではなく、調べた用量域で処理経路が飽和していないかと、どの基準で判定したかで決まります。
参考文献
- Smith BP, Vandenhende FR, DeSante KA, et al. Confidence interval criteria for assessment of dose proportionality. Pharm Res. 2000;17(10):1278-1283.
- Hummel J, McKendrick S, Brindley C, French R. Exploratory assessment of dose proportionality: review of current approaches and proposal for a practical criterion. Pharm Stat. 2009;8(1):38-49. doi:10.1002/pst.326
- Ludden TM. Nonlinear pharmacokinetics: clinical implications. Clin Pharmacokinet. 1991;20(6):429-446. doi:10.2165/00003088-199120060-00001
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