低分子の研究・非臨床マップ
SAR最適化とADME、選択性パネル・hERG、標準化された毒性評価まで。 探索・設計から安全性・非臨床まで、そのモダリティのやり方で通しで追えます。
探索・設計
狙う疾患メカニズムと標的を決め、モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →を選び、分子・ベクター・細胞を設計して候補を絞り込みます。ここでの選択が、後段の評価の仕方をすべて規定します。
- やること(手法・実験)標的タンパクの立体構造に結合ポケット酵素や受容体の表面にあり、薬分子がはまり込むくぼみ。SBDDで設計の要件を読み取る場所。詳しく →(活性部位・アロステリック部位)があるか=druggabilityを評価。構造解析・in silicoでポケット検出、ケミカルツールで機序を検証読み出し・指標ポケットの有無・ドラッガビリティ、ヒト遺伝学・ノックダウン表現型、細胞内標的への到達性留意点タンパク間相互作用など浅い界面は難標的。細胞内・CNS脳と脊髄のことで、安全性薬理では意識・運動・体温などへの急な影響を評価する対象。詳しく →など到達性は有利深掘り標的選定と疾患仮説
モダリティ選択
標的と適応に対して、どのモダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →が最も適しているか
やること(手法・実験)細胞膜を透過し、細胞内の酵素・受容体・タンパク間相互作用などを標的化します。経口投与と広い組織分布が可能で、合成・製造も確立しています読み出し・指標経口バイオアベイラビリティ投与した薬のうち、未変化のまま全身循環に到達する割合。静脈内投与を100%として比較する。詳しく →、細胞内標的への到達、広い生体内分布投与した薬が体内のどこにどれだけ届き、どれだけ留まるかを測る評価のこと。詳しく →留意点類縁分子との選択性確保が難しく、オフターゲット毒性のリスクがあります。平坦な結合界面や一部のアンドラッガブル標的は狙いにくいです深掘りモダリティ選択ガイド分子・ベクター・細胞設計
配列・抗原・LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。・ベクター・細胞をどう設計するか(モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →別の設計変数と目標)
やること(手法・実験)構造ベース設計(SBDD標的タンパク質の立体構造を手がかりに、そこに結合する分子を狙って設計する創薬手法。)とSAR分子の構造をどう変えると効き目や毒性がどう変わるかの関係。化合物最適化の指針になる。詳しく →(構造活性相関分子の構造をどう変えると効き目や毒性がどう変わるかの関係。化合物最適化の指針になる。詳しく →)でリードを最適化。複合体のX線構造や自由エネルギー計算で結合様式を読み、活性・選択性と同時に物性(溶解度・LogD・pKa)と代謝安定性肝ミクロソームや肝細胞などを用いた試験管内試験で、薬物が代謝酵素によってどれだけ速く分解されるかを評価する指標。詳しく →を多目的で詰めます読み出し・指標IC50/Ki、標的ファミリー内選択性、リガンド効率(LE/LLE)、溶解度・LogD・膜透過性化合物が細胞膜を透過する速さの指標。経口薬の吸収性の評価に使われる。詳しく →、ミクロソーム代謝安定性肝ミクロソームや肝細胞などを用いた試験管内試験で、薬物が代謝酵素によってどれだけ速く分解されるかを評価する指標。詳しく →留意点活性だけを追うと物性と代謝が崩れ、先へ進めなくなります。多パラメータ最適化が本質で、誘導体を回す合成の速さも律速になります深掘り分子・ベクター・細胞設計候補スクリーニング
候補分子・ベクター・細胞をどう絞り込むか(一次スクリーニングの設計)
