技術トピック
2026.08.23

757アミノ酸のCasを使えるようにする——酵母で回す定向進化プラットフォーム「EPICA.2」

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Photo: Pawel Czerwinski / Unsplash

bioRxiv に、小型 Cas ヌクレアーゼの活性を高めるための真核細胞での定向進化プラットフォームに関するプレプリントが投稿された。抄録によれば、要旨は次のとおりである。

「小さいが弱い酵素を、進化で強くする」という筋書きだが、⁠なぜ小ささにそこまでこだわるのかが、この分野の制約を映している。

積載容量が編集の方式を決めている

in vivo の遺伝子治療では、編集酵素そのものを体内に届ける必要がある。AAVベクターを使う場合、積載容量は約4.7キロベースに限られる。

SpCas9 は1,368アミノ酸で、コード領域だけで4.1キロベース程度を占める。ここにプロモーター、ガイドRNA発現カセット、ポリA、ITR を加えると収まらない。

このため、実務では次の回避策が取られてきた。

757アミノ酸で、しかも PAM が 5'-TTN-3' と緩い⁠——これは、上記の制約を同時に緩める組み合わせにあたる。だからこそ、活性の低さだけが障害として残っていた。

「ほぼ活性がない」ものを進化させる難しさ

定向進化は、変異を入れて活性の高いものを選ぶ操作を繰り返す。ここで問題になるのは、⁠出発点の活性が低すぎると選抜が働かないことである。

抄録が 「低バックグラウンドの哺乳類系」⁠⁠「酵母での進化ラウンドの追加」⁠を並べているのは、この問題への対処と読める。酵母は増殖が速く扱いやすいため多くの変異体を回せる。一方、最終的に使う環境は哺乳類細胞であり、酵母で良かったものが哺乳類で機能するとは限らない。⁠二段構えにして、量と環境の両方を取るという設計になっている。

PAM が緩いことの実務的な意味

PAM は、Cas が結合するために必要な近傍配列である。要求が厳しいほど、狙える編集部位が限られる。

5'-TTN-3' は、GC に富む領域を除けばゲノム上に高頻度で現れる。⁠設計の自由度という観点で、実用上の差は小さくない。

製造の側から見ると

編集酵素が変わることは、細胞治療の製造工程にも影響する。

そして、進化で得られた変異体は天然には存在しない配列である。遺伝子治療のQCでは、酵素の残存量や免疫原性の評価が論点になりうる。改変を加えたタンパク質が免疫応答を誘導する可能性は、天然型より予測しにくい。

先般報じられたVLPによる塩基編集酵素の送達のように、送達側から容量の制約を解く動きもある。酵素を小さくする道と、運び方を変える道は、同じ問題への別の解答といえる。

なお、本件はプレプリントであり査読を経ていない。改良後の活性がどの水準に達したか、オフターゲット特性がどう変わったかは、一次情報で確認する必要がある。

※ 本ページは公開情報(bioRxiv に投稿されたプレプリントの抄録)をもとにしたProglenth編集部による整理です。手法・結果・性能の詳細は一次情報をご確認ください。本文中の解説はゲノム編集一般の構造に関する説明であり、当該研究の具体的な内容や結論を示すものではありません。査読前の報告であるため、内容は今後変わりうる点にご留意ください。

学術・公的機関
biorxiv.org
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本記事は学術論文・公的機関の情報をもとに、Proglenth編集部が独自に見出し・要約・解説を加えて整理したものです。正確性には努めていますが、最終的な仕様・条件は各社の公式情報・一次情報をご確認ください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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