薬効・作用機序Research × Nonclinical / トピック 8 of 15

バイオマーカー・PD評価

作用が体内で起きているか(薬効・作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。)を、どのマーカーと測定法で読むか

PDバイオマーカーは、投与された薬剤が意図した標的・経路に実際に作用していることを生体内で確認する直接的な証拠になります。PKと結びつけて用量選択や投与間隔の設計、有効性の裏づけに用いるため、モダリティごとに「何を測れば作用の証拠になるか」を最初に定義しておく必要があります。

7モダリティを比較61装置・試薬の代表例

共通の考え方いずれのモダリティでも、標的への到達(曝露)と作用(PD応答)を分けて捉え、PK/PD関係として関連づける考え方は共通です。可能なら近位マーカー(標的そのものへの作用)と遠位マーカー(下流・機能的応答)を組み合わせ、測定法はfit-for-purposeで妥当性を確認したアッセイで定量します。

モダリティ別の進め方(7比較)

モダリティアプローチ(手法)読み出し・指標留意点
抗体(mAb)標的占有薬が狙った標的に実際どれだけ結合しているかの度合い。標的占有とも呼ばれる。率(receptor occupancy, RO)をフローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →で測定し、下流シグナル(リン酸化タンパク等)や標的経路のバイオマーカーを評価。可溶性標的なら遊離/総リガンド担体ビーズ表面に結合させた官能基やタンパク質で、目的物や不純物と相互作用して分離を担う部分。濃度をリガンド結合アッセイ(ELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →等)で測定RO(%)、遊離標的濃度、下流シグナル・機能マーカーの変化ROアッセイは遊離受容体・総受容体・薬剤結合受容体のどれを測るか設計で明確化する必要があります。可溶性標的が薬剤と複合体を作る場合はTMDD抗体が標的に結合し、その複合体ごと細胞に取り込まれて消失する現象。用量で薬物動態が変わる主因。(標的介在性薬物動態投与した薬が体内で吸収・分布・代謝・排泄されていく挙動。ADCではDARが大きく影響する。)がPKにも影響します
ADC抗体側の標的結合(RO)に加え、放出ペイロード抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →の薬理作用マーカーを評価。ペイロード機序に対応したマーカー(DNA損傷型ならγH2AX、微小管阻害型なら有糸分裂/アポトーシス細胞が遺伝的プログラムに従って自発的に死に至る過程で、壊死とは異なり膜の完全性が初期段階では保たれる。指標など)をIHC抗体を用いて、組織のどこに目的のタンパク質があるかを色素で染め出して調べる手法。/フローで測定。ペイロード濃度はLC-MS/MS液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせ、断片を一つずつ読んで配列や修飾部位を特定する手法。で定量RO、ペイロード抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →薬理マーカー(例:γH2AX等のDNA損傷マーカー、有糸分裂/アポトーシス細胞が遺伝的プログラムに従って自発的に死に至る過程で、壊死とは異なり膜の完全性が初期段階では保たれる。指標)、遊離ペイロード濃度抗体・コンジュゲート・遊離ペイロード抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →を区別したバイオアナリシス設計が前提になります。どのマーカーを選ぶかはペイロードの作用機序薬が効果を発揮する仕組み。抗体医薬ではADCCやCDCなどが該当し、アッセイで裏づける。(DNA損傷か微小管阻害か等)に依存します
mRNA-LNP導入mRNAから翻訳された産物(タンパク)の発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。を評価。組織/血中の産物タンパクをELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →で定量し、必要に応じてmRNA量をRT-qPCRで測定。機能的マーカー(例:ワクチンなら抗原に対する免疫応答)も併用発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。タンパク濃度(血中・組織)、導入mRNA量、機能的PD応答内因性タンパクと区別できるアッセイ(配列特異的検出やタグ)が必要な場合があります。発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。は一過性で、投与後の時間経過(発現ピークと消失)を踏まえた採取設計が要ります
