錠剤はどうやって作るのか?混合・造粒・打錠・コーティングの流れ

錠剤の作り方は、低分子の飲み薬の製剤化や製造に初めて関わる人や、製造の委託先の工程を理解したい人が、どの工程で錠剤の何が決まるかを知るために押さえる流れです。錠剤は、原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →(薬の有効成分)に添加剤を混ぜ、粉を粒にそろえ(造粒)、臼と杵で押し固め(打錠)、必要に応じてコーティングして包装する順で作ります。
ただし、各工程の品質は、その工程の条件だけでは決まりません。粒の大きさや滑沢剤を混ぜた時間のように、前の工程で作った粉の状態が、後ろの工程で錠剤の重さ・硬さ・溶け方として表れます。
この記事では、錠剤ができるまでの工程、粉を粒にする理由、各工程で決まる品質、工程どうしのつながり、自分の製品で確かめる順番を順に説明します。
- 錠剤は、どんな工程で作るのか:原薬と添加剤を混ぜ(混合)、粒にそろえ(造粒)、臼と杵で押し固め(打錠)、必要ならコーティングして包装します。造粒をせず、混ぜた粉をそのまま打つ直接打錠もあります。
- 各工程で、何が決まるのか:混合と造粒で1錠ごとの含量のそろい方が、打錠で重さ・硬さ・崩れ方と溶け方が、コーティングと包装で溶ける場所と保存中の品質が、主に決まります。
- 問題が出た工程を直せば足りるのか:足りないことがあります。打錠で表れた重さのばらつきや溶出の遅れの原因が、粒の大きさや滑沢剤の混ぜ方といった前の工程にあることもあるためです。
1. 錠剤は、どんな工程を通って作られるのか
錠剤は、原薬と添加剤を混ぜる混合、粉を粒にそろえる造粒、押し固める打錠、表面を膜で覆うコーティング、包装の順に作ります。 日本薬局方国または地域の公的機関が定める医薬品の規格・試験法・品質基準を収載した公定書。詳しく →の製剤総則も、錠剤の通例の作り方として、混ぜた粉を粒にしてから滑沢剤を加えて圧縮する方法と、混ぜた粉を滑沢剤とともにそのまま圧縮する方法を挙げています。
原薬に添加剤を加えて、患者が飲める形にしたものが製剤です(原薬と製剤の違い)。添加剤には、かさを増やす賦形剤、粒子どうしをつなぐ結合剤、飲んだあとに錠剤を崩す崩壊剤、杵や臼との摩擦を下げる滑沢剤などがあり、原薬だけでは錠剤の形と働きにならない部分を補います。
各工程では、次のことをします。
- 混合:原薬と添加剤を混合機で混ぜ、どこを取っても同じ割合になるようにします。
- 造粒:混ぜた粉を、結合剤の液で練って乾かすか、強く押し固めて砕くことで、粒にそろえます。造粒をしない直接打錠もあり、どちらの場合も、打錠の前に滑沢剤を加えて混ぜます。
- 打錠:粉を臼(金型の穴)に詰め、上下から杵で押し固めて錠剤にします(打錠とは)。
- コーティング:錠剤の表面を、高分子などの薄い膜で覆います。素錠(コーティングしていない錠剤)のまま出す製品もあります。
- 包装:PTPシート(錠剤を1錠ずつ押し出して取り出すシート)や瓶に詰め、湿気や光から守ります。

このように、錠剤は、粉の状態を工程ごとに少しずつ変えながら作ります。では、混ぜた粉をそのまま押し固めずに、わざわざ粒にすることが多いのはなぜでしょうか。
2. なぜ混ぜた粉を、そのまま打たずに粒にすることが多いのか
混ぜた粉のままでは、流れが悪かったり成分が分かれたりして、1錠ごとの重さと含量がそろわないことがあるためです。 打錠機は1錠ずつ量るのではなく、臼に流れ込んだ粉の体積で1錠の重さを決めています。そのため、粉の流れやすさとかさ密度(粒子の隙間を含めた体積あたりの重さ)がそろわないと、重さがばらつきます。
もう1つの問題が偏析(混ぜた成分が分かれること)です。大きさや密度の違う粒子は、打錠機のホッパー(粉をためて送る漏斗)へ運ぶあいだの振動や流れで分かれていきます。混ぜた直後は均一でも、臼に届くまでに含量が偏ることがあります。
造粒は、原薬と添加剤を1つの粒の中にまとめることで、粉を流れやすくし、成分を分かれにくくします。やり方は3つに分かれます。
- 湿式造粒:結合剤の液で練って粒にし、乾燥してから大きさをそろえます。幅広い処方に使えますが、水と熱で分解したり、結晶の形が変わったりする原薬では注意が要ります。
- 乾式造粒:粉をロールで板状に強く押し固め、砕いて粒にします。水も熱も使わないため、水や熱に弱い原薬で選ばれます。
- 直接打錠(直打):造粒をせず、混ぜた粉をそのまま打ちます。工程は短くなる一方で、粉の流れやすさと固まりやすさが、錠剤の出来をそのまま左右します。
どれを選ぶかは、錠剤の中で原薬が占める割合、原薬の粉の性質、水と熱への強さで決めます(湿式造粒と乾式造粒の違い)。
つまり、造粒は粒を作ること自体が目的ではなく、打錠で重さと含量をそろえるための準備の工程です。では、それぞれの工程では、錠剤のどの品質が決まるのでしょうか。
