空気中の粒子は、どうやって数えるのか?光散乱式粒子計数器と0.5µm・5µm

空気中の粒子の数え方は、クリーンルーム空気中の塵埃・微生物を規定レベル以下に管理した、医薬品・細胞製品の製造に用いる専用室。詳しく →のグレード判定やモニタリングの結果を読む人、粒子計数器を選ぶ人や校正を管理する人が押さえる基本です。光散乱式粒子計数器は、吸い込んだ空気の粒子1つずつに光を当て、散らされた光の強さから大きさを見分けて数える装置です。
ただし、計数器が分かるのは粒子の数と、光の散らし方から見た大きさだけで、生きた菌かどうかは分かりません。採取の管の長さや曲がり、校正の状態によっても、数えた値は変わります。
この記事では、計数器の仕組み、0.5µmと5µmで数える理由、1回に吸う空気の量、菌を別に測る理由、数がずれる原因、自分の測定で確かめる順番を順に説明します。
- 光散乱式粒子計数器とは:吸い込んだ粒子に光を当て、散らされた光のパルスの高さで大きさを見分け、0.5µm以上・5µm以上などの区分ごとに数える装置です。
- なぜ0.5µmと5µmなのか:0.5µm以上は数が多く清浄さの変化をとらえやすい目安、5µm以上は空調や装置の不具合、作業のしかたで増える大きな粒子の目安です。
- 粒子が少なければ菌もいないのか:言えません。計数器は菌とほかの粒子を区別しないため、菌は培地に集めて別に測ります。
1. 光散乱式粒子計数器は、どうやって粒子を数えるのか
吸い込んだ空気を光の中に通し、粒子が1つ横切るたびに散らされる光をパルスとして数え、パルスの高さで大きさを見分けます。
粒子が光を横切ると、受光素子(光を電気に変える素子)に電気のパルスが生まれ、その高さが、粒子が光を散らす強さを表します(Rosenberg PD, et al. 2012)。散らす強さは主に粒子の大きさで決まるため、パルスの高さから大きさを見分けられます。
数える流れは、次の4つの段に分かれます。
- 吸い込む:内蔵のポンプで、決まった流量の空気を採取口から吸い込みます。
- 光を当てる:流路を横切るレーザー光の中を、粒子が1つずつ通ります。
- 散乱光を測る:粒子が散らした光をレンズで集め、受光素子が電気のパルスに変えます。
- 大きさで分けて数える:パルスの高さを0.5µmや5µmにあたるしきい値と比べ、それ以上の粒子を数えます。数えた数を吸った空気の量で割り、1 m³あたりの個数にします。

ここでの大きさは、顕微鏡で測る寸法とは違います。散らす光の量は粒子の形や屈折率(光の曲がりやすさ)でも変わり、大きさとの関係はいつも単純ではありません(同上)。計数器は、大きさの分かったポリスチレンラテックス(PSL)の球などで校正するため、数えた大きさは、その球と同じだけ光を散らす大きさとして読みます。
クリーンルームの分類の国際規格 ISO 14644-1 も、この方式の計数器で数えることを分類の基本にしています(1項)。計数器の校正と検証の方法は ISO 21501-4 が定め、主に対象とする粒子は0.1〜10µmです。
このように、計数器が出す数は、その大きさ以上の粒子が1 m³に何個あったかを表します。では、なぜ0.5µmと5µmの2つで数えるのでしょうか。
2. なぜ0.5µmと5µmで数えるのか
0.5µm以上の粒子は数が多く、清浄さの変化をとらえやすい目安です。5µm以上の粒子は、空調や装置の不具合、作業のしかたで増える大きな粒子の目安です。
無菌医薬品の製造を扱う欧州のGMPの附属書(EU GMP Annex 1無菌医薬品の製造に関するEU GMPの付属書。汚染管理戦略などを求める無菌製造の基準。詳しく →)は、部屋の分類でもモニタリングでも、両方の大きさを数えるよう求めています(4.27、9.17、表5)。数えるのはしきい値以上の粒子をすべて含めた数で、5µm以上の粒子は、0.5µm以上の数にも入っています。
5µm以上の粒子は、清浄な部屋ではわずかしかありません。それでも Annex 1 は、グレードA充填点周辺など無菌操作の中心となる最高清浄度区域。作業中も連続監視される。詳しく →で低い数でも続けて、あるいはくり返し数えられたら、調べるよう求めています(表5の注2)。空調のフィルターの早い段階の故障や装置の故障、装置の準備や日常の作業での不適切なやり方の兆候になりうるためです。
一方で、数が少ないことは、分類での扱いも変えました。ISO 14644-1 は粒子の数で清浄さをISOクラス1〜9に分け、2015年版では、ISOクラス5とそれより清浄な区域の分類に5µm以上の粒子を使わないことにしました。改訂を担った作業部会の主査は、少ない粒子を集める効率と数える正確さに不確かさがあるためと説明しています(Markarian J. 2016)。
Annex 1 の2022年版も、グレードAの分類では5µmの限度を置かず、日常の監視には限度を置いています(表1、表5)。ISOクラス5とグレードAの違いは、グレードAはISOクラス5と同じ?で扱っています。
つまり、5µmは監視の大事な目安ですが、数が少ないぶん、1回の測定で数えきるのが難しい大きさです。では、1回にどれだけの空気を吸えば足りるのでしょうか。
3. 1回に吸う空気の量は、何で決まるのか
数えた粒子が少ないと結果が偶然で大きく揺れるため、限度ちょうどの濃度でも20個以上を数えられる量を吸います。
