薬効・作用機序トピック 5/15

結合・取り込み・発現評価

標的に結合し、細胞に入り、意図した分子効果(発現・ノックダウン)まで到達するか

7モダリティを比較68装置・試薬の代表例

モダリティ別の進め方(7比較)

モダリティアプローチ(手法)読み出し・指標留意点
抗体(mAb)SPR金属薄膜表面での光の共鳴変化を利用し、分子同士の結合と解離をリアルタイムに測る手法です。抗体などの親和性評価に広く使われます。詳しく →(Biacore等)またはBLIセンサー先端に結合した分子の膜厚変化を光の干渉で捉え、抗体などの結合・解離のしやすさ(親和性)をリアルタイムで測る手法です。詳しく →(Octet等)で抗原との結合速度論を測定し、kon/koff/KDを算出。細胞表面抗原ではフローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →で細胞への結合を確認し、必要に応じて内在化(インターナリゼーション)を評価。KD(結合親和性)、kon/koff、細胞結合陽性率・MFI、内在化率精製抗原の配向・密度や再結合(アビディティ複数の結合点による見かけの結合力の高まり。多価化で強まる。詳しく →)の影響がkon/koffの解釈を左右するため、固定化方式と対照(アイソタイプ)の設定が重要になります。
ADC抗体部分の結合速度論はmAb単一のクローンに由来し、同じ標的部位を認識する均一な抗体。詳しく →同様にSPR金属薄膜表面での光の共鳴変化を利用し、分子同士の結合と解離をリアルタイムに測る手法です。抗体などの親和性評価に広く使われます。詳しく →/BLIセンサー先端に結合した分子の膜厚変化を光の干渉で捉え、抗体などの結合・解離のしやすさ(親和性)をリアルタイムで測る手法です。詳しく →で確認。加えて抗原依存的な内在化とリソソーム細胞内で不要なタンパク質などを分解する小器官。取り込まれた抗体の多くが最終的にここへ運ばれる。詳しく →への輸送、細胞内でのペイロード放出(トラフィッキング)を評価し、抗原発現量の異なる細胞株で結合・取り込みを比較。KD、内在化率、抗原発現量に依存した結合・取り込み、(後段の)ペイロード放出薬効は「結合→内在化→放出」の連鎖で決まるため、結合だけでなく内在化効率まで見ることが要点です。DAR抗体薬物複合体(ADC)で、抗体1分子に結合した薬物の平均数です。効果と安全性を左右するため測定する指標です。詳しく →(薬物抗体比抗体薬物複合体(ADC)で、抗体1分子に結合した薬物の平均数です。効果と安全性を左右するため測定する指標です。詳しく →)の影響も併せて確認します。
mRNA-LNP標識LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。(蛍光脂質やレポーターmRNA)で細胞取り込みを定量し、コードするタンパク質の発現量をELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →・ウエスタンブロット・フローで測定。ルシフェラーゼ等のレポーターで発現の経時推移を評価。細胞取り込み量、タンパク発現量(絶対量・陽性率)、発現の経時プロファイル取り込みと発現は細胞種・LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。組成(イオン化脂質脂質ナノ粒子(LNP)の主要材料で、pHによって電荷が変わる脂質です。核酸を包み込み、細胞の中へ送り込む役割を担います。詳しく →)で大きく変わり、エンドソーム細胞が外部から取り込んだ物質を包む小胞。内部が酸性化し、抗体はここでFcRnに結合する。詳しく →脱出が律速になりやすいため、目的の標的細胞での評価が前提になります。
AAV(遺伝子治療)目的細胞にベクターを添加し、MOI細胞1個あたりに接触させるウイルスやベクターの量の比。形質導入の効率やベクターコピー数を左右する条件。詳しく →(vg/cell)を振って形質導入ウイルスベクターを介して細胞に外来遺伝子を導入すること。導入細胞の割合が形質導入効率として評価される。詳しく →効率を評価。導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →産物の発現を、レポーター(GFP等)ならフロー、目的タンパクならELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →・ウエスタン・活性アッセイで定量。