富士フイルムと大鵬薬品が、次世代の抗体薬物複合体(ADC)の製造技術を一緒に開発する戦略的パートナーシップを結びました。8月3日の発表です。対象になるのは、大鵬薬品が AraLinQ という独自のプラットフォームで創り出したADCで、両社はその製造プロセスの最適化に取り組みます。
AraLinQ は、抗体に薬物を選択的かつ均一に結合させる技術だと説明されています。富士フイルム側は、バイオCDMO事業で積んだ抗体医薬の工程開発と製造の実績を持ち込みます。
均一に付けることが、なぜ製造の話になるのか
ADCは、抗体に細胞毒性のある薬物をリンカーでつないだ分子です。何個つないだかを示す指標がDAR(薬物抗体比)で、ここがばらつくと、効きも安全性も分布のかたちで変わります。
従来のコンジュゲーションは、抗体のリジンやシステインを狙って反応させる方法が主流でした。ただ、狙える位置が複数あるので、結合の数も場所も分布します。分布があるということは、ロットごとに山の形が動くということです。部位特異的コンジュゲーションが追われてきたのは、この揺れを設計で潰すためです。
均一に付ける技術を持っていても、そのまま商用の規模で作れるとは限りません。反応の条件、精製の並び、そして中間体をどこまで保持できるか。パートナーシップが「製造技術の開発」と書かれているのは、そこに詰めるべきものが残っているからです。
2027年、国内で抗体から製剤までを1か所で
もう一つの柱が、富士フイルム富山化学の設備です。2027年から、国内初となるADCの一貫製造サービスを始める予定だとしています。抗体の製造、コンジュゲーション、そして製剤までを日本国内で通す体制です。
ADCの受託は、工程が3つの世界にまたがるところが難しい。抗体は生物学的製造、コンジュゲーションは高薬理活性物質の取り扱い、製剤は無菌の世界です。ペイロードとリンカーの供給まで含めると、関わる拠点はさらに増えます。1か所に寄せられれば、そのぶん移送と受け渡しの手間が消えます。
今回の発表では、提携の金額も、対象となる個別の品目も示されていません。2027年に開く設備のどこを大鵬薬品が使うのかも、報道からは分かりません。
プラットフォームを持つ側と、作る場所を持つ側が組む。ADCで国内が薄かったのは、後者のほうです。
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。提携の範囲・時期・条件の詳細は公式情報をご確認ください。