インドの受託研究・開発・製造企業(CRDMO)Aragen Life Sciencesは10月6日、高薬理活性の化合物を扱う開発・製造拠点「Aragen OneHP」の稼働を始めたと発表しました。拠点はハイデラバードのナチャラム(Nacharam)キャンパスにあります。がん治療に使う細胞毒性のペイロード(抗体などに結合させる薬物)を含む、高薬理活性の分子が対象です。ミリグラム単位の探索合成から、キログラム単位のcGMP製造までを1か所で引き受けます。製造ラインは1本で、原薬の設計上の生産能力は年500〜600kgです。OneHP単独の投資額や、導入した封じ込め設備の機種は公表していません。
空気1立方メートルあたり10ナノグラムの封じ込め
高薬理活性原薬(HPAPI)は、ごく微量で薬理作用を示すため、作業者が吸い込んでよい濃度の上限(OEL、職業曝露限界値)が極端に低く設定されます。同社は、OneHPの封じ込め設備を、OELが10ng/m³(0.01µg/m³)の化合物まで扱える設計だと説明しています。業界の解説資料ではOEB 5を1µg/m³未満とする表が多く、10ng/m³はその100分の1の水準です。
同社はこの拠点をOEB 6と位置づけていますが、OEBの段の切り方は会社によって違い、段数だけではどこまで封じ込めるのかが読めません。今回は数値を示した点に意味があります。ただし同社は、10ng/m³に「検証継続中」と但し書きを付けています。封じ込めの性能値は、代用の粉を使った決まった試験条件で測るのが一般的で、受託先を比べる際は、どの条件で確かめた値かを聞く必要があります。
規模は3段に分かれます。探索段階の合成が10gまで、非GMPのプロセス開発とスケールアップが500gまで、cGMP製造が1バッチ500g〜5kgです。広さは約1万5,000平方フィート(約1,400平方メートル)です。
段階ごとに分かれやすいHPAPIの委託先
HPAPIの開発では、探索合成、プロセス開発、GMP製造を別々の会社に任せることがあります。会社をまたぐたびに、その境目で技術移管が要ります。移管の重さは、送り出す側に製法の履歴がどれだけ残っているかで変わります。Small Molecules CDMO部門のCEO、Aniel Khubchandani氏は「提供者のあいだの受け渡しを減らし、分子が初期開発から商用供給へ進むあいだも、プロセスの知見とプログラムの経緯をつなげておける」と述べています(発言は編集部訳)。
同社はOneHPを、ADCやペプチド・薬物複合体(PDC)へ広げる足がかりとしています。ペイロードとリンカーの調達はADC開発の日程を縛りやすく、国内でも富士フイルムがリンカー・ペイロードの製造設備を2028年に稼働させる計画です。同社によれば、ハイデラバードの製造・分析部門は米FDAのほか、日本のPMDAを含む各国当局などの認定を受けています。
「OEB 6対応」という段数だけでは、封じ込めの実力は比べられません。今回Aragenは10ng/m³という設計値を示しました。その検証結果は、日本の製薬企業がインドの受託先を比べるときにも確かめたい数字です。
※ 本ページは2026年10月6日のAragen Life Sciencesの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。