Optima AUC は、Beckman Coulter の分析用超遠心機(Analytical Ultracentrifuge、AUC)です。試料を最高60,000 rpm、最大290,000 × g で回し、粒子が沈んでいく様子を吸光とレイリー干渉の光学系でそのまま観察します。吸光は190〜800 nm で最大20波長、干渉は1024×1088 のCCDで読み、必要なら構成によって最大3系統を同時に搭載できます。
ここで押さえておきたいのは、この装置の値打ちが回転数の高さではなく、中身を分けるのに標識も担体もいらないという点にあることです。
沈降速度という物差し
AUCが測るのは、粒子が遠心場で沈む速さです。重くて密なものほど速く沈みます。
遺伝子治療のAAVでは、この沈む速さの差が、そのまま中身の違いを映します。ゲノムを積んだ実カプシドは密度が高く速く沈み、空カプシドはゆっくり沈み、部分的に積んだものはその間に出ます。凝集体はさらに速く沈みます。1回の測定で、これらが別々の沈降の境界として並びます。吸光を260 nm(核酸)と280 nm(タンパク質)で同時に読めば、どの集団がどれだけDNAを積んでいるかまで分かります。
ここで数字を1つ取り違えやすい場所があります。カタログの先頭に出る60,000 rpm は、多検体を一度に回す8穴のAn-50 Ti では出せません。An-50 Ti の上限は50,000 rpm で、60,000 rpm は4穴のAn-60 Ti に限られます。上限の回転数と、一度に測れる本数は、ローターの選び方で入れ替わる関係にあります。最高回転数は代表的な数字ですが、空と実を分ける実力のほうは、沈む速さを波長ごとに読む光学系の側にあります。
空・実比をラベルなしで読む理由
AAVベクターでは、ゲノムを積んだ実カプシドと空カプシドの比率が、効き目と安全性を左右します。
分析用超遠心法がこの空・実比の基準法とされるのは、抗体も染色もカラムも要らないからです。試料は希釈もろ過もされず、検出系が見ているのは溶液の中の本物の分布です。空・部分・実の3種と凝集体を、1回の測定でそのまま分けられます。業界でも遺伝子治療ベクターの評価で基準法として扱われてきました(関連ニュース)。
AEXクロマトグラフィーも空と実を分けますが、こちらは勾配に合わせて相対的に分けるぶん、条件づくりに依存します。ddPCRとELISAの比はゲノム量と全カプシド量の割り算で、2つの別々の数字から出ます。抗体にもカラムにも載せずに空・部分・実と凝集体を1回で分けられることが、AUCが空・実比の基準法とされる理由です。
抗体の凝集体とSECの補完
この装置の使いどころは、ウイルスベクターだけではありません。
抗体医薬では、沈降速度法が溶液のままで凝集体を測ります。現場の主力はサイズ排除クロマトグラフィーですが、SECは試料を樹脂に通して希釈するため、大きすぎる凝集体はろ過で落ちたり担体に吸われたりして、実際より少なく見えることがあります。AUCはカラムを通さないので、SECが数え落としていないかを照らす側に回ります。
そのかわり代償もあります。1セルは0.1〜0.44 mL の少量で、1回の測定に数時間かかり、沈降係数の分布へ当てはめる解析には担い手が要ります。カラムを通さないぶん結果は遅くて少量ですが、SECが見落としていないかを確かめる物差しとして働きます。
導入で確認したいこと
- 測定対象(AAVの空・実比か、抗体の凝集体か)に対し、吸光(260/280 nm)と干渉のどちらの検出が要るか
- 一度に回す検体数(An-50 Ti の8穴)と、上限60,000 rpm(An-60 Ti の4穴)のどちらを優先するか
- 1測定に数時間かかる処理時間を、SECやddPCRとの役割分担の中でどこに置くか
- 沈降係数分布への解析を担える人員と解析ソフトが社内にあるか
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様・数値の詳細は公式情報をご確認ください。
