Manufacturing Chemist の報道によれば、Shanghai Henlius と Sandoz が既存の提携を拡大し、モノクローナル抗体および抗体薬物複合体(ADC)のバイオシミラー最大10品目を対象とした。初期の契約は最大3億2,200万ドル規模とされる。FiercePharma は、Sandoz が初期資産について最大1億50万ドルを前払いし、開発初期の3品目の販売権を得ると報じている。
抗体のバイオシミラーは既に確立された市場である。この提携で目を引くのは、そこに ADC が含まれている点にある。
バイオシミラーは「同じもの」を作る競技ではない
前提として、バイオシミラーは後発の低分子医薬品とは性格が違う。
低分子であれば、構造式が同じであることを示せる。生物由来の高分子では、細胞株も、培地も、精製工程も先行品とは異なる。同じものは作れない。作れるのは「臨床的に意味のある差がないもの」である。
したがって開発の中心は合成ではなく比較になる。
- 一次構造、糖鎖プロファイル、電荷変異体、凝集体
- 標的への結合、ADCC/CDCなどのエフェクター機能
- 薬物動態、免疫原性
先行品を多ロット入手し、そのばらつきの幅を掴んだうえで、自社品がその範囲に収まることを示す。先行品の変動幅が、そのまま自社の規格の外枠になるという構造をしている。
ADCで比較すべきものが増える
ADC のバイオシミラーが難しいのは、比較の対象が三つに増えるためである。
- 抗体部分:通常の抗体バイオシミラーと同じ項目
- ペイロードとリンカー:低分子として、純度・不純物プロファイルを合わせる
- 結合の状態:どこに、いくつ付いているか
三番目が独特である。薬物抗体比(DAR)は平均値だけの話ではなく、分布として一致させる必要がある。
- DAR 0、2、4、6、8 の各種がどの割合で存在するか
- 抗体のどの部位に結合しているか(結合部位の分布)
- 未反応のペイロード、遊離した薬物
これらは結合反応の条件で動く。還元剤の量、反応時間、温度、pH、精製の切り方。先行品の製法は当然公開されていないため、出てくる分布から逆に条件を探す作業になる。
さらに、DAR分布が変われば薬物動態も変わりうる。抗体部分だけを合わせても足りない理由がここにある。
分析法をどこまで揃えられるか
比較で成り立つ開発である以上、測定法そのものが議論の対象になる。
- DAR分布を疎水性相互作用クロマトグラフィーや質量分析でどう測るか
- 遊離薬物の定量で、どこまでの微量を検出できるか
- 分析法の特異性・選択性を、複合体という複雑な対象でどう示すか
そして製造の観点では、工程が変わったときに同じ分布を再現できるかが問われ続ける。同等性評価(ICH Q5E)の枠組みは、開発時の先行品との比較だけでなく、自社の工程変更のたびに適用される。
提携という形をとる理由
早期段階の資産を対象に、開発側と販売側が組む形になっているのは、この領域の投資回収の構造を反映している。
バイオシミラーは、開発に相応の費用と期間がかかる一方、上市後は価格競争になる。先行品の特許満了時期に間に合わなければ、投じた費用の回収が難しくなる。開発の実行と、各地域での販売網を分けて持つ組み立ては、その時間制約への対応と読める。
ADC の先行品が特許満了を迎える時期が視野に入りつつある中で、難易度の高いバイオシミラーに早くから資源を置く動きが出てきた——という位置づけになる。
※ 本ページは公開情報(Manufacturing Chemist および FiercePharma の報道)をもとにしたProglenth編集部による整理です。契約条件・対象品目・開発段階の詳細は一次情報および両社の公式発表をご確認ください。本文中の解説はバイオシミラーおよびADC開発一般の構造に関する説明であり、対象品目の具体的な開発内容を示すものではありません。