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標的選定・疾患仮説

どの疾患メカニズム・分子を標的として狙うか(モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。に応じた標的選定疾患を治すために介入すべき分子や細胞(標的)を選ぶ、創薬の最初の工程。

標的選定は後工程のすべての前提になるため、疾患メカニズムへの因果的関与とヒトでのバリデーション根拠を最初に固める必要があります。同じ疾患でも、狙える分子・機序はモダリティによって大きく変わります。

7モダリティを比較70装置・試薬の代表例

共通の考え方モダリティを問わず、標的の疾患関与を裏づける根拠(ヒト遺伝学、発現局在、ノックダウン/ノックアウト表現型、患者検体でのバイオマーカー)を積み上げるのが基準です。加えて、そのモダリティで実際にアクセスできる分子種・組織かという「到達性(accessibility/druggability)」を同時に評価します。

モダリティ別の進め方(7比較)

モダリティアプローチ(手法)読み出し・指標留意点
抗体(mAb)細胞表面・分泌タンパクを標的にする。膜貫通型受容体やリガンド担体ビーズ表面に結合させた官能基やタンパク質で、目的物や不純物と相互作用して分離を担う部分。フローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →/IHC抗体を用いて、組織のどこに目的のタンパク質があるかを色素で染め出して調べる手法。発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。局在を確認し、機能アッセイ結合ではなく標的の働きを止める・動かすといった生物学的効果のほうを測る評価。中和低pH条件で溶出されたサンプルに緩衝液を加えてpHを中性付近に戻し、製品へのダメージを防ぐ操作。・アゴニスト/アンタゴニスト)で機序を検証標的発現量細胞が目的のタンパク質を作る量。低いと必要量の確保に手間がかかり、製造コストが上がる。・膜局在、正常組織との発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。差、機能アッセイ結合ではなく標的の働きを止める・動かすといった生物学的効果のほうを測る評価。での活性、ヒト遺伝学ヒトの遺伝子変異と疾患の関連から標的の妥当性を評価する証拠。種差を避け因果に近い示唆を得る。・患者検体データ細胞内標的は原則対象外。オフターゲット意図した標的以外の似た配列に結合・作用してしまうこと。核酸医薬の毒性や副作用の一因。組織の発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。が安全性懸念になる
ADC抗体標的に加えて内在化能とペイロード抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。適性を重視。抗原量・内在化速度(受容体インターナリゼーションアッセイ)とバイスタンダー効果の可否を評価標的発現量細胞が目的のタンパク質を作る量。低いと必要量の確保に手間がかかり、製造コストが上がる。(抗原コピー数)、内在化率、腫瘍/正常組織の発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。差(治療域)発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。・低内在化だと有効域が狭い。正常組織発現がoff-tumor毒性に直結
mRNA-LNP欠損/不足するタンパクを発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。による補充(酵素・機能タンパクの発現)で狙う、またはワクチン抗原を発現させる。標的は「発現させたい配列」。LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。が到達する組織(肝など)と一致するかを評価機能欠損の分子的裏づけ(変異・酵素活性低下)、目的タンパクの発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。・機能回復、送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。組織との整合多くの静注LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。肝指向性ナノ粒子やウイルスベクターが肝臓に集まりやすい性質。分布評価の出発点になる。が強く、標的組織と送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。先の整合が要件