血清型・カプシドによる指向性(トロピズムウイルスベクターが特定の組織・細胞に向かう指向性。AAVでは血清型ごとに異なる。詳しく →)も比較。形質導入ウイルスベクターを介して細胞に外来遺伝子を導入すること。導入細胞の割合が形質導入効率として評価される。詳しく →率(%)、導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →発現量、MOI細胞1個あたりに接触させるウイルスやベクターの量の比。形質導入の効率やベクターコピー数を左右する条件。詳しく →依存性、血清型ごとの指向性in vitro生きた動物の体外で、試験管やシャーレなどを用いて細胞・組織・分子レベルで行う実験を指す用語。詳しく →の形質導入ウイルスベクターを介して細胞に外来遺伝子を導入すること。導入細胞の割合が形質導入効率として評価される。詳しく →効率とin vivoの指向性は必ずしも一致しないため、in vitroは相対比較・スクリーニング目的と位置づけるのが妥当です。既存中和抗体の影響はin vivo・臨床で別途評価されます。
siRNA・ASO(核酸)トランスフェクション培養細胞に外来の核酸を導入する操作。ウイルスベクターの一過性の産生などに用いられる。詳しく →試薬使用時とフリーアップテイク(gymnosis/GalNAc結合体など)の両条件で細胞内取り込みを評価し、標的RNAのノックダウンをRT-qPCRで、タンパクレベルをウエスタン・ELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →で定量。用量反応からIC50を算出。標的RNAノックダウン率(%)、IC50、タンパク低下、細胞内取り込み量送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →手段(裸/複合体/コンジュゲート)で活性が桁で変わるため、想定する送達様式に合わせた条件設定が必要です。GalNAc結合体は肝細胞への取り込みを前提とする点にも留意します。オフターゲットの確認も別途行います。
細胞治療(CAR-T・iPS)標的抗原の陽性・陰性細胞株を用い、抗原特異的な認識・活性化を評価。共培養でサイトカイン細胞が放出する免疫の情報伝達物質。細胞治療では効果と安全性のリードアウトになる。詳しく →産生(IFN-γ等をELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →/ELISpot)、脱顆粒(CD107a)、抗原依存的な細胞傷害(LDHピルビン酸と乳酸を相互に変換する酵素。過剰なピルビン酸を乳酸へ流す働きをする。詳しく →放出やフロー系細胞傷害アッセイ)を測定。免疫シナプス形成を確認する場合もあります。抗原特異的細胞傷害率、サイトカイン細胞が放出する免疫の情報伝達物質。細胞治療では効果と安全性のリードアウトになる。詳しく →産生量、活性化・脱顆粒マーカー、抗原依存性抗原陰性細胞で応答がないこと(特異性)と、抗原密度に依存した応答を併せて示すことが、認識の妥当性評価の要点です。
低分子SPR金属薄膜表面での光の共鳴変化を利用し、分子同士の結合と解離をリアルタイムに測る手法です。抗体などの親和性評価に広く使われます。詳しく →/BLIセンサー先端に結合した分子の膜厚変化を光の干渉で捉え、抗体などの結合・解離のしやすさ(親和性)をリアルタイムで測る手法です。詳しく →/ITCで結合の速度論と熱力学を取り、標的に留まる時間(residence time)まで見ます。細胞では膜透過性化合物が細胞膜を透過する速さの指標。経口薬の吸収性の評価に使われる。詳しく →(PAMPA・Caco-2ヒト大腸がん由来の細胞株。単層が小腸上皮に近く、腸吸収の見込みを試験管内で測るのに使う。詳しく →)と排出トランスポーターの影響を測り、CETSAやNanoBRETで細胞内の標的到達を確認しますKD、kon/koff、滞留時間、ΔH/ΔS、透過係数Papp・efflux ratio透過をB→AとA→Bの比で表す指標。2以上だとP-gpなどによる能動的な排出を疑う。詳しく →、細胞内での標的占有薬が狙った標的に実際どれだけ結合しているかの度合い。標的占有とも呼ばれる。率結合の強さより「細胞内で標的に届き、必要な時間とどまるか」が効きます。P-gp腸上皮などにある排出トランスポーター。取り込んだ薬を管腔側へ汲み出して吸収を下げる。の基質になると脳への移行が伸びません