やること(手法・実験)化合物ライブラリのHTS(数十万〜百万規模)に加え、フラグメント創薬重原子数の小さな低分子(フラグメント)を出発点に、活性を積み上げて薬剤を設計する創薬手法。詳しく →(FBDD分子量300前後の小さな断片を標的に弱く結合させ、構造情報を頼りに薬らしく育てる低分子創薬法。)、DNAエンコードライブラリ(DEL)、バーチャルスクリーニング多数の化合物を計算機上でふるいにかけ、合成・試験する候補を絞り込む手法。でヒットを取ります。ヒット確認→用量反応→カウンタースクリーンの順に偽陽性を落とします読み出し・指標ヒット率、IC50/EC50応答を半分まで立ち上げる濃度のことで、作動薬など活性化系の効力指標に使う。詳しく →、Z′アッセイのシグナルとバックグラウンドの分離のよさを、差とばらつきから一つの数値で表す品質指標。詳しく →因子・S/B比シグナルがバックグラウンドの何倍かを表す指標。アッセイのダイナミックレンジを示す。(アッセイ頑健性)、選択性、再現性留意点凝集体形成・蛍光干渉・反応性化合物(PAINS)による偽陽性の除去が要になります。ヒットの化学的な発展性(合成展開のしやすさ)も同時に見ます
薬効・作用機序
標的に結合し・細胞に入り・狙った作用が出るかを、細胞から動物モデルまでで確かめます。「効くか」の中身はモダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →ごとに大きく変わります。
結合・取り込み・発現評価
標的に結合し、細胞に入り、意図した分子効果(発現・ノックダウン)まで到達するか
やること(手法・実験)SPR金属薄膜表面での光の共鳴変化を利用し、分子同士の結合と解離をリアルタイムに測る手法です。抗体などの親和性評価に広く使われます。詳しく →/BLIセンサー先端に結合した分子の膜厚変化を光の干渉で捉え、抗体などの結合・解離のしやすさ(親和性)をリアルタイムで測る手法です。詳しく →/ITCで結合の速度論と熱力学を取り、標的に留まる時間(residence time)まで見ます。細胞では膜透過性化合物が細胞膜を透過する速さの指標。経口薬の吸収性の評価に使われる。詳しく →(PAMPA・Caco-2ヒト大腸がん由来の細胞株。単層が小腸上皮に近く、腸吸収の見込みを試験管内で測るのに使う。詳しく →)と排出トランスポーターの影響を測り、CETSAやNanoBRETで細胞内の標的到達を確認します読み出し・指標KD、kon/koff、滞留時間、ΔH/ΔS、透過係数Papp・efflux ratio透過をB→AとA→Bの比で表す指標。2以上だとP-gpなどによる能動的な排出を疑う。詳しく →、細胞内での標的占有薬が狙った標的に実際どれだけ結合しているかの度合い。標的占有とも呼ばれる。率留意点結合の強さより「細胞内で標的に届き、必要な時間とどまるか」が効きます。P-gp腸上皮などにある排出トランスポーター。取り込んだ薬を管腔側へ汲み出して吸収を下げる。の基質になると脳への移行が伸びません- やること(手法・実験)酵素反応速度論で阻害様式(競合/非競合/不可逆)とKiを決め、細胞アッセイで機能変化を確認します。CRISPRノックアウト遺伝子を機能破壊する編集。切断後のNHEJで生じるインデルが読み枠をずらして機能を失わせる。詳しく →や耐性変異の導入によるレスキュー実験で、効果が本当に狙った標的を介しているか(オンターゲット性)を示します読み出し・指標IC50/EC50応答を半分まで立ち上げる濃度のことで、作動薬など活性化系の効力指標に使う。詳しく →、Ki、阻害様式、標的占有薬が狙った標的に実際どれだけ結合しているかの度合い。標的占有とも呼ばれる。率、耐性変異でのシフト、下流シグナルの変化留意点細胞毒性による見かけの効果と、真の標的阻害を切り分ける必要があります。不可逆阻害剤ではkinact/KIで評価します深掘り中和・機能アッセイ
- やること(手法・実験)疾患モデル動物へ経口・静注で投与し、薬効と同時に血漿・組織中の曝露量を必ず取ります。用量―曝露―薬効(PK/PD)を結び、有効な曝露域を決めます読み出し・指標腫瘍増殖抑制率(TGI)・症状スコア等の薬効指標、ED50、有効時の血漿中濃度、標的占有薬が狙った標的に実際どれだけ結合しているかの度合い。標的占有とも呼ばれる。率留意点薬効が出ないとき、曝露不足なのか薬理が足りないのかを切り分けられないと開発判断を誤ります。動物とヒトの代謝差にも注意が要ります深掘り薬効モデル評価
バイオマーカー・PD評価
作用が体内で起きているか(薬効・作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。詳しく →の発現)を、どのマーカーと測定法で読むか