AAV(遺伝子治療)単一遺伝子欠損の遺伝子補充や導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。を狙う。導入カセットがパッケージング必要な部品遺伝子を細胞に導入し、ウイルスベクター粒子を組み立てさせる製造工程。上限(ITRAAVゲノムの両端にある逆位末端反復配列。複製とパッケージングのシグナルとして働き、この間の配列がカプシドに詰め込まれる。を含めて概ね~4.7〜5kb)に収まるか、標的組織へのトロピズムウイルスベクターが特定の組織・細胞に向かう指向性。AAVでは血清型ごとに異なる。血清型AAVのカプシドの種類による分類。組織指向性が異なり、狙う臓器や細胞に応じて選び分けられる。選択)と疾患組織が一致するかを評価原因遺伝子のヒト遺伝学ヒトの遺伝子変異と疾患の関連から標的の妥当性を評価する証拠。種差を避け因果に近い示唆を得る。的裏づけ、標的組織での発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。・トロピズム、必要発現量細胞が目的のタンパク質を作る量。低いと必要量の確保に手間がかかり、製造コストが上がる。と持続大遺伝子はパッケージング必要な部品遺伝子を細胞に導入し、ウイルスベクター粒子を組み立てさせる製造工程。制約。単回投与が基本で、既存中和抗体ウイルスベクターのカプシドなどに結合し、細胞に届く前に働きを失わせる抗体。再投与の壁になる。・組織到達性が実現可能性を左右
siRNA・ASO(核酸)配列がアクセス可能なRNA(mRNA・pre-mRNAスプライシング前のmRNA。核内に存在し、ギャップマー型ASOなどの標的になりうる。・lncRNA)を標的化。タンパクとして『アンドラッガブル』な標的もRNAレベルでノックダウン核酸医薬などで標的遺伝子の発現を下げること。細胞での薬効指標になる。/スプライス改変で狙える。標的配列選定とオフターゲット意図した標的以外の似た配列に結合・作用してしまうこと。核酸医薬の毒性や副作用の一因。回避を設計ノックダウン核酸医薬などで標的遺伝子の発現を下げること。細胞での薬効指標になる。/スプライス改変の表現型分子が標的に結合するかなど、実際に現れる働き・性質のこと。、標的RNA発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。・配列保存性、ヒト遺伝学ヒトの遺伝子変異と疾患の関連から標的の妥当性を評価する証拠。種差を避け因果に近い示唆を得る。(機能喪失が保護的か)、送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。組織との整合送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。可能組織(GalNAc核酸医薬を肝臓の細胞へ届けるために結合させる糖のリガンドです。肝細胞表面の受容体に結びつき、薬物の取り込みを高めます。詳しく →結合で肝、髄腔内投与薬を脳脊髄液に直接投与する経路。血液脳関門を回避して中枢神経系へ核酸などを届ける。CNS脳と脊髄のことで、安全性薬理では意識・運動・体温などへの急な影響を評価する対象。など)に標的発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。が限られる。ハプロ不全型のように機能増強が必要な標的には不向き
細胞治療(CAR-T・iPS)腫瘍細胞表面抗原の腫瘍特異性分析法において、共存する不純物・分解物・添加剤などが存在しても目的成分だけを正確に測定できる能力。を最重視。オンターゲットガイドが指し示す、本来切ってほしい標的の場所。ここでも大欠失など意図しない結果が起きうる。/オフターゲット意図した標的以外の似た配列に結合・作用してしまうこと。核酸医薬の毒性や副作用の一因。(正常組織発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。)と抗原逃避のリスクを評価。iPS由来では分化細胞の機能標的を設定表面抗原の腫瘍特異性分析法において、共存する不純物・分解物・添加剤などが存在しても目的成分だけを正確に測定できる能力。・均一性、正常必須組織の非発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。、抗原密度正常組織にも発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。するとon-target/off-tumor毒性。抗原ダウンレギュレーションによる再発
低分子標的タンパクの立体構造に結合ポケット酵素や受容体の表面にあり、薬分子がはまり込むくぼみ。SBDDで設計の要件を読み取る場所。(活性部位・アロステリック部位)があるか=druggabilityある標的が特定のモダリティで介入可能な性質を備えているか、という狙いやすさの指標。を評価。構造解析・in silicoコンピュータ上の計算で予測・解析すること。配列からT細胞エピトープのリスクを安価に広く洗い出す一次評価。でポケット検出、ケミカルツールで機序を検証ポケットの有無・ドラッガビリティ、ヒト遺伝学ヒトの遺伝子変異と疾患の関連から標的の妥当性を評価する証拠。種差を避け因果に近い示唆を得る。・ノックダウン表現型分子が標的に結合するかなど、実際に現れる働き・性質のこと。、細胞内標的への到達性タンパク間相互作用など浅い界面は難標的。細胞内・CNS脳と脊髄のことで、安全性薬理では意識・運動・体温などへの急な影響を評価する対象。など到達性は有利

