シードトレインの途中で、シェーカーの棚が埋まって困ったことはないでしょうか。バイオリアクターに入れる種細胞を増やす段階では、容量を上げるより先に、フラスコの本数が増えます。棚の面積は決まっているので、そこで頭打ちになります。
Thomson Instrument Company の Optimum Growth Flask は、その頭打ちを1本あたりの充填率で外しにいく容器です。GBI Biomanufacturing が小規模GMPの枠組みに組み込んだことで、名前を見る機会が増えました。
3割から、4割から5割へ
通常の振とうフラスコは、容量のおよそ3分の1までしか入れません。それ以上入れると、振とうしたときに液面が十分に動かず、酸素が入らなくなります。培養は酸素の移動で律速されるので、入れすぎると増えません。
Optimum Growth Flask は、この上限を4割から5割まで引き上げる設計だとされています。1Lのフラスコなら330mLではなく400mLから500mLが入る計算で、同じ棚に同じ本数を並べたときの培養液量が1.2倍から1.5倍になります。
効いているのはバッフルの形です。低せん断とうたわれる独自のバッフルで、通気を増やしながら細胞の生存率を保つとされています。通常のバッフル付きフラスコは、通気を稼ぐ代わりに泡立ちとせん断が増えるという交換条件を持っていて、動物細胞ではそれが痛みます。ここを作り込んだ、というのが売り文句になっています。
キャップとフットプリント
キャップには0.2µmのPTFE製の通気フィルターが付きます。無菌を保ちながらガス交換を通す、振とう培養では定番の構成です。個包装で滅菌済みなので、クリーンルームにそのまま持ち込めます。
外形は、同じ容量のFernbachフラスコと同じ設置面積に収まるとされています。棚の設計を変えずに置き換えられるという意味で、ここは現場の乗り換え負担に直結します。
寸法は125mL、250mL、500mL、5L、7Lが用意されています。刻みが粗く見えますが、シードトレインは各段でおよそ5倍から10倍に増やしていくので、この刻みで足ります。
充填率の差は、1本では2割でも、棚1段ぶんでは本数の差として返ってきます。
どこまでがフラスコの仕事か
フラスコでできることには終わりがあります。溶存酸素もpHも測らず、制御もしないので、培養の状態は取り出して測るまで分かりません。
だからこの容器が効くのは、条件がすでに決まっていて、あとは量を作るだけの段階です。シードトレインの前半、あるいは細胞株を選んだ後の増やす工程がそこにあたります。条件を探している段階なら、測れる小型バイオリアクターのほうが得るものが多くなります。
逆に、測らなくてよい工程でバイオリアクターを回すのは、洗浄と段取りのぶんだけ損です。どちらが良いという話ではなく、その段で何を知りたいかで決まります。
制御しない容器を選べるかどうかは、工程の理解がどこまで進んでいるかの目安になります。
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。寸法・充填率・仕様の詳細はメーカーの公式情報をご確認ください。