やること(手法・実験)標的経路の下流マーカー(基質のリン酸化など)を腫瘍・血液・皮膚などで測り、曝露とPD抑制の関係を作ります。これを用量設定の根拠にします読み出し・指標PDマーカーの抑制率、PDのEC50応答を半分まで立ち上げる濃度のことで、作動薬など活性化系の効力指標に使う。詳しく →/IC50、抑制の持続時間、曝露量との相関留意点採取できる組織で測れるマーカーを選べるかが実務上の制約です。臨床でも同じ測定ができるかを設計段階で考えます深掘りバイオマーカー・PD評価
PK/PD・曝露評価
血中濃度・半減期・作用持続を、モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →ごとにどの分析物・どの手法で見るか
やること(手法・実験)げっ歯類・非げっ歯類で経口/静注のPK(Cmax投与後に達する最も高い血中濃度。薬がどれくらいの速さで届くかの指標。詳しく →・AUC・t1/2・CL・Vd・F)を取得します。並行して肝ミクロソーム肝細胞をすりつぶして得た小胞体由来の画分。CYPなどの代謝酵素が濃縮され、代謝安定性の評価に使う。詳しく →・肝細胞での代謝安定性肝ミクロソームや肝細胞などを用いた試験管内試験で、薬物が代謝酵素によってどれだけ速く分解されるかを評価する指標。詳しく →、血漿タンパク結合薬がアルブミンなど血中のタンパク質に結合すること。結合が強いと薬は血中に留まり分布容積は小さくなる。詳しく →、CYP肝臓に多く存在する代表的な薬物代謝酵素群。多くの低分子医薬の代謝を担う。詳しく →阻害・誘導、トランスポーター相互作用をin vitro生きた動物の体外で、試験管やシャーレなどを用いて細胞・組織・分子レベルで行う実験を指す用語。詳しく →で押さえます読み出し・指標バイオアベイラビリティ投与した薬のうち、未変化のまま全身循環に到達する割合。静脈内投与を100%として比較する。詳しく →(F)、クリアランス、半減期、非結合分率(fu)、CYP肝臓に多く存在する代表的な薬物代謝酵素群。多くの低分子医薬の代謝を担う。詳しく →阻害IC50、代謝安定性肝ミクロソームや肝細胞などを用いた試験管内試験で、薬物が代謝酵素によってどれだけ速く分解されるかを評価する指標。詳しく →(CLint)留意点低分子でもっとも作り込まれた領域です。経口吸収と代謝安定性肝ミクロソームや肝細胞などを用いた試験管内試験で、薬物が代謝酵素によってどれだけ速く分解されるかを評価する指標。詳しく →が律速になりやすく、PBPKによるヒトPK予測の精度が開発判断を左右します組織分布・biodistribution
目的の組織・細胞に届いているか、そして不要な臓器(特に肝・脾や生殖腺)へ過度に集まっていないかを、組織別にどう定量するか。
やること(手法・実験)14C等で放射標識した化合物を投与し、全身凍結切片固定せず凍らせて薄く切った組織標本。抗原の形が保たれ、抗体本来の結合を見やすい。の定量的全身オートラジオグラフィー(QWBA)で臓器ごとの分布と消失を可視化します。組織中濃度はLC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →/MSでも定量し、脳移行やメラニン結合の有無を確認します読み出し・指標組織/血漿濃度比(Kp)、組織別のTmax・消失半減期、脳内非結合分率、排泄経路と回収率(マスバランス)深掘り組織分布評価
免疫原性・ADA
抗薬物抗体(ADA)投与した薬に対して患者の体内でできる抗体。効果や安全性に影響しうるため監視される。や免疫反応をどのモダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →でどう捉えるか
