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核酸医薬応用・製造工程シリーズLNP(脂質ナノ粒子)をどう作り、測るか6/10実務

マイクロ流体混合でmRNA-LNPを量産する:NanoAssemblrの選び方

Proglenth 編集部公開 2026-07-22更新 2026-10-09約6分で読めます
マイクロ流体混合でmRNA-LNPを量産する:NanoAssemblrの選び方

処方をまったく変えずに、混ぜる装置だけを10種類替えてmRNA-LNP(脂質ナノ粒子mRNAなどの核酸を封入して細胞へ送達する脂質の微粒子。mRNAワクチンで大規模に実用化された非ウイルス系。詳しく →)を作ると、何が起きるのか。2026年にNature Communications誌に載った研究では、粒子径も封入率も、粒子の内部の構造まで、装置ごとに違う結果になりました。研究段階でよく使うピペット混合で作った粒子は、量産で使う乱流ミキサーの粒子と似ていなかったと報告されています。

LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。は、脂質と核酸を混ぜたその瞬間に一気にできあがります。だから混ぜ方の差が、そのまま粒子の差として残ります。Cytiva(旧Precision NanoSystems)のNanoAssemblrは、細い流路の中で混ぜ方をそろえるための装置です。処方検討から量産までの道筋で、どこにこの装置を置き、どこで何を確かめるかが、LNP製造の再現性を左右します。

この記事の要点

  1. マイクロ流体ミキサーは、粒子を作る装置というより、粒子ができる条件をそろえる装置です。混ぜる装置が粒子を決める理由 ↓
  2. 開発の途中で混合方式を切り替えるなら、切り替えの前後で粒子が同等であることを示す計画を、先に立てておきます。スケールアップで保つもの ↓
  3. どの工程のどの時点の値を規格や比較に使うかを、最初に決めておきます。よくある失敗 ↓

混ぜる装置が粒子を決める理由

LNPを作る操作そのものは単純です。エタノールに溶かした脂質と、酸性の緩衝液溶液のpHを一定範囲に保つために使用される弱酸と共役塩基の混合溶液。詳しく →に溶かしたmRNAを混ぜる。エタノールが水で薄まると、脂質は溶けていられなくなり、その場で集まりながらmRNAを抱き込んで粒子を作ります(自己集合)。

問題は、この集合がごく短い時間で進むことです。2つの液をビーカーで混ぜると、液が触れ合った界面では急に薄まり、離れた場所ではゆっくり薄まります。場所ごとに違う条件で粒子ができるので、大きい粒子と小さい粒子が混ざった、分布の広い製品ができます。

運動会の玉入れにたとえてみます。合図の聞こえ方が場所によってずれれば、投げ始めがそろいません。全員に同時に合図が届けば、そろって投げられます。マイクロ流体ミキサーがしているのは、液のどこでも同じ瞬間に「薄まる」という合図を届けること、つまり集合が始まる前に混ぜ終えることです。

マイクロ流体ミキサーは、粒子を作る装置というより、粒子ができる条件をそろえる装置です。

NanoAssemblrの仕組みと機種

速く混ぜる方法には、流れを激しく乱す方法と、流れを折りたたんで薄い層にする方法があります。NanoAssemblrは後者です。

髪の毛の数本分ほどの幅しかない細い流路では、2つの液は混ざらずに層になって並んで流れます。流路の壁に溝を刻んだヘリンボーン型や、流れを輪のように回すトロイダル型の構造に通すと、層が何度も折りたたまれて薄くなります。層が薄いほど、分子が隣の層へ移る距離が短くなり、混ざるのが速くなります。処方検討向けのIgniteでは、トロイダル型の混合構造を組み込んだカートリッジ(NxGen)を使います。

機種は、少量で処方を探索するSpark、Ignite、量を増やすBlaze、GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →製造向けのシステムに分かれています。Cytivaは、同じマイクロ流体の混合でラボの探索からGMP製造までつなげるとしています。

運転で動かせる条件は、主に2つです。水系と有機系の流量の比(水系と有機系をおよそ3対1で流すのがよく使われる出発点です)と、合計の流量です。処方の側では、粒子の表面を覆うPEG脂質LNP表面を覆い、安定性や体内動態を調整する脂質。詳しく →の割合が粒子径を大きく動かします。PEG脂質は粒子の成長を止める働きをするので、割合を変えると粒子の大きさが変わります。混合の条件を細かく振る前に、処方でどこまで動かせるかを見ておくと、条件出しの回数を減らせます。

この記事に関連する製品ガイド
ナノ粒子製剤装置→LNP用脂質→LNP粒子特性評価→
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スケールアップで保つもの