3. それぞれの工程で、錠剤のどの品質が決まるのか
含量のそろい方は主に混合と造粒で、重さ・硬さ・崩れ方と溶け方は主に打錠で、溶ける場所と保存中の品質はコーティングと包装で決まります。 工程ごとの対応は次のとおりです。
| 工程 | 主に決まる品質 | 工程の途中で見ること |
|---|---|---|
| 混合 | 含量の均一性 | 混ぜた粉の均一さ |
| 造粒 | 粒の流れやすさ | 粒の大きさの分布、かさ密度、水分 |
| 打錠 | 重さ、硬さ、崩壊と溶出 | 重さ、硬さ、厚さ、摩損度、崩壊時間 |
| コーティング | 溶ける場所、湿気と光からの保護 | 膜の量(重さの増え方)、外観 |
| 包装 | 保存中の品質 | 密封の状態、表示 |
含量の均一性(1錠ごとの原薬の量のそろい方)は、日本薬局方・米国薬局方・欧州薬局方欧州医薬品品質局(EDQM)が発行する、医薬品の品質基準を定めた公定書で、署名国・加盟国の規制に法的効力を持つ。詳しく →で調和された製剤均一性試験で確かめます。素錠とフィルムコーティング錠では、原薬が1錠に25 mg以上入り、錠剤の重さの25%以上を占めるときに、1錠ずつの重さから含量を計算する質量偏差試験を使えます。
それより少ない錠剤では、原則として、1錠ずつ原薬を測る含量均一性試験を行います(日本薬局方 6.02、ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → Q4B Annex 6)。原薬の割合が小さい錠剤ほど、重さがそろっていても含量がそろっているとは言えず、混合の出来が1錠の含量に直接表れます。
崩壊と溶出(飲んだあとに錠剤が崩れ、原薬が溶け出す速さ)は、打錠で押す力と、添加剤の選び方で大きく変わります。日本薬局方は、錠剤が別に規定するもののほか、溶出試験か崩壊試験に適合することを求めています(溶出試験・崩壊試験とは)。
コーティングには、苦味を隠して飲みやすくし、原薬を湿気や光から守る目的のほかに、溶ける場所を決める目的があります。胃の酸性では溶けない膜で覆う腸溶性の製剤は、胃での分解や胃への刺激を避けるため、主に小腸で原薬を放出するように設計されます。
包装では、湿気で分解しやすい製剤に防湿の容器や包装を使います(日本薬局方 製剤総則)。安定性試験は販売に使う包装に入れた状態で行うため(ICH Q1A(R2)新原薬・新製剤の安定性試験全体の枠組みを示す親ガイドライン。ストレス試験も求める。詳しく → 2.2.4)、包装の材料を替えるときは、有効期間医薬品が規定の品質を保てると保証される期間。安定性データの経時変化から設定する。詳しく →の根拠も確かめ直します。
このように、錠剤の品質には、それぞれ主に決まる工程があります。ただし、工程どうしは切り離されていません。
4. 打錠で出た問題は、打錠の条件で直せるのか
直せないことがあります。打錠で表れる重さ・硬さ・溶け方は、前の工程で作った粒と、滑沢剤の混ぜ方の影響を受けるためです。 主なつながりは次の3つです。
- 粒の大きさと重さ:粒の大きさがそろっていないと、臼への流れ込み方が回ごとに変わり、錠剤の重さがばらつきます。臼に詰める深さを調整しても、流れ方のむら自体は消えません。
- 粒の水分と硬さ:湿式造粒では、乾燥をいつ止めるかで粒に残る水分が変わります。この水分が、打錠での固まりやすさや、保存中の錠剤の硬さに関わります。
- 滑沢剤を混ぜる時間と溶け方:滑沢剤のステアリン酸マグネシウムは水をはじく性質を持ち、混ぜる時間が長いほど、粒子の表面を広く覆います。
滑沢剤を混ぜる時間を変えると、錠剤の硬さ・崩壊・溶出が大きく変わったと報告されています(Shah AC, et al. 1977)。同じ報告は、この現象が、固形製剤のスケールアップで性質が変わる理由の1つになりうるとしています。
打錠で重さや溶出の外れが出たときは、打錠機の設定を変える前に、その錠剤に使った粒の大きさ・かさ密度・水分と、滑沢剤を混ぜた時間の記録を見ます。
つまり、錠剤の品質は前の工程の結果を引き継いで決まるため、問題の原因は、それが表れた工程より前にあることがあります。
5. 自分の製品では、何から確かめるのか
自分の製品や委託先の工程を見るときは、原薬の性質から始めて、工程の順に次の5つを確かめます。
- 原薬の量と性質から、作り方を確かめる(造粒か直接打錠か):1錠に入る原薬の量と割合、粉の流れやすさ、水と熱への強さから、湿式造粒・乾式造粒・直接打錠のどれを選んだかを確かめます。
- 含量のそろい方の確かめ方を見る(製剤均一性試験):原薬が1錠に25 mg未満か、錠剤の重さの25%未満なら、1錠ずつ原薬を測る含量均一性試験が原則です。混ぜた粉の均一さを、工程の途中でも確かめているかを見ます。
- 粒の性質の記録を見る(造粒したあとの粒):粒の大きさの分布、かさ密度、水分を測り、管理の幅を決めているかを確かめます。