AAV(遺伝子治療)導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。(transgene)産物の発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。とその持続を評価。血中/組織のtransgene産物タンパクをELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →で定量し、ベクターゲノムコピー数・mRNA発現をqPCR核酸を増幅しながら蛍光の増え方を追い、標的DNA・RNAの量を測る装置です。増幅の立ち上がりの早さから濃度を求めます。詳しく →/ddPCR反応液を無数の微小区画に分けて増幅し、陽性区画の数から核酸の量を絶対値で数える装置です。ごく微量の検出や定量に強みがあります。詳しく →・RT-qPCRで測定。酵素補充型なら酵素活性を機能マーカーにtransgene産物タンパク濃度、酵素活性等の機能指標、ベクターゲノム/mRNA発現量細胞が目的のタンパク質を作る量。低いと必要量の確保に手間がかかり、製造コストが上がる。と持続性発現目的タンパク質をコードする遺伝子を宿主細胞内で転写・翻訳させ、機能的なタンパク質として産生させる工程。の持続性(数か月〜長期)が重要な読み出しで、PKの概念が曝露から発現持続に置き換わります。単回投与が基本で、既存の抗AAV遺伝子治療で遺伝子を運ぶウイルスベクター。血清型によって集まりやすい組織が異なる。中和抗体ウイルスベクターのカプシドなどに結合し、細胞に届く前に働きを失わせる抗体。再投与の壁になる。や投与後の免疫応答が発現・再投与可能性に影響します
siRNA・ASO(核酸)標的mRNAのノックダウン核酸医薬などで標的遺伝子の発現を下げること。細胞での薬効指標になる。率を主要PDとして評価。標的mRNAをRT-qPCR/ddPCR反応液を無数の微小区画に分けて増幅し、陽性区画の数から核酸の量を絶対値で数える装置です。ごく微量の検出や定量に強みがあります。詳しく →で、標的タンパクをELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →で測定。ASO標的RNAに相補的な配列をもつ一本鎖の短い核酸。RNAに結合して働きを抑えたり書き換えたりする。のスプライス調整型ではスプライシング前駆体mRNAから不要な部分を除き必要な部分をつなぐRNAの編集。ASOで切り替えを調節できる。産物の変化を評価標的mRNAノックダウン核酸医薬などで標的遺伝子の発現を下げること。細胞での薬効指標になる。率(%)、標的タンパク減少率、スプライス産物比作用組織での測定が重要です。特にGalNAc核酸医薬を肝臓の細胞へ届けるために結合させる糖のリガンドです。肝細胞表面の受容体に結びつき、薬物の取り込みを高めます。詳しく →結合siRNA二本鎖の短いRNAで、RISC(Ago2)を介して標的mRNAを分解する核酸医薬。ASOと製造基盤を共有する。は肝細胞への取り込みに設計されており、肝が主な作用組織となるため、血中マーカーが標的組織の作用を代表するか確認が必要です
細胞治療(CAR-T・iPS)投与細胞の体内動態(拡大・持続)をqPCR核酸を増幅しながら蛍光の増え方を追い、標的DNA・RNAの量を測る装置です。増幅の立ち上がりの早さから濃度を求めます。詳しく →/ddPCR反応液を無数の微小区画に分けて増幅し、陽性区画の数から核酸の量を絶対値で数える装置です。ごく微量の検出や定量に強みがあります。詳しく →(ベクター/導入遺伝子ベクターで細胞に運んで働かせる目的の遺伝子。コピー数)やフローサイトメトリー細胞を一つずつ測定し、表面マーカーや性質を調べる手法です。細胞の種類・純度・活性の確認に使います。詳しく →で追跡。薬理マーカーとして血中サイトカイン細胞が放出する免疫の情報伝達物質。細胞治療では効果と安全性のリードアウトになる。ELISA抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →/多項目イムノアッセイ)や標的細胞の消失(例:CD19 CAR-T患者や健常ドナーのT細胞にCAR(キメラ抗原受容体)を導入し、がん細胞を攻撃させる細胞治療。でのB細胞アプラジア)を評価細胞の拡大ピーク・持続期間、サイトカイン細胞が放出する免疫の情報伝達物質。細胞治療では効果と安全性のリードアウトになる。濃度、B細胞アプラジア等の標的細胞消失生きた細胞が増殖・持続するためPKが従来の濃度時間曲線と異なり、細胞動態そのものが曝露指標になります
低分子標的経路の下流マーカー(基質のリン酸化など)を腫瘍・血液・皮膚などで測り、曝露とPD抑制の関係を作ります。これを用量設定の根拠にしますPDマーカーの抑制率、PDのEC50応答を半分まで立ち上げる濃度のことで、作動薬など活性化系の効力指標に使う。/IC50対象の働きを半分に抑えるのに必要な薬物濃度で、値が小さいほど強く阻害する。hERG阻害の強さを表す。、抑制の持続時間、曝露量との相関採取できる組織で測れるマーカーを選べるかが実務上の制約です。臨床でも同じ測定ができるかを設計段階で考えます

