米国のPrimrose Bio(サンディエゴ)は10月14日、mRNAの製造に使うRNAポリメラーゼ2品を発売したと発表しました。DNAの鋳型からRNAを合成するin vitro転写(IVT)の酵素で、製品名は「Prima RNApols Cap AG」と「Prima RNApols 7 Pro」です。2品とも研究用グレードを販売し、GMPグレードについては問い合わせを受け付けています。価格や供給量は公表していません。10月28〜30日のAMM Ascentと、11月17〜19日にボストンで開かれるInternational mRNA Health Conferenceで披露する予定です。
標準のT7と比べた同社の数値
IVTでは長く、T7 RNAポリメラーゼが使われてきました。この酵素は副反応で二本鎖RNA(dsRNA)をつくります。dsRNAは細胞の自然免疫センサーを刺激し、mRNAからのタンパク質合成を抑える不純物です。
Cap AGは、AG型のキャップアナログを転写と同時に付ける工程(AGキャップ)向けに最適化した酵素です。同社によれば、Cap AGでつくったRNAはT7と比べてdsRNAが100分の1以下でした。キャッピング効率は97%を超え、そのとき1反応に使うキャップアナログは半分未満で済むとしています。タンパク質の発現量は最大3倍に高まったと説明しています。いずれも同社の公表値で、比較した反応条件や発現を測った細胞は示していません。
7 Proは、T7プロモーターの配列への対応を保ったまま改良した酵素です。AGキャップにもAUキャップにも合わせてあります。発現量、キャッピング効率、dsRNAのいずれも改善したとしていますが、こちらは数値を出していません。シリーズにはこのほか、AUキャップや長い鋳型に向けた「Prima RNApols Cap AU」もあります。
dsRNAを反応の段階で減らす意味
dsRNAはmRNAと材料も大きさもほぼ同じで、濃縮やバッファー交換では落ちません。いまはセルロースや逆相クロマトグラフィーによる専用の精製で取り除くのが一般的です。精製を1段加えるごとに回収率は下がり、逆相を使えば溶媒の調達や廃棄の負担も増えます。反応の段階でdsRNAが少なければ、この精製をどこまで残すかを見直す余地が出てきます。
キャップアナログの使用量も、原材料費に直結します。共転写キャッピングのアナログは特定のメーカーから買う試薬で、1反応あたりの量を半分にできれば調達の負担は軽くなります。
ポリメラーゼの改良を競う動きは、ほかにもあります。TriLinkが6月にGMP酵素の出荷を始めた「CleanScribe」は、野生型T7と比べてdsRNAを最大85%減らすと説明していました。条件が違うため、2社の数値を並べて優劣は付けられません。Primrose Bioは、独自の微生物発現系「Pfenex」が承認済みの6製品に使われている会社です。タンパク質の生産技術で実績を持つ会社が、mRNAの原材料に製品を広げた形です。
dsRNAを酵素の側で減らせるかどうかは、精製工程の数と原材料費の両方に響きます。100分の1という同社の数値が自社の鋳型と反応条件でも出るかは、研究用グレードで先に確かめられます。
※ 本ページは2026年10月14日のPrimrose Bioの発表(PR Newswire)をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。