探索・設計トピック 1/15

標的選定・疾患仮説

どの疾患メカニズム・分子を標的として狙うか(モダリティ抗体・低分子・核酸・細胞治療など、医薬品の種類・創薬手法の区分。詳しく →に応じた標的選定疾患を治すために介入すべき分子や細胞(標的)を選ぶ、創薬の最初の工程。詳しく →)

7モダリティを比較70装置・試薬の代表例

モダリティ別の進め方(7比較)

モダリティアプローチ(手法)読み出し・指標留意点
抗体(mAb)細胞表面・分泌タンパクを標的にする。膜貫通型受容体やリガンドをフローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →/IHCで発現局在を確認し、機能アッセイ結合ではなく標的の働きを止める・動かすといった生物学的効果のほうを測る評価。詳しく →(中和・アゴニスト/アンタゴニスト)で機序を検証標的発現量・膜局在、正常組織との発現差、機能アッセイ結合ではなく標的の働きを止める・動かすといった生物学的効果のほうを測る評価。詳しく →での活性、ヒト遺伝学・患者検体データ細胞内標的は原則対象外。オフターゲット組織の発現が安全性懸念になる
ADC抗体標的に加えて内在化能とペイロード送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →適性を重視。抗原量・内在化速度(受容体インターナリゼーションアッセイ)とバイスタンダー効果の可否を評価標的発現量(抗原コピー数)、内在化率、腫瘍/正常組織の発現差(治療域)低発現・低内在化だと有効域が狭い。正常組織発現がoff-tumor毒性に直結
mRNA-LNP欠損/不足するタンパクを発現による補充(酵素・機能タンパクの発現)で狙う、またはワクチン抗原を発現させる。標的は「発現させたい配列」。LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。が到達する組織(肝など)と一致するかを評価機能欠損の分子的裏づけ(変異・酵素活性低下)、目的タンパクの発現・機能回復、送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →組織との整合多くの静注LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。は肝指向性が強く、標的組織と送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →先の整合が要件
AAV(遺伝子治療)単一遺伝子欠損の遺伝子補充や導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。詳しく →発現を狙う。導入カセットがパッケージング上限(ITRを含めて概ね~4.7〜5kb)に収まるか、標的組織へのトロピズムウイルスベクターが特定の組織・細胞に向かう指向性。AAVでは血清型ごとに異なる。詳しく →(血清型選択)と疾患組織が一致するかを評価原因遺伝子のヒト遺伝学的裏づけ、標的組織での発現・トロピズム、必要発現量と持続大遺伝子はパッケージング制約。単回投与が基本で、既存中和抗体・組織到達性が実現可能性を左右
siRNA・ASO(核酸)配列がアクセス可能なRNA(mRNA・pre-mRNA・lncRNA)を標的化。タンパクとして『アンドラッガブル』な標的もRNAレベルでノックダウン/スプライス改変で狙える。標的配列選定とオフターゲット回避を設計ノックダウン/スプライス改変の表現型、標的RNA発現・配列保存性、ヒト遺伝学(機能喪失が保護的か)、送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →組織との整合送達ゲノム編集ツールや核酸医薬などを標的細胞・組織まで安全かつ効率よく運ぶための技術・方法論の総称。詳しく →可能組織(GalNAc結合で肝、髄腔内投与薬を脳脊髄液に直接投与する経路。血液脳関門を回避して中枢神経系へ核酸などを届ける。詳しく →でCNS脳と脊髄のことで、安全性薬理では意識・運動・体温などへの急な影響を評価する対象。詳しく →など)に標的発現が限られる。ハプロ不全型のように機能増強が必要な標的には不向き
細胞治療(CAR-T・iPS)腫瘍細胞表面抗原の腫瘍特異性を最重視。オンターゲット/オフターゲット(正常組織発現)と抗原逃避のリスクを評価。iPS由来では分化細胞の機能標的を設定表面抗原の腫瘍特異性・均一性、正常必須組織の非発現、抗原密度正常組織にも発現するとon-target/off-tumor毒性。抗原ダウンレギュレーションによる再発
低分子標的タンパクの立体構造に結合ポケット酵素や受容体の表面にあり、薬分子がはまり込むくぼみ。SBDDで設計の要件を読み取る場所。詳しく →(活性部位・アロステリック部位)があるか=druggabilityを評価。構造解析・in silicoでポケット検出、ケミカルツールで機序を検証ポケットの有無・ドラッガビリティ、ヒト遺伝学・ノックダウン表現型、細胞内標的への到達性タンパク間相互作用など浅い界面は難標的。細胞内・CNS脳と脊髄のことで、安全性薬理では意識・運動・体温などへの急な影響を評価する対象。詳しく →など到達性は有利

共通の考え方モダリティを問わず、標的の疾患関与を裏づける根拠(ヒト遺伝学、発現局在、ノックダウン/ノックアウト表現型、患者検体でのバイオマーカー)を積み上げるのが基準です。加えて、そのモダリティで実際にアクセスできる分子種・組織かという「到達性(accessibility/druggability)」を同時に評価します。