- 打錠の条件と錠剤の試験を見る(重さ・硬さ・崩壊・溶出):押す力と打つ速さを決めた根拠があるか、硬さと溶け方の両方に規格までの余裕があるかを確かめます(打錠とは)。
- コーティングと包装の目的を見る(溶ける場所と保存):コーティングが飲みやすさや保護のためか、腸溶性のように溶ける場所を決めるためかを確かめ、湿気に弱い錠剤なら防湿の包装かを見ます。
前の段が変われば、後ろの段も確かめ直します。例えば原薬の粒の大きさが変われば、混合と造粒の条件から、錠剤の溶け方まで見直す必要が出ることがあります。
装置は打錠・充填設備、流動層造粒・コーティング装置、乾燥・粉砕設備で比べられます。原薬そのものの作り方は低分子原薬の製造工程、溶けにくい原薬の工夫は難溶性薬物の製剤化で説明しています。
まずは、作り方を最初に分ける造粒から見ていきます。水と熱を使う湿式造粒、使わない乾式造粒、粒にしない直接打錠は、何を見て選ぶのでしょうか。続きは湿式造粒と乾式造粒の違いで説明します。
参考文献
- 厚生労働省, 第十八改正日本薬局方(英文版)General Notices, General Rules for Crude Drugs, General Rules for Preparations, General Tests(製剤総則 製剤各条 1. 経口投与する製剤:(2)(i) 腸溶性製剤は胃で分解しやすい原薬の保護や胃への刺激の軽減のため主に小腸で放出するよう設計し、一般に酸に溶けない腸溶性の膜で覆う。1-1 錠剤:(2)(i) 原薬と賦形剤・結合剤・崩壊剤などを均質に混ぜ、水か結合剤の液で粒にし、滑沢剤を混ぜて圧縮する、(ii) 混ぜた粉を滑沢剤とともに直接圧縮する、(v) フィルムコーティング錠、(3) 製剤均一性試験法〈6.02〉、(4) 溶出試験法〈6.10〉または崩壊試験法〈6.09〉、(5) 湿気で分解しやすい製剤には防湿の容器・包装。一般試験法 6.02 製剤均一性試験法:素錠・フィルムコーティング錠で原薬25 mg以上かつ25%以上なら質量偏差試験を適用できる。フィルムコーティング錠の割合は、日本薬局方ではコーティング前の錠剤で見る)
- ICH Q4B Annex 6, Uniformity of Dosage Units General Chapter(FDA 版。2.1 日本薬局方 6.02・欧州薬局方 2.9.40・USP米国で医薬品・原料・試験法の公式基準を定める公定書で、製薬用水に関する規格も収載されている。詳しく →〈905〉の相互利用、2.1.1 25 mg/25% の境目を満たさないときの質量偏差試験は相互利用の対象外、4.2 FDA は境目を下回る品目に含量均一性試験を求める)
- ICH Q6A, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for New Drug Substances and New Drug Products: Chemical Substances(3.3.2.1 錠剤とカプセル:a 溶出、b 崩壊、c 硬度・摩損度は通常は工程内管理工程の途中で中間体の力価や純度などを確認する管理。最終規格の前に品質を作り込む要素。詳しく →、d 製剤均一性、e 水分)
- ICH Q1A医薬品の安定性試験の実施条件(長期・加速・過酷)および保管条件の設定方法を規定した国際ガイドライン群。詳しく →(R2), Stability Testing of New Drug Substances and Products(2.2.4 製剤の安定性試験出荷時から有効期限まで品質特性が規格内にとどまることを確認する試験。詳しく →は、販売に用いる容器施栓系製剤を収める容器と、栓やキャップなど封をする部材の組み合わせです。製品を守る性能として、漏れがないこと(完全性)や、成分の溶け出し・吸着が少ないことを評価します。詳しく →に包装した状態で行う)
- Shah AC, Mlodozeniec AR. Mechanism of surface lubrication: influence of duration of lubricant-excipient mixing on processing characteristics of powders and properties of compressed tablets. J Pharm Sci. 1977;66(10):1377-1378. doi:10.1002/jps.2600661006(滑沢剤の混合時間添加した成分が槽内で均一になるまでの時間。大スケールほど延び、濃度勾配を生む。詳しく →で、かさ容積・排出力・硬度・崩壊と溶出が大きく変わったこと。固形製剤のスケールアップでの変化を説明する手がかりになるとした)
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