処理量を増やすときに引き継ぐべきものは、流量の数字ではありません。混ざり方そのものです。流路をそのまま太くして流量だけを上げると、層の厚みや流れの性質が変わり、混ざるまでの時間も変わります。ラボで出した粒子径や分布が、そのままでは再現しなくなります。

対策は大きく2つあります。1つは、同じ寸法の流路を何本も並べる並列化です。1本あたりの混ざり方は変わらないので、本数を増やした分だけ処理量が増えます。マイクロ流体の流路を多数並べて、mRNA-LNPワクチンの製造量を上げる研究も報告されています。もう1つは、衝突噴流(インピンジメントジェット)方式のような、別の混ぜ方に切り替えることです。2つの液を高速で正面からぶつけ、乱れた流れの中で一気に混ぜる方式で、処理量を大きく取りやすく、商用規模のワクチン製造でも使われてきました。KNAUERのIJMシリーズも、この方式の装置です。

ただし、方式を替えると粒子が変わりうることは、冒頭の研究が示したとおりです。流れの整った層を折りたたむ混ぜ方と、乱流で一気に混ぜる混ぜ方では、同じ処方でも同じ粒子になるとは限りません。

開発の途中で混合方式を切り替えるなら、切り替えの前後で粒子が同等であることを示す計画を、先に立てておきます。

LNPの混合と自己集合:マイクロ流体・T字・IJMの選び方関連記事LNPの混合と自己集合:マイクロ流体・T字・IJMの選び方mRNA-LNPは、脂質とmRNAを混ぜた一瞬で自己集合してできます。マイクロ流体、T字、衝突噴流(IJM)の違い、流量比・総流量・N/P比の動かし方、混合後のTFF、スケールアップでの失敗と確かめることを解説します。→

よくある失敗

いちばん多いのは、量産に移って数字が動いたとき、原因を混合以外に探して時間を使うことです。処方検討に使ったミキサーと量産のミキサーが別の方式なら、混合そのものが最初の容疑者です。処方検討の記録に、どのミキサーを、どの流量比と合計流量で使ったかが残っていないと、比べようがありません。

次に多いのが、混合の後の工程で分布を崩すことです。混ぜた直後の液にはエタノールが残っていて、粒子はまだ不安定です。タンジェンシャルフローろ過(TFF)でエタノールを抜き、中性の緩衝液に置き換えて濃縮しますが、濃縮しすぎれば粒子が凝集し、せん断が強すぎれば壊れます。混合の条件を詰めても、ここで分布が広がれば意味がありません。

封入率(mRNAのうち粒子に包まれた割合)を測る時点がそろっていないのも、比較を難しくします。粒子に入らなかったmRNAはろ過で抜けるので、ろ過の後には見かけの封入率が上がります。混合直後の値と製剤化後の値を並べて比べると、工程の良し悪しを読み違えます。

どの工程のどの時点の値を規格や比較に使うかを、最初に決めておきます。

導入前に確かめること

NanoAssemblrのようなマイクロ流体ミキサーを選ぶとき、またメーカーや受託先と話すときは、次の点を確かめておくと判断を誤りにくくなります。

  • 処方検討から量産まで、同じ混合方式でつなげるのか、途中で別の方式に替えるのか
  • 替えるなら、切り替えの前後で粒子径、分布、封入率、細胞での発現をどう比べるか
  • 量産の規模で必要な処理量に、並列化で届くのか
  • 処方検討の記録に、ミキサーの種類、流量比、合計流量、PEG脂質の割合が残っているか
  • 封入率と粒子径を、混合直後と製剤化後のどちらで測っているか
  • エタノールを抜くTFFの条件で、粒子径と分布が保たれることを確かめたか

装置の候補はナノ粒子製剤装置の製品ページで、NanoAssemblrと衝突噴流方式の装置などを並べて比べられます。脂質はLNP用脂質、エタノールを抜く工程はTFFシステム、粒子の評価はDLSやLNPの粒子特性評価のページにまとめています。

次に気になるのは、10種類のミキサーを比べた研究で具体的に何が違ったかでしょう。LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読むが答えます。粒子径の測り方と読み方はLNPの粒子径とPDI、封入率の測り方はLNPの封入率測定で解説しています。

