スイスのCDMO(医薬品の開発・製造受託)大手 Lonza と、米ボストンの合成生物学企業 Asimov は10月2日、体内に直接投与する in vivo 向けのレンチウイルスベクターの製造で、戦略的に提携すると発表しました。Asimovの安定産生細胞株の技術「LV Edge」と、Lonzaのプロセス開発、スケールアップ、分析、GMP製造を組み合わせます。契約金額、対象となる開発品、サービスの提供時期は公表していません。
プラスミドを毎回入れない製造方式
レンチウイルスベクターは、いまも複数のプラスミドを産生のたびに細胞へ入れる一過性トランスフェクションで作るのが主流です。第3世代の構成なら、外被のVSV-G、Gag/Pol、Rev、目的遺伝子を載せた移入プラスミドの4種類を使います。両社は発表で、この方式がスケールアップと製造の一貫性を制約していると指摘しました。安定産生細胞株は、必要な遺伝子をあらかじめ細胞のゲノムに組み込んでおく方式です。GMPグレードのプラスミドと導入試薬を毎回そろえる手間と費用が減ります。両方式の損得は一過性か安定産生細胞株かで解説しています。
LV Edgeの外部提供は今回が初めてではありません。Pharma Manufacturingによれば、Asimovは1月にAGC Biologicsとライセンス契約を結んでいます。AGC Biologicsはミラノの拠点で、Asimovのパッケージング細胞株を使い、プラスミド1種類で済む製造方式を顧客に提供しています。今回のLonzaとの提携で、パッケージング細胞株と、目的遺伝子まで組み込むプロデューサー細胞株のどちらを軸にするかは公表していません。
ベクターが原料から薬に変わるin vivo型
従来のCAR-Tでは、レンチウイルスベクターは患者のT細胞に遺伝子を入れる原料でした。製品は、遺伝子を入れた細胞です。in vivo型では、ベクターを投与して体内のT細胞にCARを作らせます(体内で作るCAR-T)。AsimovのAlec Nielsen CEOは、in vivo型はベクターを製造用の試薬から薬そのものに変え、力価、品質、製造規模の要求水準を引き上げると述べています。1バッチで多くの患者分を作ってそのまま投与するので、不純物の管理もロット間の再現性も、原料だった頃より厳しく問われます。
Lonzaで特殊モダリティを率いるDaniel Palmacci氏は、in vivoのレンチウイルス治療では、設計と製造の戦略を最初期から一緒に考える必要があると説明しています。両社は、目的遺伝子の最適化から細胞株開発、GMP製造、CMC(製造と品質管理の申請資料)の準備までを、製造できるかを先に確かめる枠組みでつなぐ計画です。安定産生細胞株は構築に数か月かかり、開発の途中で方式を切り替えると、変更前後のベクターの品質を比べ直す必要が出ます。受託先に何を確かめるかはウイルスベクターCDMOの選び方にまとめています。9月にはAsimovがMinarisともAAV向け細胞株で提携しており、CDMOと組んで細胞株を広げる動きが続いています。
in vivo型のレンチウイルスでは、ベクターの作り方がそのまま薬の品質と原価に響きます。今回の提携は、安定産生細胞株を開発の入口から前提にする選択肢を、大手CDMOのGMP製造と組み合わせて示すものです。
※ 本ページは2026年10月2日のLonzaとAsimovの発表と、同日のPharma Manufacturingの報道をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。