このトピックで使う装置・試薬61

装置・試薬の多くはモダリティを問わず共通に使われます。ここでは各モダリティの文脈での使い方として示しており、名称のリンク先(製品ガイド)は横断で参照できます。

抗体9
装置・機器5
  • フローサイトメーター(標的占有率RO測定)BD FACSymphony A5 SE、Cytek Aurora(5L)、Beckman Coulter CytoFLEX / CytoFLEX S、BD FACSCanto II
  • 電気化学発光(ECL)マルチプレックスリーダー(リン酸化タンパク・下流シグナル)Meso Scale Discovery MESO QuickPlex SQ 120、MSD MESO SECTOR S 600
  • マイクロプレートリーダー(ELISA/リガンド結合アッセイ)Molecular Devices SpectraMax iD5、BMG LABTECH CLARIOstar Plus、Tecan Infinite M Nano+
  • 自動化ナノリットル免疫測定システム(遊離/総リガンド定量)Gyros Protein Technologies Gyrolab xPlore / xPand、Bio-Rad Bio-Plex 200(Luminex)
  • 超高感度シングルモレキュール免疫測定装置(低濃度バイオマーカー)Quanterix Simoa HD-X、Quanterix SR-X
試薬・キット4
  • 蛍光標識抗体(RO測定用・受容体/薬剤検出)BD Biosciences BD Horizon 各種蛍光標識mAb、BioLegend PE/APC標識抗体、Thermo Fisher eBioscience 標識抗体
  • リン酸化タンパク定量アッセイキット(下流シグナル)MSD Phospho/Total Protein Assays(pERK/pSTAT等)、Thermo Fisher ProcartaPlex phospho-protein パネル、Cell Signaling Technology PathScan ELISA
  • 遊離/総リガンド定量ELISAキット(可溶性標的)R&D Systems Quantikine ELISA、Thermo Fisher Human ELISA Kit、Gyros Gyrolab キット化試薬
  • 細胞染色・生死判別試薬(フロー前処理)Thermo Fisher LIVE/DEAD Fixable Dead Cell Stain、BD FACS Lysing Solution、BioLegend Zombie Fixable Viability Kit
ADC10
装置・機器5
試薬・キット5
  • 抗γH2AX(Ser139)抗体(DNA損傷型ペイロード)Cell Signaling Technology Phospho-Histone H2A.X (Ser139) (20E3)、Sigma-Aldrich/Millipore Anti-phospho-Histone H2A.X (JBW301)、Thermo Fisher Invitrogen (RM224)
  • アポトーシス検出IHC試薬(微小管阻害/一般毒性)Cell Signaling Technology SignalStain Cleaved Caspase-3 (Asp175) IHC Kit、Abcam anti-cleaved Caspase-3 antibody
  • 有糸分裂・増殖マーカー抗体(微小管阻害型ペイロード)Cell Signaling Technology Phospho-Histone H3 (Ser10)、Agilent Dako Ki-67 (MIB-1)、Abcam anti-alpha Tubulin
  • IHC検出・可視化キット(DAB発色)Vector Laboratories ImmPRESS / DAB Substrate Kit、Agilent Dako EnVision FLEX、Roche VENTANA DISCOVERY DAB
  • LC-MS/MS用ペイロード標準品・内標準・SPE消耗品MMAE/DM1 等ペイロード認証標準品(各社)、Waters Oasis HLB 固相抽出プレート、安定同位体標識内標準
