GENの報道によれば、DNA Script が ARPA-H(米国の先端医療研究計画局)の事業を獲得した。同社は自社の酵素法DNA合成(EDS:Enzymatic DNA Synthesis)技術を提供し、事業の技術ソリューション統合役を務めるとともに、GE HealthCare が持つ独自のDNAスケーリング技術を取り込む形で、自社のソリューションを適合させるとしている。
化学合成から酵素合成へ
DNAを人工的に作る方法は、長らくホスホロアミダイト法という化学合成が標準だった。有機溶媒と保護基を使い、1塩基ずつ伸ばしていく。確立された方法だが、いくつかの制約を抱えている。
- 長さの限界:伸ばすほど副生成物が増え、実用的な長さは200塩基程度で頭打ちになる
- 有害な溶媒:アセトニトリルなどを使い、廃液の処理が伴う
- 設備が要る:合成そのものを外注する運用が一般的で、届くまで待つ
酵素法は、DNAポリメラーゼの働きを使って水系で伸ばす。理屈のうえでは、より長く、より穏やかな条件で、装置を手元に置いて作れる。研究室で必要なときに必要な配列を作れれば、待ち時間がなくなる。
「スケーリング」が別の技術として要る理由
一方で、合成で得られるDNAはごく微量である。遺伝子治療のプラスミドやmRNAの鋳型として使うには、そこから増やす工程が別に要る。
従来はここを大腸菌で担ってきた。プラスミドを大腸菌に入れて培養し、抽出・精製する。確実だが、細菌由来の不純物(エンドトキシン、宿主DNA、RNA)を落とす精製が必要になり、時間もかかる。
無細胞で増幅できれば、この工程を丸ごと置き換えられる可能性がある。今回の組み合わせが「合成(DNA Script)」と「スケーリング(GE HealthCare)」で構成されているのは、この2段が揃わないと実用にならないからだと読める。
読むときの留意点
現時点で公表されているのは事業の枠組みであり、性能値や提供時期ではない。実務の判断材料にするなら、次が要る。
- 合成できる長さと配列の制約(繰り返し配列、GC含量の偏りへの耐性)
- 増幅後のDNAの品質(正確性、不純物プロファイル)
- GMP適合の道筋
※ 本ページは公開情報(GENの報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。事業の規模・時期を含む詳細は一次情報をご確認ください。