送達・体内動態トピック 10/15

組織分布・biodistribution

目的の組織・細胞に届いているか、そして不要な臓器(特に肝・脾や生殖腺)へ過度に集まっていないかを、組織別にどう定量するか。

7モダリティを比較87装置・試薬の代表例

モダリティ別の進め方(7比較)

モダリティアプローチ(手法)読み出し・指標留意点
抗体(mAb)放射標識体(¹²⁵I/¹¹¹In等)を用いた組織分布試験、または免疫組織化学・LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →/MSでの組織中濃度測定。血漿曝露(PK)と組織/血漿比から推定することも多いです。FcRnや標的抗原発現組織への分布を評価します。組織別の標識体濃度(%ID/g)または組織中抗体濃度、組織/血漿比完全長IgGは大きく血管透過が限られるため、標的抗原発現と血流に分布が強く依存します。FcRnによる血中半減期の長さも組織曝露に影響します。
ADC抗体部分・ペイロード・全ADC標的を選ぶ抗体に、細胞傷害性の薬物(ペイロード)をリンカーでつないだ分子。詳しく →を別々に追跡する設計が要点で、放射標識やLC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →/MSでリンカー切断後の遊離ペイロード分布も評価します。標的組織への送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →と非標的組織でのペイロード曝露を切り分けます。各アナライト(総抗体・結合体・遊離ペイロード)の組織別濃度、DAR抗体薬物複合体(ADC)で、抗体1分子に結合した薬物の平均数です。効果と安全性を左右するため測定する指標です。詳しく →関連の分布挙動遊離ペイロードのオフターゲット分布が毒性標的(骨髄・肝・消化管等)の予測に効きます。
mRNA-LNP標識脂質・標識mRNA、またはRT-qPCRによるmRNA組織量測定と、レポーター/標的タンパク発現の組織別評価。静脈内投与では肝、筋注では投与部位と所属リンパ節・脾の集積を評価します。組織別のmRNA量・発現タンパク量、LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。(脂質)の組織集積全身投与LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。は肝・脾集積が支配的になりやすく、投与経路とイオン化(ionizable)脂質の組成で分布が変わります。
AAV(遺伝子治療)qPCR/ddPCRでベクターゲノムコピー数を各臓器で定量する生体内分布投与した薬が体内のどこにどれだけ届き、どれだけ留まるかを測る評価のこと。詳しく →(biodistribution)試験。血液・肝・脾・生殖腺(性腺)を含む広範な組織を採取し、導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →mRNA/タンパク発現も併せて評価します。生殖腺分布は生殖細胞系列伝播リスクの観点で重視されます。組織別ベクターゲノムコピー数(vg/µg DNA または vg/細胞)、導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →発現、生殖腺分布ICH S12遺伝子治療製品の非臨床の組織分布評価の考え方を示すICHガイドライン。詳しく →の枠組みで、投与経路・血清型に応じた組織パネルと採取時点、生殖腺を含む評価が求められます。既存中和抗体や再投与の制約もAAV遺伝子治療で遺伝子を運ぶウイルスベクター。血清型によって集まりやすい組織が異なる。詳しく →特有の論点です。
siRNA・ASO(核酸)放射標識体・LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →/MS・ハイブリダイゼーションELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →(hybridization ELISA/HELISA)等で組織中濃度を測定。無修飾/コンジュゲート(GalNAc等)で分布が変わり、肝・腎への蓄積を中心に評価します。組織別の親分子・代謝物濃度、肝・腎蓄積、標的mRNAノックダウンGalNAc-siRNAは肝実質細胞(肝細胞)指向、多くのASO標的RNAに相補的な配列をもつ一本鎖の短い核酸。RNAに結合して働きを抑えたり書き換えたりする。詳しく →は腎・肝に蓄積しやすい点が分布の要点です。
細胞治療(CAR-T・iPS)生体内トラフィッキング(in vivo trafficking)評価。CAR-T患者や健常ドナーのT細胞にCAR(キメラ抗原受容体)を導入し、がん細胞を攻撃させる細胞治療。詳しく →等の遺伝子改変細胞では導入ベクター/導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →をqPCRで各組織のコピー数として定量し、標識細胞のin vivoイメージング(生物発光・PET等)で経時的分布を追跡します。非改変のiPS由来細胞ではドナー特異的マーカーやイメージングで局在・生着を把握します。組織別の細胞由来DNAコピー数(persistence投与したベクターや細胞が体内にどれだけ長く残り続けるか。分布・sheddingと一体で評価する。/biodistribution)、イメージングによる局在・生着、増殖動態細胞は増殖・移動するため、単回スナップショットでなく経時的なトラフィッキングと持続性の把握が要点です。従来のPKパラメータではなく細胞動態として捉えます。
低分子14C等で放射標識した化合物を投与し、全身凍結切片固定せず凍らせて薄く切った組織標本。抗原の形が保たれ、抗体本来の結合を見やすい。の定量的全身オートラジオグラフィー(QWBA)で臓器ごとの分布と消失を可視化します。組織中濃度はLC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →/MSでも定量し、脳移行やメラニン結合の有無を確認します組織/血漿濃度比(Kp)、組織別のTmax・消失半減期、脳内非結合分率、排泄経路と回収率(マスバランス)放射標識体を用いたADME薬物の吸収・分布・代謝・排泄という体内動態の4要素。脂溶性の設計とも深く関わる。詳しく →・マスバランス試験は、代謝物プロファイルとあわせてヒト試験の設計根拠になります(ICH M3(R2)臨床試験を支える非臨床安全性試験の実施時期や内容の全体像を示すICHガイドライン。詳しく →)