共通の考え方同じ問いでも「どこで作用が決まるか」がモダリティで異なる点が要点です。分子で作用するもの(抗体・ADC)は結合速度論を、細胞内で機能するもの(核酸・遺伝子・mRNA)は送達(取り込み)と機能的アウトプット(発現・ノックダウン)を、細胞そのものが薬効担体となるもの(細胞治療)は標的認識とエフェクター機能を主軸に評価します。いずれも定量指標と適切な陰性・陽性対照を置くことが基準です。

このトピックで使う装置・試薬68件

装置・試薬はモダリティをまたいで共通のものが多く、同じ名前が何度も出てきます。

抗体10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • SPRセンサーチップCytiva Series S Sensor Chip CM5 / SA / NTA / Protein A
  • アミンカップリング/固定化キットCytiva Amine Coupling Kit(EDC/NHS/エタノールアミン), Cytiva His Capture Kit
  • BLIバイオセンサーSartorius Octet AR2G / Protein A (ProA) / Anti-hIgG Fc (AHC) / SA バイオセンサー
  • フロー用蛍光標識二次抗体・染色試薬Thermo Fisher Alexa Fluor 標識抗ヒトIgG, BioLegend PE 抗ヒトIgG Fc, Thermo Fisher LIVE/DEAD Fixable 生死判別色素
  • 内在化トラッキング用pH感受性標識Thermo Fisher pHrodo iFL Red/Green ラベリングキット, Sartorius Incucyte Human Fabfluor-pH 抗体標識試薬
ADC9件
装置・機器4
試薬・キット5
  • SPRセンサーチップ/BLIバイオセンサーCytiva Series S Sensor Chip CM5 / Protein A, Sartorius Octet AHC / ProA バイオセンサー
  • pH感受性内在化標識色素Thermo Fisher pHrodo iFL Red/Green, Sartorius Incucyte Human Fabfluor-pH(Fab 標識法)
  • リソソーム/エンドソーム局在マーカーThermo Fisher LysoTracker Red DND-99, Sartorius Incucyte LysoLight Deep Red, 抗LAMP1抗体(Abcam / Cell Signaling Technology)
  • 抗原発現量測定用フロー抗体・定量ビーズBioLegend / BD 蛍光標識抗標的抗原抗体, BD Quantibrite PE 定量ビーズ, Bangs Laboratories Quantum MESF
  • ペイロード放出/細胞傷害評価試薬Promega CellTiter-Glo, Promega CytoTox-Glo, Thermo Fisher CellTrace 細胞標識キット
mRNA-LNP10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • 蛍光脂質標識(LNP取り込みトラッキング)Thermo Fisher DiI / DiD 膜色素, Avanti Polar Lipids NBD-PE / Rhodamine-PE
  • レポーターmRNATriLink CleanCap FLuc mRNA(ホタルルシフェラーゼ), TriLink CleanCap EGFP mRNA, APExBIO ルシフェラーゼ/EGFP mRNA
  • ルシフェラーゼアッセイ試薬Promega ONE-Glo / Bright-Glo, Promega Dual-Luciferase Reporter Assay
  • 発現タンパク定量ELISAキットR&D Systems / Bio-Techne DuoSet ELISA, Thermo Fisher Invitrogen ELISA キット, Abcam SimpleStep ELISA
  • ウエスタンブロット試薬(抗体・検出基質)Cell Signaling Technology / Abcam 一次抗体, Thermo Fisher SuperSignal West 化学発光基質, LI-COR IRDye 二次抗体
AAV10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • AAV血清型パネル(トロピズム比較)Addgene AAV1/2/5/8/9 パッケージング, VectorBuilder カスタムAAV血清型, SignaGen 各血清型 AAV
  • ddPCR/qPCR定量試薬・プローブBio-Rad ddPCR Supermix for Probes, Thermo Fisher TaqMan Gene Expression Assay, IDT カスタム ITR プライマー/プローブ