ISO 14644-1 は、分類で1地点に吸う量をこの考え方で決め、最低でも2リットル・1分とするよう定めています。必要な量は、20 ÷ 限度(個/m³)× 1,000 リットルです。グレードAの0.5µmの限度3,520個/m³なら約5.7リットルで、毎分28.3リットル(1立方フィート)で吸う計数器なら1分で足ります。
説明のために、同じ式をグレードAの監視での5µmの限度29個/m³に当てると、約690リットルで、同じ計数器で約24分かかります。言い換えると、1分の測定では、限度ちょうどの濃度でも5µm以上の粒子は平均1個に届きません。
そのため、グレードAで5µmの粒子がときどき数えられても、それだけで汚染とは決められません。 Annex 1 も、こうした計数は電気的なノイズや迷光(装置の中の余分な光)による誤計数のことがあるとしています(表5の注2)。
地点の数は、部屋の面積から ISO 14644-1 の表で決めます。日常の監視の採取量は分類と同じでなくてよく、その根拠を示します(Annex 1 の 9.21)。
つまり、粒子の数は、十分な量の空気を吸って初めて意味を持ちます。では、粒子を十分に数えれば、菌の有無も分かるのでしょうか。
4. なぜ粒子とは別に、菌を測るのか
計数器は光の散らし方で大きさを見るだけで、生きた菌か、ほかの粒子かを区別しないためです。
ISO 14644-1 も、粒子の数による分類では、粒子が生きているかどうかなどの性質は分からないとしています(1項)。そのため菌は、空気を培地に当てて集め、育った集落の数(CFU培養した際に1つのコロニー(集落)を形成する微生物の単位で、生菌数を表す際に用いられる。詳しく →、集落形成単位)で数えます。
粒子と菌の数は、桁が違います。55人を測った報告では、クリーンルーム用の衣服を着た状態で、0.5µm以上の粒子は菌を運ぶ粒子(菌が付いて空気中を漂う粒子)の平均約5,800倍、5µm以上の粒子でも約210倍出ていました(Whyte W, Hejab M. 2007)。菌を運ぶ粒子の平均の大きさは、測り方によって9µmまたは18µmでした。
同じ報告は、菌を運ぶ粒子が出るときは、0.5µm以上と5µm以上の粒子もいつも多く出ていたとし、菌の間接の目安として5µmを数える利点は小さいと述べています。
粒子に当てた光で出る蛍光から、生物由来の粒子かを見分ける計数器もあります。Annex 1 は、迅速法などの新しい監視の方法を、従来の方法と同等以上であることをバリデーションで示したうえで採り入れるよう、検討を求めています(9.28)。
ただし、稼働中のクリーンルームで比べた報告では、蛍光で「生物」と判定された粒子は、培地細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →で集めた菌を運ぶ粒子の7〜94倍ありました。著者らは、無菌の資材から出る、菌ではない蛍光の粒子が混じったためと結論しています(Eaton T, et al. 2012)。菌の採り方と限度は、環境モニタリングと培地充填で扱っています。
つまり、粒子の数は空気の状態の変化を速く知らせ、菌は培地で確かめる、という分担です。では、粒子の数そのものは、どんなときにずれるのでしょうか。
5. 数えた粒子の数がずれるのは、どんなときか
粒子が計数器に届く前に失われるときと、計数器の中で数え違えるときです。 主な原因は次の4つです。
- 管の中で失われる:大きな粒子ほど、長い管の中で沈んだり、曲がりで壁に当たったりして失われやすくなります。Annex 1 は、管を通常1 m以内とし、曲がりを減らし、分類には管の短い可搬型の計数器を使うよう求めています(5.9)。
- 採取口で偏る:一方向気流(クリーンルームの空気は、どうやってきれいに保つのか)の中では、周りの気流と同じ速さで吸う採取口(等速吸引ヘッド)を、重要な場所の近くに向きをそろえて置きます(5.9)。
- 重なって数え落とす:濃度が高いと、2つ以上の粒子が同時に光に入り、大きな1個として数えられます(同時通過損失)。そのため、計数器ごとに正しく数えられる最大の濃度があります(Whyte W, et al. 2014)。
- 校正がずれる:パルスの高さと大きさの対応や、吸う流量がずれると、数も濃度も変わります。ISO 21501-4 は、大きさの設定のずれ、計数効率、誤計数、最大の濃度、流量のずれ、校正の間隔などを、校正と検証の項目に挙げています。
6. 自分の測定では、何から確かめるのか
粒子計数の記録を読むときや計数器を選ぶ前は、測る目的から順に、次の5つを確かめます。
- 分類か監視かを確かめる:部屋がグレードを満たすかを確かめる分類か、製造中を見張るモニタリングかで、採取量と頻度が変わります。
- 計数器の校正を確かめる(ISO 21501-4):校正の日付と間隔、0.5µmと5µmのしきい値、流量の確認の記録を見ます。
- 採取の管と採取口を確かめる:管の長さと曲がりの数、一方向気流の中での等速吸引ヘッドの向きと位置を、図面か写真で確かめます。
- 1地点の採取量と地点数を確かめる:限度ちょうどでも20個以上を数えられる量を吸っているか、地点を ISO 14644-1 の表で決めているかを見ます。
- 菌の測定を別に組んでいるかを確かめる:浮遊菌空気を一定量吸引して培地平板に当て、空気中の微生物数を測る指標。詳しく →・落下菌開放平板に自然沈降した微生物を測る環境モニタリングの指標。詳しく →・表面付着菌表面をぬぐう、または押し当てて測る、器具や表面に付いた微生物。詳しく →の採り方と場所が、粒子とは別に決まっているかを見ます。
