受託開発製造(CDMO)の Catalent は2026年10月5日、二重特異性抗体や多重特異性抗体などの次世代分子を対象に、遺伝子配列から原薬のロットリリースまでを10か月で進める米国内のプログラムを発表しました。モノクローナル抗体向けの Rapid Antibody(遺伝子からGMP原薬まで最短8か月)を、構造の複雑な分子へ広げたものです。2024年12月に Novo Holdings が約165億ドル(企業価値)で買収した同社の Biologics Group 社長、David McErlane 氏は、複雑な抗体を「定まった、規律ある道筋」で臨床へ進められるよう顧客を支援していると述べています(発言は編集部訳)。
節目は3つです。マスターセルバンク(MCB)の条件付きリリースが7か月目、バルク原薬の製剤工場(同社の拠点)への出荷が9か月目、原薬ロットのリリースが10か月目で、いずれも見込みとして示されました。細胞株の開発には、同社の GPEx Lightning を使います。CHO細胞のゲノムのうち、遺伝子の読み取りが活発な決まった位置(ドックサイト)へ遺伝子を狙って入れる技術です。同社は、細胞に遺伝子を導入してから安定発現の細胞プールができるまでを25日としています(自社公表値)。
10か月のうち7か月を占める細胞株とMCB
25日は最初の一段にすぎません。MCBまでには、このあとにクローンの選抜、バンクの作製、試験が続きます。二重特異性抗体では、この選抜がとくに重い作業です。IgG型では4種類の鎖を1つの細胞に作らせるため、鎖の組み違い(ミスペアリング)で似た分子が混ざり、力価が高いだけのクローンは選べません。狙った分子の割合まで見て絞る必要があります(細胞株開発、二重特異性抗体の製造課題)。MCBのリリースから原薬の出荷までは2か月で、前段が遅れた分を後段で取り戻す余地は大きくないことがうかがえます。
条件付きリリースと月数の読み方
MCBは、製造に使う細胞を小分けにして凍結した出発点の在庫です(MCBとWCBの違い)。無菌、マイコプラズマ、同一性に加えて、外来性ウイルスなどを調べる重い試験がMCBに集まります(ICH Q5D、Q5A(R2))。「条件付き」がどの試験を終えた状態を指すかは、委託の前に同社へ確かめておきたい点です。
月数は同社が掲げる目標です。同じ10か月でも、起点が配列を渡した日か契約の日か、前提にする力価がいくらか、分子の構造をどう設計しているかで、中身は変わります。モノクローナル抗体の8か月から2か月延びた分が、複雑な分子で同社が見込む追加の時間です。
この10か月は、細胞株とバンクの工程を7か月目までに詰めた計画です。自社の分子で見積もるときは、月数より先に、条件付きリリースの中身と起点の日を確かめておく必要があります。
※ 本ページは2026年10月5日のCatalentの発表と、同社の公開資料、公開報道をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。