医薬品のバルクとは?原薬のことか、包装前の製剤のことか

医薬品のバルク最終的な充填・包装を行う前の、大量にまとめられた状態の原薬または製剤中間体。詳しく →とは、最終の容器や包装に入れる前の段階で、まとまった量のまま保管・輸送される製品のことです。原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →を製剤の工場へ送るときの「原薬バルク」と、包装の前の製剤を指す「製剤バルク」があります。
一方で、「バルク」と言えば相手にも同じ物が伝わると考えると、取り違えが起きます。同じ言葉で工程の違う段階を指すため、規格や保管期間の話をする前に、どちらのバルクかをそろえておく必要があります。
この記事では、バルクと原薬・中間体・最終製品の境目、言葉の使われ方の違い、保管期間と試験が問われる理由を説明します。
- バルクは、原薬のことなのか:原薬を指す場合と包装前の製剤を指す場合があり、文書ごとに確かめます。
- 中間製品とは何が違うのか:日本のGMP省令では、包装前の製剤バルクも中間製品に含まれます。
- バルクで長く置けば、有効期間も延びるのか:延びません。WHOの指針では、有効期間は有効成分を混ぜた時点から数えます。
1. 医薬品の「バルク」は、製造のどの段階の物を指すのか
バルクとは、加工を終えて、最終の容器や包装に入れる工程だけが残っている、まとまった量の製品を指します。
医薬品は、有効成分を作る工程と、それを患者が使える形にする工程に分かれ、そのあいだで物が保管されたり、別の工場へ運ばれたりします。この「次の工程を待つ、まとまった量の物」が、現場でバルクと呼ばれます。
- 原薬バルク:有効成分そのもの(原薬)を、製剤の工場へ送るために、ドラムやバッグなどにまとまった量で入れたものです。
- 製剤バルク:添加剤と混ぜて剤形まで作り終え、最終の包装だけが残っている製剤です。錠剤ならPTP包装(1錠ずつ押し出して取り出すシートの包装)の前の錠剤、注射剤なら充填の前に調製を終えた薬液をこう呼ぶことがあります。

WHO(世界保健機関)は、保持時間の指針(2015年)の用語集で、バルク製品を「最終の包装を除く、すべての加工の段階を終えた医薬品」と定義しています。同じ用語集は、バルク製品になる前にさらに製造の工程を経る物を、中間体(intermediate)と呼んで区別しています。
2. 原薬・中間体・最終製品と、バルクの境目はどこにあるのか
境目は、「まだ反応や精製、製剤化の加工が残っているか」と「最終の包装まで済んでいるか」の2つで引きます。
原薬のGMPの国際的な指針 ICH Q7原薬(API)製造へのGMP適用を国際調和したICHの指針。出発物質の定義や工程管理、バリデーションなどを示す。詳しく → は、用語集で中間体を、原薬になる前に、さらに分子の変化か精製を受ける物としています。製剤(drug product)は、販売を目的に、最終の直接の容器に入れた剤形としています。原薬バルクは、この中間体と製剤のあいだにある原薬を、まとまった量で扱う呼び名です。
| 呼び名 | 何が済んでいるか | 次に残る工程 |
|---|---|---|
| 中間体 | 原薬を作る途中まで | 反応・精製 |
| 原薬(原薬バルク) | 有効成分として完成 | 製剤化 |
| 製剤化の途中の物 | 添加剤との混合など | 造粒・打錠・調製など |
| 製剤バルク | 剤形まで完成 | 最終の包装・充填 |
| 最終製品 | 包装・表示まで完成 | 出荷の判定 |
国によって言葉の置き場所が少し違う点にも注意します。米国の規則(21 CFR 207.1)は、bulk drug substance を原薬(active pharmaceutical ingredient)と同じ意味と定義しています。原薬の合成に使う中間体は、原薬に含めません。米国の規則で「バルク」が原薬を指すのは、この定義によります。
日本のGMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →省令には、「バルク」という定義語はありません。第2条は、製造の中間工程で造られ、以後の工程を経て製品となるものを「中間製品」と定め、出荷の可否の決定に供されるものを「最終製品」としています。つまり、包装を待つ製剤バルクも、日本のGMPの上では中間製品として管理します。
3. 「バルク」と言えば、相手と同じ物を指していると言えるのか
言えません。バイオ医薬品の安定性の指針では原薬を「バルク」と呼び、WHOの保持時間の指針では包装前の製剤を「バルク」と呼んでいます。バイオ医薬品の安定性試験の指針 ICH Q5Cバイオテクノロジー応用医薬品の安定性試験の考え方を示す国際調和ガイドライン。詳しく → は、原薬の節の見出しを「Drug Substance (Bulk Material)」としています。4.1 では、原薬を製造後、製剤化の前に保管するなら、実生産の規模を代表する3ロット以上の安定性データを出すべきとしています。6か月を超える保管期間を求めるなら、申請の時点で6か月以上のデータが要ります。
ここでいう「バルク」は、抗体などの原薬を凍結や冷蔵で保管するときの話で、包装前の錠剤の話ではありません。同じ「バルクの保管期間」でも、ICH Q5C では原薬の保管期間を支える安定性試験出荷時から有効期限まで品質特性が規格内にとどまることを確認する試験。詳しく →を、WHO では製剤を包装するまでの保持時間を指します。
では、「バルク」という言葉は避けたほうがよいのでしょうか。避ける必要はありませんが、品質の取り決めや規格書、委託の契約で使うときは、どの工程を終えた物かを工程名と一緒に書いておくと、取り違えを防げます。
4. 次の工程を待つあいだの保管期間は、なぜデータで決めるのか
バルクは最終の容器に入る前の状態で待つため、保管の容器や環境の影響を受けて品質が動きうるからです。