参考文献

  • Bethiana T, Aljabbari A, Li Y, et al. Effects of different mixing techniques on mRNA lipid nanoparticle physicochemistry and biological performance. Nat Commun. 2026;17:5890.(処方を固定し混合方式だけを替えた比較。ピペット混合と乱流ミキサーの粒子の違い)
  • Cytiva, Microfluidic technology for scaling nanoparticle production(NanoAssemblrのマイクロ流体混合とスケールの考え方。メーカー資料)
  • Throughput-scalable manufacturing of SARS-CoV-2 mRNA lipid nanoparticle vaccines. PNAS. 2023.(マイクロ流体の流路を並列化してmRNA-LNPの製造量を上げる研究)
  • Belliveau NM, et al. Microfluidic Synthesis of Highly Potent Limit-size Lipid Nanoparticles for In Vivo Delivery of siRNA. Mol Ther Nucleic Acids. 2012;1:e37.(ヘリンボーン型マイクロ流体ミキサーでのLNP形成と、PEG脂質の割合による粒子径の制御)
シリーズの次(7/10)LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む→
シリーズLNP(脂質ナノ粒子)をどう作り、測るか6 / 10 本目
LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む次の記事 7本目・実務・約5分LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む処方をまったく変えずに、混ぜる装置だけを10種類替えてmRNA-LNP(脂質ナノ粒子)を作ると、何が起きるのか。→
  1. 1LNP(脂質ナノ粒子)とは?4つの脂質の役割と、肝臓に集まる理由
  2. 2LNPのイオン化脂質はなぜpKa6〜7か?届く割合を左右する設計
  3. 3LNPの混合と自己集合:マイクロ流体・T字・IJMの選び方
  4. 4LNPの粒子径とPDI:DLSとNTAの違いと数字の読み方
  5. 5LNPの封入率(EE%)とは?数字が答えないことと測り方の落とし穴
  6. 6マイクロ流体混合でmRNA-LNPを量産する:NanoAssemblrの選び方いま読んだ記事
  7. 7LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む
  8. 8RiboGreenアッセイでmRNA-LNPの封入率(%EE)を測る
  9. 9mRNA-LNPの保存緩衝液は、凍らせる前と後で答えが逆になる
  10. 10mRNA-LNPは凍結乾燥で冷蔵流通に載るか:論文が示す保存期間と条件
ナノ粒子製剤装置 ↗LNP用脂質 ↗LNP粒子特性評価 ↗TFFシステム ↗#核酸医薬#mRNA#LNP#NanoAssemblr
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この記事の目次
  1. 混ぜる装置が粒子を決める理由→
  2. NanoAssemblrの仕組みと機種→
  3. スケールアップで保つもの→
  4. よくある失敗→
  5. 導入前に確かめること→
  6. 参考文献→
シリーズ6 / 10
LNP(脂質ナノ粒子)をどう作り、測るか
  1. 1LNP(脂質ナノ粒子)とは?4つの脂質の役割と、肝臓に集まる理由
  2. 2LNPのイオン化脂質はなぜpKa6〜7か?届く割合を左右する設計
  3. 3LNPの混合と自己集合:マイクロ流体・T字・IJMの選び方
  4. 4LNPの粒子径とPDI:DLSとNTAの違いと数字の読み方
  5. 5LNPの封入率(EE%)とは?数字が答えないことと測り方の落とし穴
  6. 6マイクロ流体混合でmRNA-LNPを量産する:NanoAssemblrの選び方
  7. 7LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む
  8. 8RiboGreenアッセイでmRNA-LNPの封入率(%EE)を測る
  9. 9mRNA-LNPの保存緩衝液は、凍らせる前と後で答えが逆になる
  10. 10mRNA-LNPは凍結乾燥で冷蔵流通に載るか:論文が示す保存期間と条件
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この記事の目次
  1. 混ぜる装置が粒子を決める理由→
  2. NanoAssemblrの仕組みと機種→
  3. スケールアップで保つもの→
  4. よくある失敗→
  5. 導入前に確かめること→
  6. 参考文献→
シリーズ6 / 10
LNP(脂質ナノ粒子)をどう作り、測るか
  1. 1LNP(脂質ナノ粒子)とは?4つの脂質の役割と、肝臓に集まる理由
  2. 2LNPのイオン化脂質はなぜpKa6〜7か?届く割合を左右する設計
  3. 3LNPの混合と自己集合:マイクロ流体・T字・IJMの選び方
  4. 4LNPの粒子径とPDI:DLSとNTAの違いと数字の読み方
  5. 5LNPの封入率(EE%)とは?数字が答えないことと測り方の落とし穴
  6. 6マイクロ流体混合でmRNA-LNPを量産する:NanoAssemblrの選び方
  7. 7LNPは混ぜ方で変わる?10種のミキサーを比べた論文を読む
  8. 8RiboGreenアッセイでmRNA-LNPの封入率(%EE)を測る
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/nanoassemblr-lnp-microfluidic-scaleup-application

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