このトピックで使う装置・試薬70

装置・試薬の多くはモダリティを問わず共通に使われます。ここでは各モダリティの文脈での使い方として示しており、名称のリンク先(製品ガイド)は横断で参照できます。

抗体12
装置・機器7
試薬・キット5
ADC10
装置・機器5
試薬・キット5
  • pH感受性内在化色素(酸性オルガネラ移行の検出)Thermo Fisher pHrodo Red/Green、Sartorius Incucyte FabFluor-pH Red、Promega pHAb Reactive Dyes
  • 抗原量定量ビーズキット(受容体密度・分子数換算)BD QuantiBRITE PE、Bangs Laboratories Quantum Simply Cellular
  • リソソーム局在・カテプシン活性化色素(内在化タンパクのリソソーム移行/異化の検出、Incucyte等で測定)Thermo Fisher LysoLight Deep Red(Antibody Labeling Kit, L36001)、Thermo Fisher LysoTracker
  • 生細胞リソソーム/細胞小器官マーカー染色試薬Thermo Fisher LysoTracker / LysoSensor
  • 細胞生存/細胞傷害アッセイ試薬(ペイロード送達適性の評価)Promega CellTiter-Glo 2.0、Revvity ATPlite
mRNA-LNP10
装置・機器5
試薬・キット5
  • in vitro転写(IVT)用酵素・キャップ試薬(発現させたい配列のmRNA合成)New England Biolabs HiScribe T7、Thermo Fisher mMESSAGE mMACHINE、TriLink CleanCap AG
  • 修飾ヌクレオチド(N1-メチルシュードUTP等、翻訳効率・免疫原性調整)TriLink N1-Methylpseudo-UTP、Thermo Fisher pseudo-UTP
  • イオン化脂質・LNP構成脂質(送達・組織到達性の規定)Broadpharm / MedChemExpress SM-102 / ALC-0315、Avanti Polar Lipids DSPC・cholesterol・DMG-PEG2000
  • レポーターmRNA(生体分布・肝発現の可視化)TriLink CleanCap FLuc mRNA、TriLink EGFP mRNA
  • 生物発光基質(ルシフェリン)Revvity XenoLight D-Luciferin、Promega VivoGlo Luciferin
AAV9
装置・機器5
試薬・キット4
  • AAV血清型/キャプシドライブラリ・参照血清型(トロピズム評価)Addgene AAV血清型プラスミド(AAV2/5/8/9)、Charles River / SignaGen ready-to-use AAV血清型パネル
  • ITR含有トランスファー/パッケージングプラスミド(カセット設計・~4.7-5kb上限確認)Addgene pAAV ITRベクター、Takara AAVpro Helper Free System
  • AAV力価定量キット(ddPCR/qPCR、ゲノムコピー数)Takara AAVpro Titration Kit、Thermo Fisher AAVpro qPCR試薬
  • レポーター導入遺伝子カセット(GFP/ルシフェラーゼ、組織一致の可視化)Addgene AAV-CAG-GFP、AAV-luciferaseコンストラクト
核酸10
装置・機器5
試薬・キット5
  • siRNA/ASO配列設計ソフト(標的配列選定・オフターゲット回避)東京大学(Ui-Teiラボ)siDirect 2.0、si-Fi (siRNA-Finder) software、PFRED(Pfizer公開・オープンソース)
  • トランスフェクション試薬(ノックダウン検証)Thermo Fisher Lipofectamine RNAiMAX、Dharmacon DharmaFECT
  • 逆転写・qPCRアッセイ試薬Thermo Fisher TaqMan Gene Expression Assays、Bio-Rad iScript / SsoAdvanced
  • 修飾ヌクレオシドホスホロアミダイト(2'-MOE/LNA、Gapmer設計・安定化)Hongene Biotech 2'-MOE/LNAアミダイト、Glen Research 2'-O-Me / LNAアミダイト
  • 参照/対照siRNA・ASODharmacon ON-TARGETplus Non-targeting Control、Qiagen AllStars Negative Control siRNA
細胞治療9
試薬・キット4
低分子10
装置・機器6
  • X線結晶構造解析システム(結合ポケット・活性部位/アロステリック部位の同定)Rigaku XtaLAB Synergy、Bruker D8 VENTURE、放射光ビームライン(SPring-8 / Diamond)
  • クライオ電子顕微鏡(膜タンパク等の構造・ポケット可視化)Thermo Fisher Krios G4 Cryo-TEM、Thermo Fisher Glacios 2
  • 核磁気共鳴(NMR)分光計(フラグメント結合・ポケット検出)Bruker Avance NEO 600/800 MHz、JEOL JNM-ECZ
  • 示差走査蛍光定量/熱シフト装置(標的タンパクの被結合性・リガンド結合検証)NanoTemper Prometheus Panta、Bio-Rad CFX(Thermal Shift Assay)
  • SPR/等温滴定型熱量計(ケミカルツールの結合検証)Cytiva Biacore 8K、Malvern Panalytical MicroCal PEAQ-ITC
  • 質量分析計(標的関与・機序検証、ネイティブMS/ケモプロテオミクス)Thermo Fisher Orbitrap Exploris 480、SCIEX ZenoTOF 7600
試薬・キット4
  • in silicoドラッガビリティ/ポケット検出ソフトSchrödinger SiteMap / Maestro、OpenEye SiteHopper、DeepMind AlphaFold(構造予測)
  • タンパク発現・精製試薬(構造解析用標的タンパク調製)Thermo Fisher Expi293 / ExpiCHO発現系、Cytiva His/Strep精製レジン
  • 熱シフト用色素・緩衝試薬Thermo Fisher SYPRO Orange、Biotium GloMelt Thermal Shift Dye
  • フラグメントライブラリ/ケミカルプローブ(機序検証用ツール化合物)Enamine Fragment Library、Tocris / MedChemExpress ケミカルプローブ、SGC chemical probes
規制・注意非臨床開発計画は標的・モダリティの性質に応じて設計します。バイオ医薬品ではICH S6(R1)、抗がん剤ではICH S9、一般的な非臨床試験パッケージはICH M3(R2)が枠組みの参照になります。標的選定段階の根拠は後の種選択(相同性・薬理学的関連種)や毒性評価の設計にも影響します。

一次資料ICH S6(R1)(バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床安全性評価)、ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価)、ICH M3(R2)(医薬品開発のための非臨床安全性試験の実施時期)。標的バリデーションの考え方は、ヒト遺伝学的エビデンスと創薬成功率の関連を扱う総説群を参照。

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