分析・計測
2026.10.03•Beckman Coulter•約6分

Optima AUC(Beckman)――空・実比を沈む速さで測る

Photo: CDC / Unsplash

Optima AUC は、Beckman Coulter の分析用超遠心機(Analytical Ultracentrifuge、AUC)です。試料を最高60,000 rpm、最大290,000 × g で回し、粒子が沈んでいく様子を吸光とレイリー干渉の光学系でそのまま観察します。吸光は190〜800 nm で最大20波長、干渉は1024×1088 のCCDで読み、必要なら構成によって最大3系統を同時に搭載できます。

ここで押さえておきたいのは、この装置の値打ちが回転数の高さではなく、⁠中身を分けるのに標識も担体もいらないという点にあることです。

沈降速度という物差し

AUCが測るのは、粒子が遠心場で沈む速さです。重くて密なものほど速く沈みます。

遺伝子治療のAAVでは、この沈む速さの差が、そのまま中身の違いを映します。ゲノムを積んだ実カプシドは密度が高く速く沈み、空カプシドはゆっくり沈み、部分的に積んだものはその間に出ます。凝集体はさらに速く沈みます。1回の測定で、これらが別々の沈降の境界として並びます。吸光を260 nm(核酸)と280 nm(タンパク質)で同時に読めば、どの集団がどれだけDNAを積んでいるかまで分かります。

ここで数字を1つ取り違えやすい場所があります。カタログの先頭に出る60,000 rpm は、多検体を一度に回す8穴のAn-50 Ti では出せません。An-50 Ti の上限は50,000 rpm で、60,000 rpm は4穴のAn-60 Ti に限られます。上限の回転数と、一度に測れる本数は、ローターの選び方で入れ替わる関係にあります。⁠最高回転数は代表的な数字ですが、空と実を分ける実力のほうは、沈む速さを波長ごとに読む光学系の側にあります。

空・実比をラベルなしで読む理由

AAVベクターでは、ゲノムを積んだ実カプシドと空カプシドの比率が、効き目と安全性を左右します。

分析用超遠心法がこの空・実比の基準法とされるのは、抗体も染色もカラムも要らないからです。試料は希釈もろ過もされず、検出系が見ているのは溶液の中の本物の分布です。空・部分・実の3種と凝集体を、1回の測定でそのまま分けられます。業界でも遺伝子治療ベクターの評価で基準法として扱われてきました(関連ニュース)。

AEXクロマトグラフィーも空と実を分けますが、こちらは勾配に合わせて相対的に分けるぶん、条件づくりに依存します。ddPCRとELISAの比はゲノム量と全カプシド量の割り算で、2つの別々の数字から出ます。⁠抗体にもカラムにも載せずに空・部分・実と凝集体を1回で分けられることが、AUCが空・実比の基準法とされる理由です。

抗体の凝集体とSECの補完

この装置の使いどころは、ウイルスベクターだけではありません。

抗体医薬では、沈降速度法が溶液のままで凝集体を測ります。現場の主力はサイズ排除クロマトグラフィーですが、SECは試料を樹脂に通して希釈するため、大きすぎる凝集体はろ過で落ちたり担体に吸われたりして、実際より少なく見えることがあります。AUCはカラムを通さないので、SECが数え落としていないかを照らす側に回ります。

そのかわり代償もあります。1セルは0.1〜0.44 mL の少量で、1回の測定に数時間かかり、沈降係数の分布へ当てはめる解析には担い手が要ります。⁠カラムを通さないぶん結果は遅くて少量ですが、SECが見落としていないかを確かめる物差しとして働きます。

導入で確認したいこと

※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様・数値の詳細は公式情報をご確認ください。

主要諸元

方式分析用超遠心機(Analytical Ultracentrifuge、AUC)
回転数・遠心力最高60,000 rpm/最大290,000 × g(An-60 Ti使用時)
光学検出吸光(キセノンフラッシュ、190〜800 nm、最大20波長、波長精度±0.5 nm)とレイリー干渉(CCD 1024×1088)。構成により最大3系統を同時搭載
ローターAn-50 Ti(8穴/最高50,000 rpm)、An-60 Ti(4穴/最高60,000 rpm)
温度制御7〜40℃(周囲温度により4〜40℃)。真空度5ミクロン(0.7 Pa)以下
試料量1セルあたり0.1〜0.44 mL
主な用途AAVの空・実比評価、タンパク質の凝集・会合解析(沈降速度法 SV-AUC/沈降平衡法 SE-AUC)

いずれもメーカー公表値です。構成やキットにより異なるため、実際の条件はメーカーの製品ページでご確認ください。

メーカー公式
Beckman Coulter
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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