このトピックで使う装置・試薬70件

装置・試薬はモダリティをまたいで共通のものが多く、同じ名前が何度も出てきます。

抗体12件
装置・機器7
試薬・キット5
ADC10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • pH感受性内在化色素(酸性オルガネラ移行の検出)Thermo Fisher pHrodo Red/Green、Sartorius Incucyte FabFluor-pH Red、Promega pHAb Reactive Dyes
  • 抗原量定量ビーズキット(受容体密度・分子数換算)BD QuantiBRITE PE、Bangs Laboratories Quantum Simply Cellular
  • リソソーム局在・カテプシン活性化色素(内在化タンパクのリソソーム移行/異化の検出、Incucyte等で測定)Thermo Fisher LysoLight Deep Red(Antibody Labeling Kit, L36001)、Thermo Fisher LysoTracker
  • 生細胞リソソーム/細胞小器官マーカー染色試薬Thermo Fisher LysoTracker / LysoSensor
  • 細胞生存/細胞傷害アッセイ試薬(ペイロード送達適性の評価)Promega CellTiter-Glo 2.0、Revvity ATPlite
mRNA-LNP10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • in vitro転写(IVT)用酵素・キャップ試薬(発現させたい配列のmRNA合成)New England Biolabs HiScribe T7、Thermo Fisher mMESSAGE mMACHINE、TriLink CleanCap AG
  • 修飾ヌクレオチド(N1-メチルシュードUTP等、翻訳効率・免疫原性調整)TriLink N1-Methylpseudo-UTP、Thermo Fisher pseudo-UTP
  • イオン化脂質・LNP構成脂質(送達・組織到達性の規定)Broadpharm / MedChemExpress SM-102 / ALC-0315、Avanti Polar Lipids DSPC・cholesterol・DMG-PEG2000
  • レポーターmRNA(生体分布・肝発現の可視化)TriLink CleanCap FLuc mRNA、TriLink EGFP mRNA
  • 生物発光基質(ルシフェリン)Revvity XenoLight D-Luciferin、Promega VivoGlo Luciferin
AAV9件
装置・機器5
試薬・キット4
  • AAV血清型/キャプシドライブラリ・参照血清型(トロピズム評価)Addgene AAV血清型プラスミド(AAV2/5/8/9)、Charles River / SignaGen ready-to-use AAV血清型パネル
  • ITR含有トランスファー/パッケージングプラスミド(カセット設計・~4.7-5kb上限確認)Addgene pAAV ITRベクター、Takara AAVpro Helper Free System
  • AAV力価定量キット(ddPCR/qPCR、ゲノムコピー数)Takara AAVpro Titration Kit、Thermo Fisher AAVpro qPCR試薬
  • レポーター導入遺伝子カセット(GFP/ルシフェラーゼ、組織一致の可視化)Addgene AAV-CAG-GFP、AAV-luciferaseコンストラクト
核酸10件
装置・機器5
試薬・キット5
  • siRNA/ASO配列設計ソフト(標的配列選定・オフターゲット回避)東京大学(Ui-Teiラボ)siDirect 2.0、si-Fi (siRNA-Finder) software、PFRED(Pfizer公開・オープンソース)
  • トランスフェクション試薬(ノックダウン検証)Thermo Fisher Lipofectamine RNAiMAX、Dharmacon DharmaFECT
  • 逆転写・qPCRアッセイ試薬Thermo Fisher TaqMan Gene Expression Assays、Bio-Rad iScript / SsoAdvanced
  • 修飾ヌクレオシドホスホロアミダイト(2'-MOE/LNA、Gapmer設計・安定化)Hongene Biotech 2'-MOE/LNAアミダイト、Glen Research 2'-O-Me / LNAアミダイト
  • 参照/対照siRNA・ASODharmacon ON-TARGETplus Non-targeting Control、Qiagen AllStars Negative Control siRNA
細胞治療9件
試薬・キット4
低分子10件
装置・機器6
  • X線結晶構造解析システム(結合ポケット・活性部位/アロステリック部位の同定)Rigaku XtaLAB Synergy、Bruker D8 VENTURE、放射光ビームライン(SPring-8 / Diamond)
  • クライオ電子顕微鏡(膜タンパク等の構造・ポケット可視化)Thermo Fisher Krios G4 Cryo-TEM、Thermo Fisher Glacios 2
  • 核磁気共鳴(NMR)分光計(フラグメント結合・ポケット検出)Bruker Avance NEO 600/800 MHz、JEOL JNM-ECZ
  • 示差走査蛍光定量/熱シフト装置(標的タンパクの被結合性・リガンド結合検証)NanoTemper Prometheus Panta、Bio-Rad CFX(Thermal Shift Assay)
  • SPR/等温滴定型熱量計(ケミカルツールの結合検証)Cytiva Biacore 8K、Malvern Panalytical MicroCal PEAQ-ITC
  • 質量分析計(標的関与・機序検証、ネイティブMS/ケモプロテオミクス)Thermo Fisher Orbitrap Exploris 480、SCIEX ZenoTOF 7600
試薬・キット4
  • in silicoドラッガビリティ/ポケット検出ソフトSchrödinger SiteMap / Maestro、OpenEye SiteHopper、DeepMind AlphaFold(構造予測)
  • タンパク発現・精製試薬(構造解析用標的タンパク調製)Thermo Fisher Expi293 / ExpiCHO発現系、Cytiva His/Strep精製レジン
  • 熱シフト用色素・緩衝試薬Thermo Fisher SYPRO Orange、Biotium GloMelt Thermal Shift Dye
  • フラグメントライブラリ/ケミカルプローブ(機序検証用ツール化合物)Enamine Fragment Library、Tocris / MedChemExpress ケミカルプローブ、SGC chemical probes
規制・注意非臨床開発計画は標的とモダリティの性質に応じて設計します。標的選定の段階で積んだ根拠は、後の種選択(相同性・薬理学的関連種)や毒性評価の設計にも効いてきます。

一次資料ICH S6(R1)(バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床安全性評価)、ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価)、ICH M3(R2)(医薬品開発のための非臨床安全性試験の実施時期)。標的バリデーションの考え方は、ヒト遺伝学的エビデンスと創薬成功率の関連を扱う総説群を参照。

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