Octet R8e は、Sartoriusが手がける生体分子相互作用解析装置です。バイオレイヤー干渉(BLI)という方式で、抗体と抗原のような分子どうしの結合を、蛍光や放射性同位体で標識せずにリアルタイムで測ります。8チャンネルを並列に使い、96ウェルと384ウェルの両方のプレートに対応し、親和性(KD)は1mMから10pMまでの範囲を1台でカバーします。
この装置の勘所は、チャンネル数でも自動化でもなく、これまで測れなかった小さく薄い結合まで解析域を広げたという一点にあります。
光の干渉で結合を追うという仕組み
BLIの原理は、センサーの先端に固定した生体分子の層に光を当てて、反射してくる光の干渉パターンを読むというものです。相手の分子が結合すると、その層の厚みがわずかに変わり、干渉のパターンがずれます。このずれをリアルタイムに追えば、結合がどれだけ速く進み、どれだけ強く保たれるかが分かります。標識も洗浄操作も要らないので、表面プラズモン共鳴(SPR)と並ぶラベルフリー法の代表として使われてきました。
標識という追加のステップを挟まずに結合を追えることが、この方式が創薬からプロセス開発まで広く使われてきた理由です。
解析域を広げるという数字の意味
Octet R8eが従来機と違うのは、測れる分子の下限を押し下げたことです。分子量にして100Da超、濃度にして10pM超という低分子量・低濃度側の解析域が新たに加わりました。加えて、これまで96ウェルのプレートに限られていた対応が384ウェルにも広がり、同じ枚数のプレートで4倍のサンプルを流せます。
数字だけを見ると、感度とスループットという別々の改善に見えます。ただし実務での意味は1つで、これまで検出限界の外にあった弱い結合や低濃度の候補が、選抜のふるいに掛かるようになったという点です。抗体医薬の初期選抜では、結合が弱すぎて見えなかった候補を後の工程まで気づかずに進めてしまうことが、費用のかかる手戻りにつながります。解析域の下限を押し下げることは、選抜のふるいの目を細かくすることと同じ意味を持ちます。
長時間の解離測定とGxP対応という現実解
抗体のように解離が遅い分子では、結合が外れていく様子を長時間観察する必要があります。Octet R8eは、蒸発を抑える機構によって、分析中のサンプル濃度を16時間以上保てるとされ、無人での連続運転も同じく16時間以上を想定しています。
夜間や休日をまたいで機器を止めずに動かせることは、単に便利という以上の意味を持ちます。測定条件が途中で変わらないことは、そのままデータの再現性に直結するからです。加えて、Octet R8eには21 CFR Part 11に対応したソフトウェアとGxP向けのパッケージが用意されていて、創薬研究の段階だけでなく、規制下にあるプロセス開発や品質管理の現場でも同じ装置をそのまま使い続けられます。研究用の装置と規制対応の装置を分けずに済むことが、開発から製造への移行で条件を作り直す手間を減らします。
導入で確認したいこと
- 自社が測りたい分子量・濃度が、従来機で検出限界の外にあったかどうかを整理しているか
- 384ウェル対応によるスループット向上が、自社のハイスループットスクリーニングのボトルネックと噛み合うか
- 21 CFR Part 11やGxPパッケージの要件が、規制当局への申請区分と整合しているか
- 既存のOctetシリーズ(R4/R8など)からのデータ互換性や移行手順を確認しているか
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様の詳細は公式情報をご確認ください。