計数器そのものは、環境モニタリングの機器で比べられます。
数えた粒子の数は、グレードごとの限度と照らして初めて合否が決まります。では、その限度はいくつで、人のいない時と作業中とで、なぜ2つあるのでしょうか。続きはクリーンルームの清浄度(グレードA〜D)とはで説明します。
参考文献
- European Commission, EU GMP Annex 1: Manufacture of Sterile Medicinal Products(2022)(4.27 分類で0.5µmと5µmを測る、5.9 粒子計数器と採取の管の適格性・管は通常1 m以内・曲がりを減らす・分類には管の短い可搬型・一方向気流では等速吸引ヘッド、9.17 グレードAの連続監視と毎分28リットル以上の流量、9.21 監視の採取量、9.28 迅速法、表1 分類の限度(グレードAの5µmは規定なし)、表5 監視の限度と注2(誤計数と、続けて数えられた場合の調査))
- ISO, ISO 14644-1:2015 Classification of air cleanliness by particle concentration(1項:光散乱式の計数器による、決めた大きさ以上の粒子の濃度を分類の基本とすること、0.1〜5µm、粒子が生きているかなどの性質は示さないこと。序文:95%の信頼度で少なくとも90%の範囲が限度を満たす地点数の表A.1、ISOクラス5の5µmの扱い。附属書A:1地点の採取量(20個、最低2リットル・1分))
- ISO 21501-4:2018 Determination of particle size distribution — Single particle light interaction methods — Part 4: Light scattering airborne particle counter for clean spaces(適用範囲:光散乱式の気中粒子計数器の校正と検証の方法、0.1〜10µm、大きさの設定のずれ・計数効率・大きさの分解能・誤計数・最大の濃度・流量のずれ・採取時間のずれ・応答・校正の間隔)
- Rosenberg PD, Dean AR, Williams PI, et al. Particle sizing calibration with refractive index correction for light scattering optical particle counters and impacts upon PCASP and CDP data collected during the Fennec campaign. Atmos Meas Tech. 2012;5:1147-1163. doi:10.5194/amt-5-1147-2012(パルスの高さが散乱の強さを表すこと、散乱は大きさのほか形と屈折率で変わること、校正には PSL の球とガラスビーズがよく使われること)
- Markarian J. Revised ISO Cleanroom Standards Improve Air Cleanliness Classification. Pharmaceutical Technology. 2016.(ISO/TC 209 の作業部会の主査の説明:集める効率と少ない数を数える正確さの不確かさから、ISOクラス5以下の分類に5µm以上の粒子を使わない)
- Whyte W, Hejab M. Particle and microbial airborne dispersion from people. Eur J Parenter Pharm Sci. 2007;12(2):39-46.(論文の紹介ページ。55人を測定。クリーンルーム用の衣服で、菌を運ぶ粒子に対し0.5µm以上は約5,800倍、5µm以上は約210倍。菌を運ぶ粒子の平均の相当径は9µmまたは18µm)
- Eaton T, Davenport C, Whyte W. Airborne microbial monitoring in an operational cleanroom using an instantaneous detection system and high efficiency microbial samplers. Eur J Parenter Pharm Sci. 2012;17(2):61-69.(論文の紹介ページ。蛍光で検出した「生物」の粒子が、培地で集めた菌を運ぶ粒子の7〜94倍)
- Whyte W, Ward S, Whyte WM, Eaton T. The application of the ventilation equations to cleanrooms - Part 2: Decay of contamination. Clean Air and Containment Review. 2014;(20):4-9.(濃度が高いと2つ以上の粒子が同時に光に入り、大きな1個として数えられて数が少なく出ること)
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Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/airborne-particle-counting