Watersは10月13日、LC-MS(液体クロマトグラフ質量分析)用のソフトウェア「waters_connect」に、AIをつなぐ機能「Waters AI Link」を加えると発表しました。装置の制御とデータ処理を担うソフトに、Anthropicの「Model Context Protocol(MCP)」を組み込みます。MCPは、AIモデルやAIエージェントを共通の接続口でソフトやデータにつなぐオープンな規格です。利用者は、Claudeなどの大規模言語モデルやAIエージェントとwaters_connectをつなぎ、自然言語で指示できます。早期アクセスを始めており、一般提供は11月の予定です。価格は公表していません。
分析法の作成から結果の処理まで
同社によれば、AIエージェントが分析法(メソッド)を作り、測定を走らせ、結果を処理するところまで進められます。個別の連携開発は要りません。前処理装置のような周辺機器も、まとめて指示できるとしています。開発段階の研究所では、メソッド開発や特性解析の手作業が減り、数週間かかっていた期間が数日に縮まると同社は説明しています。
あわせて、Anthropicが研究機関と開発している仕様「Model Hardware Standard(MHS)」の研究プログラムにも参加しました。AIエージェントに実験装置を直接操作させるための仕様です。同社によれば、装置をつなぐソフト開発には通常、数週間から数か月かかります。MHSなら、それが数時間から数分で済むとしています。
インフォマティクス担当副社長のDave Leitham氏は「AIは、どの研究所が試せるよりも速く仮説を生み出す。詰まる場所は計算から実験台に移った」と述べています(発言は編集部訳)。AIが出した仮説は、どれも分離して測るサンプルとして実験台に届きます。同社は、その分だけ装置とカラムの需要が増えると見込んでいます。
品質管理で使うEmpowerとの関係
LC-MSは、多属性法(MAM)のように、バイオ医薬品の品質管理にも使われ始めています。品質管理の段階で記録の原本を担うのは、同社のクロマトグラフィーデータシステム(CDS)「Empower」です。同社は、AIが組んだ実験を研究から開発、Empowerへと、監査証跡(操作の履歴)ごと引き継げる点を強みに挙げています。研究から出荷判定までを一続きで支えられる会社はほかにない、というのが同社の主張です。
ただし、今回MCPが入るのはwaters_connectです。Empowerの上でAIエージェントが試験を動かす機能は、発表に含まれていません。GMPの試験室でエージェントに装置を操作させるなら、操作を誰に帰属させるかというデータインテグリティの論点が残ります。コンピュータ化システムのバリデーションをどう組むかも、同じく残る課題です。
AI Linkで変わるのは、研究と開発の段階で、測定の指示と結果の処理を人の手からエージェントに移せる点です。品質管理の試験までAIに任せるには、記録と検証の仕組みを別に整える必要があります。
※ 本ページは2026年10月13日のWatersの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。