ろ過
2026.10.08•Sartorius•約6分

Sartopore Platinum(Sartorius)――濡れやすい膜で水を減らす

Photo: Nick Fewings / Unsplash

Sartopore Platinum は、Sartorius が手がける液体用の除菌グレードフィルターです。除菌グレードとは、決められた試験菌を大量に流しても下流へ通さないことを試験で示したフィルターを指し、無菌の医薬品をつくる工程の最後に置かれます。膜はポリエーテルスルホン(PES)で、0.45 µm と 0.2 µm の2枚を重ねた構成です。Sartorius はこの PES の表面全体に熱に強い親水性の高分子を付けて恒久的に親水化、つまり水になじみやすくしており、濡れやすさとタンパク質の付きにくさを売りにしています。

この製品の勘所は、孔の細かさではなく、⁠膜がどれだけ早く、むらなく水に濡れるかにあります。

濡れが悪いと完全性試験で起きること

除菌フィルターは、使う前と後に完全性試験で膜に破れや欠陥がないかを確かめます。

試験では膜を液で濡らしてから気体を押し当て、気体が孔の中の液を押し出して一気に流れ始める圧力(バブルポイント)や、液に溶けて抜けてくる気体の量(拡散流)を測ります。膜の一部が乾いたままだと、気体がそこを素通りし、欠陥のない膜でも不合格に見えることがあります。完全性試験で不合格が出れば、原因を調べて再試験し、場合によってはそのバッチの扱いを決め直す必要も出るので、現場の負担は小さくありません。Sartorius は、濡れ不足を完全性試験の失敗の大きな原因と位置づけています。サイズ9の MidiCaps(有効面積 0.26 m²)なら、注射用水 1 L 未満で濡らして試験まで行えるとしています。この濡れやすさによって、使う前に流すフラッシングの水を最大95%減らせるとも説明しています。ただし製品ページには比べた相手と条件が示されていないので、自社の手順と同じ条件で水量を測り直すのが確かです。⁠濡れやすさは水の節約だけでなく、完全性試験での「偽の不合格」を減らすための性能です。

低吸着が効く高濃度製剤とポリソルベート

もう一つの売りは、タンパク質が膜に付きにくいことです。高価な原液ほど、この差が回収率に表れます。

最終ろ過では、流し始めの液に含まれるタンパク質や、界面活性剤のポリソルベートが膜に吸着し、ろ液の濃度が一時的に下がることがあります。抗体を高い濃度で充填する工程では、この損失がそのまま原薬のロスです。Sartorius は、表面処理によって市場の PES 膜の中で最も吸着が少ないと説明しています。一方で競合の Cytiva も、自社の Supor Prime と Sartopore Platinum を比べ、面積あたりの処理量で自社品が上回ったとする試験結果を出しています。比較データはどのメーカーも自社の条件で出すので、高濃度・高粘度の最終ろ過のように詰まりやすい液では、候補を並べて自社の液で小さく試すのが近道です。⁠メーカーの比較表で選ぶのではなく、自社の処方で処理量と回収率を測ってから面積を決めます。

公表スペックの読みどころ

数字は Sartorius の公表値で、型番ごとに値が変わる前提で読みます。

同社の定番 Sartopore 2 も、0.45 µm と 0.2 µm の PES 二層という構成は同じです。Platinum の違いは膜表面の親水化処理にあります。10インチのカートリッジは、Sartopore 2 と同じ 0.6 m² の標準の折りに加えて、長い折りと短い折りを交互に入れる TwinPleat で 1 m² に広げた版も選べます。除菌グレードとしての性能は ASTM F838 に沿って検証され、出荷前には全エレメントでバブルポイントと拡散流を確かめています。バブルポイントの下限は標準品で 3.5 bar、基準を高めた HB 版で 4.1 bar です。形態は、ラボで使う Sartoscale 47 から、使い捨てのカプセルや MidiCaps、ハウジングに入れるカートリッジ、有効面積 3 m² の T-Style Maxicaps まであります。小さな形態で処理量を測り、同じ膜のまま大きな形態へ移せます。無菌ろ過フィルターの膜材質と構成の違いを踏まえると、PES 二層のまま吸着と濡れを改良した位置づけの製品です。価格や国内の納期は、製品ページからは読み取れません。⁠型番が変わると面積も試験条件も変わるので、完全性試験の基準値は、使う型番のデータシートで確かめます。

導入で確認したいこと

※ 本ページは公開情報(Sartorius の製品情報・データシート)をもとにした Proglenth 編集部による整理です。仕様・数値の詳細は公式情報をご確認ください。

主要諸元

用途液体の除菌ろ過。最終ろ過や充填前のろ過に使う
膜ポリエーテルスルホン(PES)。熱に強い親水性の高分子で表面全体を恒久的に親水化。非対称膜で、0.45 µm と 0.2 µm の二層
折り構造10インチのカートリッジに、標準の折り(0.6 m²)と、長短の折りを交互に入れて面積を1 m²に広げた TwinPleat 版がある
除菌性能の検証ASTM F838 に沿った除菌グレード。出荷前に各エレメントでバブルポイント試験と拡散流試験を実施
濡らしに要る水サイズ9の MidiCaps(有効面積 0.26 m²)を注射用水 1 L 未満で濡らし、完全性試験まで行える(同社公表)
フラッシングの水量最大95%削減(同社公表。比較の相手と条件は製品ページに示されていない)
最小バブルポイント(同社公表)標準品 3.5 bar、高バブルポイント版の Sartopore Platinum HB 4.1 bar
形態ラボ用の Sartoscale 47 から、カプセル、MidiCaps、カートリッジ、有効面積 3 m² の T-Style Maxicaps まで
エンドトキシン0.25 EU/mL 未満(LAL 法)

いずれもメーカー公表値です。構成やキットにより異なるため、実際の条件はメーカーの製品ページでご確認ください。

メーカー公式
Sartorius
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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