PHCと積水化学工業は10月6日、間葉系間質細胞(MSC)を大量に培養する工程づくりに向けた共同検証の結果を発表しました。PHCの自動培養装置「LiCellGrow」と、積水化学の化学合成足場材「Ceglu」を表面に被せた開発中のマイクロキャリアを組み合わせています。両社によれば、小スケールで得ていた増殖と細胞の品質を保ったまま、培地量1Lまで規模を上げられました。細胞の収量や培養日数、品質を見た項目は公表しておらず、詳しい結果は2027年3月の第26回日本再生医療学会総会で発表する予定です。
撹拌し続けない担体と、培地を自動で替える装置
MSCは足場に貼り付いて増える細胞です。他家の製品で多くの患者分をつくるには、フラスコを積み増すより、細胞を貼り付ける微粒子(マイクロキャリア)を培養槽に入れて育てるほうが場所も手間も抑えられます。ただ、一般的な担体は培地よりわずかに重く、撹拌を止めると沈んで固まるので、回し続けるのが前提でした。一方でMSCやiPS細胞は液のせん断に弱く、撹拌を強くするほど細胞を傷めます。
積水化学の開発品は、この前提を外す設計です。同社は、常に撹拌しなくても培養できる粒子にし、培養液の流れや穏やかな混合と組み合わせる考え方だと説明しています。足場材Cegluの材料設計と、微粒子をつくる技術を合わせて開発を進めています。
LiCellGrowは、培養液のグルコースと乳酸の濃度をインラインのセンサーで連続して測り、その値をもとに培地を自動で交換します。測定には、PHCが30年にわたって開発してきた血糖センサーの電気化学式の技術を使っています。多くの培養では、試料を抜いて代謝物アナライザーで測り、培地交換はあらかじめ決めた間隔で行います。細胞が実際に消費した量に合わせて替えれば、培養中の状態の変化に追随できます。なお、LiCellGrowは研究用の装置で、医療用ではありません。
1Lの先で問われる点
1Lは、工程を組み立てる段階の規模です。商用製造に向けてさらに大きな槽にしたときに同じ結果が出るか、担体から細胞をはがして回収する工程をどう組むかは、今回の発表に含まれていません。両社は、LiCellGrowによる代謝のモニタリングと培養の制御についても評価を進めています。
両社は、10月7〜9日にパシフィコ横浜で開かれたBioJapan 2026/再生医療JAPAN 2026の各ブースで、装置と開発品、今回の検証結果を紹介すると発表していました。PHCはCAR-T細胞療法などでも研究から商用製造までの規模拡大に対応する方針を掲げ、積水化学は開発品を各種の培養装置に広げる考えです。
担体を回し続ける前提を粒子の設計で外し、培地交換の時機を代謝の実測で決める組み合わせです。1Lで保てた増殖と品質を、さらに大きな槽でも保てるかが、細胞製造の工程に採り入れられるかの分かれ目です。
※ 本ページは2026年10月6日のPHCと積水化学工業の発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。