WHO の指針は、原料・中間体・バルク製品の保管が、その後の工程や安定性、品質に悪い影響を与えないように、最大の保持期間を決めるべきとしています。その期間はデータで裏付けるべきとし、通常は、決めた保持時間を超えて保管すべきでないとしています。データの集め方として、次の点を挙げています。
- 時期:保持時間は通常、販売の前に決め、パイロット規模の開発で調べたうえで、実生産の規模のプロセスバリデーション決めた製造工程が、いつも安定して規格に合う製品を作れることを事前に実証し、その後も確認し続ける取り組みです。承認申請や品質保証の土台になります。詳しく →で確かめるべきとしています。
- 容器:試験の検体は、製造で使うのと同じ容器に入れるべきとし、容器が大きすぎるときは、材質と栓の方式が同じ容器を使えるとしています。
- 最悪の条件:酸化のおそれがあるなど容器の空間が効くときは、空間と中身の比を、日常の製造で起こりうる最大以上にすべきとしています。半分だけ入った容器を考えるためです。
- 測り方:バルクの試験は、品質の変化を検出できるとバリデーションされた方法で行うべきとしています。
同じ指針は、コーティングした錠剤をバルクの容器で保管する例を示しています。外観、硬度、溶出、含量、分解生成物、微生物などを、初日、30日、45日、60日、90日に測る組み立てです。これは例示で、実際の項目と時点は製品のリスクで決めます。
WHO の指針は、製品の有効期間は保持時間にかかわらず、有効成分をほかの成分と混ぜた時点から数えるべきとしています。 バルクで長く置いた分だけ、包装後の有効期間が後ろへずれるのではありません。この指針は非無菌の固形製剤を主な対象とし、原薬と生物製剤は対象外としているため、バイオ医薬品抗体や組換えタンパク質など、生きた細胞や微生物に作らせる医薬品の総称です。細胞治療・遺伝子治療の製品を含めて呼ぶこともあります。化学合成で作る核酸医薬やペプチドは、ふつう含めません。詳しく →の工程での保持はホールドタイム試験の記事で説明しています。
5. 自社の工程では、バルクについて何を決めておくのか
最初に、自社で「バルク」と呼んでいる物が工程のどこにあるかを決め、その物の保管の上限と条件、根拠のデータをそろえます。
バルクで起きる問題の多くは、試験の失敗より、物の段階の取り違えと、保管期間の根拠の不足から起きます。ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → Q7 の 8.21 も、次の工程まで保持する中間体は、使用に適した状態を保つ条件で保管すべきとしています。次の3つを確かめます。
- どの段階の物か:工程の流れ図の上で、どの工程を終え、次にどの工程を待つ物かを書き、規格書・品質の取り決め・契約書の呼び名をそろえます。
- 保管の上限と条件に根拠があるか:上限の期間、温度、容器を決め、根拠となるデータが開発、バリデーション、逸脱承認された手順や規格から外れた事象。GMPでは発見したら記録し、製品品質への影響を評価してロットの可否を判断します。詳しく →の調査のどこで取れているかを確かめます。
- 有効期間医薬品が規定の品質を保てると保証される期間。安定性データの経時変化から設定する。詳しく →の数え方を決めたか:製剤バルクの保管期間を見込んだうえで、包装後の製品の有効期間をどの時点から数えるかを、安定性試験の計画と合わせて決めます。
まず、社内と委託先で「バルク」と呼んでいる物を工程の流れ図に書き込み、同じ物を指しているかを照らし合わせます。 原薬と製剤の役割の分け方は原薬と製剤の違いの記事で説明しています。紹介したのは一つの進め方で、決めるべき項目は製品の種類と工程によって変わります。
参考文献
- WHO, Annex 4: General guidance on hold-time studies(WHO Technical Report Series No. 992, 2015。用語集のbulk productとintermediateの定義、保持時間の決め方、有効期間の起点、コーティング錠の例)
- ICH, Q7 Good Manufacturing Practice Guide for Active Pharmaceutical Ingredients(2000年。用語集の原薬・中間体・製剤の定義、8.21 中間体の保管)
- ICH, Q5C Stability Testing of Biotechnological/Biological Products(1995年。4.1 Drug Substance (Bulk Material)、4.2 中間体)
- 厚生労働省, 医薬品及び医薬部外品の製造管理及び品質管理の基準に関する省令(平成16年厚生労働省令第179号)(e-Gov 法令検索。第2条の製品・中間製品・最終製品の定義)
- U.S. Code of Federal Regulations, 21 CFR 207.1 What definitions and interpretations of terms apply to this part?(bulk drug substance と active pharmaceutical ingredient の定義)
次に読む
この記事から広げる
この分野の新着を、メールで受け取る
こうした製造・分析・品質の解説記事と、装置・試薬の新製品ニュースを毎週水曜の朝にお届けします。登録は無料で、いつでも解除できます。
登録によりプライバシーポリシーに同意したものとみなします。閲覧の記録(どのページから、どの会社のサイトへ移ったか)を、ご案内のために使います。
目次・関連閉じる
Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/pharmaceutical-bulk