共通の考え方「どの臓器にどれだけ」を組織別の定量値として押さえるのが基本で、モダリティによって測る対象(分子そのものの濃度か、ベクターゲノムか、細胞由来DNAか)と手法が変わります。

このトピックで使う装置・試薬87件

装置・試薬はモダリティをまたいで共通のものが多く、同じ名前が何度も出てきます。

抗体15件
装置・機器8
試薬・キット7
  • 放射性ヨウ素標識試薬(¹²⁵I/¹³¹I・チロシン残基標識)Thermo Scientific Pierce Iodination Reagent(Iodo-Gen)・Iodination Tubes、chloramine-T(Sigma-Aldrich)、Perkin Elmer/Revvity Na¹²⁵I
  • 二官能性キレーター(¹¹¹In/⁸⁹Zr等の金属核種標識)Macrocyclics p-SCN-Bn-DOTA・p-SCN-Bn-DTPA、CheMatech DOTA-NHS、ABX/Macrocyclics p-SCN-Bn-Deferoxamine(DFO)
  • 放射性核種(インジウム111・ジルコニウム89)Curium/Lantheus ¹¹¹InCl₃、Perkin Elmer ¹¹¹In、3D Imaging/PerkinElmer ⁸⁹Zr-oxalate
  • 組織可溶化剤・シンチレーション試薬PerkinElmer Solvable、PerkinElmer Ultima Gold(LSC用)
  • 抗体濃度定量用ELISAキット・抗ヒトIgG抗体Bethyl/Fortis Human IgG ELISA、Jackson ImmunoResearch 抗ヒトIgG-HRP
  • LC-MS/MS用消化酵素・安定同位体標識内標準ペプチドPromega Trypsin Gold、New England Biolabs Trypsin、JPT/Thermo AQUA重標識ペプチド
  • IHC用一次抗体・検出キット・DAB発色系Roche/Ventana DISCOVERY DAB、Agilent Dako EnVision FLEX
ADC13件
装置・機器7
試薬・キット6
  • 放射性核種標識試薬(抗体部分・ペイロードの個別トレース)Thermo Pierce Iodo-Gen(¹²⁵I)、Macrocyclics p-SCN-Bn-DFO(⁸⁹Zr)、Curium ¹¹¹InCl₃
  • ペイロード定量用標準品・安定同位体標識内標準MedChemExpress/Toronto Research Chemicals MMAE・DM1標準品、重標識(d/¹³C¹⁵N)ペイロード内標準
  • 免疫親和精製用抗体・磁気ビーズ(全ADC/抗体キャプチャ)Thermo Dynabeads Protein A/G、Cytiva Streptavidin磁気ビーズ、抗イディオタイプ抗体(カスタム)
  • 酵素消化・脱コンジュゲート試薬(conjugatedペイロード遊離)Promega Trypsin Gold、パパイン/リソソーム酵素、NEB endoproteinase
  • 遊離ペイロードELISA/リガンド結合キット(該当時)抗ペイロードモノクローナル抗体(カスタム)ベースアッセイ試薬
  • MALDIマトリックス試薬Bruker α-CHCA・DHB matrix、Sigma-Aldrich CHCA
mRNA-LNP13件
装置・機器7
試薬・キット6
  • ルシフェラーゼ発光基質・アッセイシステムPromega Steady-Glo・ONE-Glo・Bright-Glo、Revvity/PerkinElmer D-Luciferin(in vivoグレード)
  • 逆転写・qPCR試薬(mRNA組織量測定)Thermo TaqMan Fast Advanced Master Mix・SuperScript IV、Bio-Rad iScript・iTaq、Roche Transcriptor
  • RNA抽出キット(組織ホモジネートからのtotal RNA)QIAGEN RNeasy・miRNeasy、Thermo TRIzol・PureLink RNA
  • 蛍光標識脂質(LNP膜のトレース)Thermo/Invitrogen DiR・DiD、Avanti Polar Lipids 蛍光リン脂質(NBD/Rhodamine-PE)
  • 標的/レポータータンパク定量ELISAキットR&D Systems/Bio-Techne DuoSet、抗ルシフェラーゼ抗体(Abcam等)