やること(手法・実験)低分子はタンパク質ではないため、抗薬物抗体(ADA)投与した薬に対して患者の体内でできる抗体。効果や安全性に影響しうるため監視される。を測る免疫原性薬そのものが患者の免疫応答を誘発しやすい性質。凝集体や不純物、投与経路、患者背景などが要因になる。詳しく →評価は原則として対象外です。代わりに、反応性代謝物が生体高分子と共有結合してハプテンとなる経路をリスクとして見ます。肝ミクロソーム肝細胞をすりつぶして得た小胞体由来の画分。CYPなどの代謝酵素が濃縮され、代謝安定性の評価に使う。詳しく →中でのGSHトラッピングや、放射標識体を用いた共有結合量の測定を行います読み出し・指標GSH付加体の有無と生成量、タンパクへの共有結合量(covalent binding)、構造アラートの有無留意点抗体医薬のADA・中和抗体の枠組みは適用されません。特異体質性の薬物性肝障害などとの関連で議論され、設計段階で構造アラート(アニリン・チオフェン等)を避けるのが実務的な対策になります深掘り免疫原性・ADAオフターゲット・交差反応性
意図しない標的・組織・配列への作用を、モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →ごとに適した方法で評価できているか
やること(手法・実験)標的ファミリー内の選択性(キナーゼパネル等)と、ファミリー外の広域セーフティパネル(GPCR・イオンチャネル・トランスポーター・酵素)で当たりを網羅的に見ます。心毒性に直結するhERG心筋の再分極を担うカリウムチャネルの一種。薬が塞ぐとQT延長や不整脈につながるため早期に評価する。詳しく →は自動パッチクランプ細胞1個の膜に流れるごく小さな電流を測る電気生理学的手法。hERGアッセイの土台になる。詳しく →で必ず評価します読み出し・指標パネル各標的の阻害率・IC50、選択性スコア、hERG心筋の再分極を担うカリウムチャネルの一種。薬が塞ぐとQT延長や不整脈につながるため早期に評価する。詳しく → IC50と曝露に対する安全域、CiPAhERG単独に頼らず、複数のイオンチャネルへの作用を統合してTdPリスクを予測する枠組み。詳しく →関連チャネル(Nav1.5・Cav1.2)への作用留意点低分子で最大のリスク源です。構造の似た標的ほど外しにくく、選択性の確保が化学最適化の主戦場になります深掘り組織交差反応性- やること(手法・実験)ICH M3(R2)臨床試験を支える非臨床安全性試験の実施時期や内容の全体像を示すICHガイドライン。詳しく →に沿って、げっ歯類・非げっ歯類でのGLP非臨床試験の信頼性を担保するための基準。申請用のhERG試験などで求められる。詳しく →反復投与毒性試験薬を繰り返し与え、どの臓器がどの量から傷むか、回復するかを調べる中核の毒性試験。詳しく →を実施します。並行して遺伝毒性化合物が遺伝子や染色体を傷つける性質。点突然変異や染色体損傷を含み、複数の試験で分担して調べる。詳しく →バッテリー(Ames、in vitro生きた動物の体外で、試験管やシャーレなどを用いて細胞・組織・分子レベルで行う実験を指す用語。詳しく →小核/染色体異常、in vivo小核)と、安全性薬理心血管・中枢神経・呼吸への急な影響を、臓器毒性とは別枠で見る評価(コア・バッテリー)。詳しく →コアバッテリー(心血管・中枢・呼吸:ICH S7A日米欧の規制当局が合意した、ヒト用医薬品の安全性薬理試験に関する国際的なガイドライン。詳しく →/S7B)を組みます深掘り毒性・安全性薬理
初回投与量設計
ヒト初回投与量(FIH)をどの根拠から設計するか
やること(手法・実験)動物NOAEL無毒性量。毒性試験で有害な影響が認められなかった最大の用量。PDE算出の出発点になる。詳しく →からHEDを体表面積換算で求め、安全係数(通常10、根拠に応じ調整)を掛けてMRSD感度の高い種のHEDを安全係数で割って求める、最初に投与してよい上限量。詳しく →を算出(FDA 2005 MRSDガイダンス/ICH M3(R2)臨床試験を支える非臨床安全性試験の実施時期や内容の全体像を示すICHガイドライン。詳しく →)。必要に応じPAD薬理作用が出始める用量(薬理活性量)で、開始用量が近すぎないか照らし合わせる。詳しく →と比較。読み出し・指標MRSD感度の高い種のHEDを安全係数で割って求める、最初に投与してよい上限量。詳しく →(mg/kgまたはmg/m2)、NOAEL無毒性量。毒性試験で有害な影響が認められなかった最大の用量。PDE算出の出発点になる。詳しく →/HED、安全係数留意点最も標準化された枠組み。急性・オフターゲット毒性が用量制限になることが多い。深掘り初回投与量設計