富士フイルムは10月6日、グループ会社の富士フイルム和光純薬の生産子会社が運営する広野工場(福島県双葉郡広野町)に、抗体薬物複合体(ADC)の原料をつくる設備を導入すると発表しました。つくるのは、薬物(ペイロード)と、それを抗体につなぐリンカーを結合させた「リンカー・ペイロード」です。新設備は2028年に稼働する予定です。投資額や生産規模は公表していません。
原料から製剤まで、グループの中で一貫
ADCは、抗体に強い薬物を結合させ、がん細胞に狙いを絞って届ける薬です。製造は、リンカー・ペイロードの合成、抗体の培養と精製、両者を結合させるコンジュゲーション、製剤化に分かれます。広野工場が担うのは最初の工程で、富士フイルム和光純薬がそのプロセス開発と製造受託を引き受けます。
抗体の製造からコンジュゲーション、製剤化までは、富士フイルム富山化学の工場が担う計画で、こちらは2027年に稼働する予定です。2つがそろうと、原料から製剤までをグループの中で一貫して受託できます。同社はこれを国内初のワンストップのADC受託(ADC-CDMO)だとしています。「国内初」は、日本CDMO協会のデータをもとにした同社の調べです。
工程をまたぐ受け渡しの数
リンカー・ペイロードは毒性の強い化合物を扱うため、作業者を守る封じ込めの設備が要ります。抗体をつくる工場とは性格の違う設備で、別々の会社に委託されることも珍しくありません。委託先が工程ごとに分かれると、そのたびに技術移管と品質の取り決め、毒性の高い中間体の輸送が発生します。ペイロードとリンカーの調達が開発の速さを左右する例もあります。
9月には大鵬薬品工業とADCの製造技術で提携しており、ADCの受託を国内で固める動きが続いています。
ADCの受託で問われるのは、毒性の強い原料と抗体を、どれだけ少ない受け渡しで薬にできるかです。今回の投資は、その受け渡しを1つのグループの中に収める計画です。
※ 本ページは2026年10月6日の富士フイルムの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。