  • TaqManプローブ・カスタムアッセイ(mRNA配列特異)Thermo TaqMan Custom Assays、IDT PrimeTime qPCR Assays
AAV12件
装置・機器6
試薬・キット6
  • ddPCR/qPCR用マスターミックス・プローブ(vgコピー数定量)Bio-Rad ddPCR Supermix for Probes、Thermo TaqMan Fast Advanced Master Mix、IDT PrimeTime Assays
  • gDNA抽出キット(多臓器対応)QIAGEN DNeasy Blood & Tissue・QIAamp、Thermo MagMAX DNA
  • 導入遺伝子mRNA発現用逆転写・RT-qPCR試薬Thermo SuperScript IV・TaqMan RT reagents、Bio-Rad iScript
  • ベクター/導入遺伝子特異的プライマー・プローブ(ITR/導入遺伝子)Thermo TaqMan Custom Assays、IDT カスタムプライマー・probe
  • リファレンス遺伝子・コピー数標準(ゲノム当量換算)Bio-Rad リファレンスアッセイ、Thermo RNase P コピー数リファレンス
  • IHC/IF用検出試薬(導入タンパク発現局在)Roche/Ventana DISCOVERY DAB、Agilent Dako EnVision FLEX、Thermo/Invitrogen蛍光二次抗体
核酸13件
装置・機器7
試薬・キット6
細胞治療13件
装置・機器7
試薬・キット6
  • ddPCR/qPCR用マスターミックス・プローブ(ベクター/CARトランスジーン定量)Bio-Rad ddPCR Supermix for Probes、Thermo TaqMan Fast Advanced、IDTカスタムプローブ
  • gDNA抽出キット(血液・組織)QIAGEN DNeasy Blood & Tissue・QIAamp DNA、Thermo MagMAX DNA
  • 生物発光レポーター基質・標識試薬(ルシフェラーゼ発現細胞)Promega D-Luciferin(in vivoグレード)・NanoLuc基質、Revvity XenoLight D-Luciferin
  • 細胞放射/近赤外標識試薬(⁸⁹Zr-DFO・膜色素)Macrocyclics p-SCN-Bn-DFO、Thermo/Invitrogen DiR・CFSE
  • フロー用抗体・多量体試薬(CAR検出・ドナーマーカー)BioLegend/BD 抗CD3・抗CD19抗体、Miltenyi CAR検出試薬、抗ヒトHLA抗体
  • ベクター/導入遺伝子特異的プライマー・リファレンスアッセイIDTカスタムプライマー・probe、Thermo RNase Pコピー数リファレンス
低分子8件
装置・機器5
試薬・キット3
  • 放射標識体(14C / 3H標識化合物・受託合成)各CROでの標識合成(代謝安定な位置への標識設計が要)
  • オートラジオグラフィー用イメージングプレート・標準線源Cytiva ストレージフォスファースクリーン、14C標準スケール
  • シンチレーションカクテル・組織可溶化剤PerkinElmer Ultima Gold、PerkinElmer Solvable
規制・注意遺伝子治療製品では生体内分布試験(vector biodistribution)が規制上求められ、組織パネル・採取時点・生殖腺を含めて設計します。体内で複製・増殖しうるベクターや細胞なら、持続性と生殖細胞系列への伝播も併せて検討します。

一次資料ICH S12(遺伝子治療製品の非臨床生体内分布に関する考慮事項 / Nonclinical Biodistribution Considerations for Gene Therapy Products)、ICH S6(R1)(バイオ医薬品の非臨床安全性評価)、ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価)、FDA Guidance for Industry「Preclinical Assessment of Investigational Cellular and Gene Therapy Products」。

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