  • 導入遺伝子産物定量ELISAキットR&D Systems DuoSet ELISA, Abcam SimpleStep ELISA, Thermo Fisher Invitrogen ELISA キット
  • ウエスタンブロット試薬Cell Signaling Technology / Abcam 抗体, Bio-Rad Clarity ECL 基質, LI-COR IRDye 二次抗体
  • 力価標準/AAV定量標準Charles River AAV Reference Standard Material(AAV2/AAV8, ATCC較正), Progen AAV Titration ELISA(カプシド定量)
核酸10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • トランスフェクション試薬Thermo Fisher Lipofectamine RNAiMAX / Lipofectamine 3000, Horizon/Dharmacon DharmaFECT, Polyplus INTERFERin
  • 逆転写/RT-qPCR試薬・プローブThermo Fisher TaqMan Gene Expression Assay, Thermo Fisher High-Capacity cDNA RT Kit, Bio-Rad iScript, IDT PrimeTime qPCR Assay
  • 標識siRNA/ASO・対照Horizon/Dharmacon siGLO / ON-TARGETplus siRNA, Thermo Fisher Silencer Select siRNA, IDT FAM/Cy3 標識オリゴ, QIAGEN AllStars Negative Control
  • ウエスタンブロット試薬Cell Signaling Technology / Abcam 一次抗体, Thermo Fisher SuperSignal 基質, LI-COR IRDye 二次抗体
  • RNA抽出キットQIAGEN RNeasy, Thermo Fisher PureLink RNA, Thermo Fisher TaqMan Cells-to-CT(直接溶解)
細胞治療10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • IFN-γ等サイトカインELISA/ELISpotキットMabtech Human IFN-γ ELISpot / ELISA, R&D Systems DuoSet IFN-γ ELISA, BD OptEIA ELISA
  • CD107a脱顆粒・活性化マーカー抗体BioLegend / BD PE 抗ヒトCD107a, BD 抗CD69 / 抗CD25, Thermo Fisher GolgiStop(モネンシン)
  • 細胞傷害(LDH放出)/生存アッセイPromega CytoTox 96 / CytoTox-ONE(LDH), Promega CellTiter-Glo, Roche Cytotoxicity Detection Kit (LDH)
  • 標的細胞標識色素(フロー系細胞傷害アッセイ)Thermo Fisher CellTrace CFSE / Violet, BioLegend Calcein-AM, Thermo Fisher LIVE/DEAD Fixable 色素
  • マルチプレックスサイトカイン定量ビーズBD CBA(Cytometric Bead Array), BioLegend LEGENDplex, Luminex/Bio-Techne マグネティックLuminex アッセイ
低分子9件
装置・機器5
試薬・キット4
  • 透過性アッセイ資材(PAMPA / Caco-2)Corning Gentest Pre-coated PAMPA Plate System、Corning HTS Transwell-96
  • 細胞内標的エンゲージメント測定系Promega NanoBRET Target Engagement、細胞熱シフト(CETSA)用試薬・検出抗体
  • SPRセンサーチップ・固定化試薬Cytiva Series S Sensor Chip CM5 / SA、アミンカップリングキット
  • トランスポーター発現系・標準阻害剤Corning Gentest トランスポーター発現膜ベシクル、Solvo Biotechnology 発現系、標準阻害剤(ベラパミル等)
規制・注意ここは薬効・作用機序の裏づけを目的とした探索・特性解析で、規制上の位置づけは開発段階とモダリティで変わります。細胞・遺伝子治療では、作用機序に即した評価パッケージを組むことが各極のガイダンスで求められます。

一次資料ICH S6(R1)(バイオ医薬品の非臨床安全性評価)、ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価)、ICH M3(R2)(臨床試験実施のための非臨床安全性試験)。細胞・遺伝子治療はFDA/EMAの遺伝子治療・CAR-T関連ガイダンスを参照。

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