mRNA-LNP9
装置・機器5
試薬・キット4
AAV9
装置・機器5
試薬・キット4
  • ddPCR/qPCR試薬・プローブ(ベクターゲノム/transgene)Bio-Rad ddPCR Supermix for Probes / AAV ddPCR Assays、Thermo Fisher TaqMan Gene Expression Assays、Bio-Rad Droplet Generation Oil
  • 核酸抽出キット(組織/血中DNA・RNA)Qiagen DNeasy / RNeasy Kit、Thermo Fisher MagMAX Nucleic Acid Isolation Kit
  • transgene産物タンパク定量ELISAキットR&D Systems Quantikine ELISA、Thermo Fisher Invitrogen ELISA Kit、MSD U-PLEX アッセイ
  • 酵素活性測定試薬(酵素補充型の機能マーカー)Sigma-Aldrich 蛍光/発色基質(4-MU 誘導体等)、各酵素向け Activity Assay Kit(Abcam等)
核酸8
装置・機器5
試薬・キット3
細胞治療9
装置・機器5
試薬・キット4
  • 蛍光標識抗体パネル(CAR検出・免疫表現型・B細胞マーカー)BioLegend / BD Biosciences CD19・CD3・CD4・CD8 標識抗体、抗CAR検出試薬(抗idiotype/protein L)、Miltenyi Biotec CAR Detection Reagent(CD19/BCMA等 抗原特異的)
  • サイトカイン多項目イムノアッセイキット(IL-6・IFN-γ・TNF-α等)MSD V-PLEX Proinflammatory Panel、Thermo Fisher ProcartaPlex Cytokine Panel、BioLegend LEGENDplex、BD Cytometric Bead Array
  • ベクター/導入遺伝子コピー数定量PCR試薬Bio-Rad ddPCR Supermix for Probes、Thermo Fisher TaqMan Copy Number Assays、WPRE/導入遺伝子特異的プローブ
  • 細胞処理・生死判別・溶血試薬(フロー前処理)Thermo Fisher LIVE/DEAD Fixable Stain、BD FACS Lysing Solution、BioLegend Zombie Viability Kit
低分子7
装置・機器4
試薬・キット3
  • 電気化学発光アッセイキットMSD U-PLEX / V-PLEX アッセイ
  • リン酸化特異抗体Cell Signaling Technology、Abcam
  • 遺伝子発現アッセイThermo Fisher TaqMan Gene Expression Assays
規制・注意PDバイオアナリシスに用いるアッセイは、目的に応じた妥当性確認(fit-for-purpose validation)が求められます。バイオマーカーによる用量選択・PK/PD関連づけの考え方はICH S6(R1)(バイオ医薬品)やM3(R2)の枠組みに沿い、遺伝子治療・細胞治療ではFDA/EMAの各ガイダンスやICH S12(遺伝子治療製品の非臨床生体内分布)で、ベクター/導入遺伝子産物や生体内分布・発現の持続の評価が扱われます。免疫作動性の分子では、初回投与量の設定にMABEL(最小予測生物学的作用量)の考え方が用いられる点も踏まえます。

一次資料ICH S6(R1)(バイオテクノロジー応用医薬品の非臨床安全性評価)、ICH M3(R2)(非臨床安全性試験の実施時期)、ICH S9(抗悪性腫瘍薬の非臨床評価)、ICH S12(遺伝子治療製品の非臨床生体内分布)。遺伝子治療・細胞治療はFDA Guidance for Industry「Preclinical Assessment of Investigational Cellular and Gene Therapy Products」およびEMAの遺伝子/細胞治療関連ガイドラインを参照。

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