溶出試験・崩壊試験とは?飲み薬が体の中で溶けるかを、何で確かめるのか

製剤の開発や品質管理原料・資材・中間体・製品を規格に照らして試験し、使ってよいか、出荷してよいかの合否を決める仕事です。GMPでは製造部門から独立させます。詳しく →の担当者は、飲み薬の処方や製法を決めるとき、ロットを出荷するとき、後発品の同等性を示すときに、錠剤やカプセルから薬が溶け出すかを確かめます。そのための試験が溶出試験・崩壊試験で、飲み薬は消化管の中で溶けた分しか吸収されないため、溶け方を試験液の中で測ります。
ただし、錠剤が崩れても、中の薬が溶けたことにはなりません。また、試験液の中で溶けたからといって、体の中でも同じように溶けるとは限りません。
この記事では、2つの試験を何のために行うのか、何が違うのか、どんな装置と条件で測るのか、規格ではどちらを使うのか、体の中とどこまでつながるのか、自分の製品で何から確かめるのかを順に説明します。
- 溶出試験・崩壊試験とは:崩壊試験は錠剤やカプセルが決めた時間内に崩れるかを、溶出試験は薬がどれだけの速さで試験液に溶け出すかを確かめる試験です。
- 規格ではどちらを使うのか:ICH Q6A は、飲み薬の規格には通常、溶出試験を入れるとしています。溶けやすい薬で、速く溶ける製品に限り、崩壊試験で代えられます。
- 体の中でも同じように溶けるのか:そうとは限りません。溶出試験は主にロットの間の違いを見つける試験で、体の中での吸収とのつながりは、人での試験の結果と照らして確かめます。
1. 溶出試験と崩壊試験は、何を決めるために行うのか
飲み薬は溶けた分しか吸収されないため、錠剤から薬が溶け出すかを確かめて、処方を選び、ロットの合否を判定します。
錠剤を飲むと、体の中では次の3つの段が順に起きます。米国食品医薬品局(FDA)の溶出試験のガイダンス(1997年)も、吸収は製剤からの放出、消化管の中での溶解、腸の壁の透過で決まるとしています。
- 崩壊:錠剤やカプセルが、消化管の液を吸って細かな粒に崩れます。
- 溶出:粒の中の薬が、消化管の液に溶け出します。
- 膜透過:溶けた薬が、腸の壁を通って血液に入ります。
崩壊試験は1つ目の段を、溶出試験は1つ目と2つ目の段を合わせて見ます。3つ目の膜透過は、Caco-2透過性試験などの別の試験で見積もります。

この2つの試験は、次の場面で使います。
- 処方と製法を決めるとき:崩壊剤の量や打錠の圧力を変えた錠剤の溶け方を比べます(打錠とは)。
- ロットを出荷するとき:決めた時間に決めた量が溶けたかを、規格の試験で確かめます。
- 製法や処方を変えるとき:変更の前後で、溶け方が変わっていないかを比べます。
- 後発品の同等性を示すとき:先発品と、時間を追った溶け方の推移を比べます。
このように、2つの試験は、吸収の手前の段を試験液の中で確かめるものです。では、崩れることと溶けることは、どう違うのでしょうか。
2. 崩壊試験と溶出試験は、何が違うのか
崩壊試験は崩れたかを目で見て判定し、溶出試験は溶けた薬の量を測って判定します。
日本薬局方国または地域の公的機関が定める医薬品の規格・試験法・品質基準を収載した公定書。詳しく →の崩壊試験法も、製剤中の有効成分が完全に溶けるかを確かめることを目的としていないと明記しています(一般試験法 6.09)。錠剤が粒に崩れたあとも、粒の中の薬が液に溶け出すまでには時間がかかります。
FDA のガイダンスは、溶けにくく腸の壁を通りやすい薬では、溶ける速さが吸収の速さを決める段になりうるとしています。こうした薬で崩れる速さだけを見ると、溶け方の違いを見落とすおそれがあります。
つまり、崩壊は溶出の前提ですが、溶出の代わりになるのは限られた場合だけです。では、溶け方はどんな装置と条件で測るのでしょうか。
3. 溶け方は、どんな装置と条件で測るのか
錠剤を入れた37℃の試験液をかき混ぜ、決めた時間に液を取って、溶けた薬の量を測ります。
溶出試験の装置と条件
日本薬局方・USP・欧州薬局方欧州医薬品品質局(EDQM)が発行する、医薬品の品質基準を定めた公定書で、署名国・加盟国の規制に法的効力を持つ。詳しく →の溶出試験法は調和されていて、主に次の2つの装置を使います(日本薬局方 一般試験法 6.10)。
- パドル法:容量1 Lの容器の底に沈めた錠剤のまわりで、パドル(かき混ぜる羽根)を回します。
- 回転バスケット法:錠剤を網のかご(バスケット)に入れ、かごごと試験液の中で回します。
試験液の量は500、900、1000 mL が一般的で、温度は37±0.5℃に保ちます。試験液は、胃に近い pH 1.2 から腸に近い pH 6.8 までの緩衝液溶液のpHを一定範囲に保つために使用される弱酸と共役塩基の混合溶液。詳しく →などで、日本薬局方は溶出試験第1液(pH 約1.2)と第2液(pH 6.8 付近)を定めています。
回転数は、FDA のガイダンスでは回転バスケット法で毎分50〜100回転、パドル法で毎分50〜75回転が一般的で、穏やかにかき混ぜるほど製剤の違いを見分けやすいとしています。溶けにくい薬では、根拠を示したうえで試験液に界面活性剤を加えることがあります。

判定は段階的に進めます。決めた溶出率をQ(表示量に対する百分率)とすると、最初の6個がどれもQに5%を足した値以上なら適合です。届かなければ6個、さらに12個を足し、平均がQ以上で、Qを15%以上下回る錠剤の数が限度内かを見ます(判定法1)。
崩壊試験の装置と条件
崩壊試験では、両端の開いたガラス管6本を並べた試験器に1個ずつ入れ、37±2℃の水の中で一定の速さで上下させます。日本薬局方は、別に規定が無ければ、素錠(コーティングしていない錠剤)を30分、コーティング錠を60分、カプセルを20分で引き上げて観察するとしています。
何も残らないか、残っても原形をとどめない軟らかい物質か皮膜の破片だけなら、崩壊したとみなします。6個すべてが崩壊すれば適合で、1〜2個が崩壊しなければ12個を足し、18個中16個以上で適合です。
このように、溶出試験は、試験液、回転数、時間の選び方で結果が変わります。では、規格にはどちらの試験を入れるのでしょうか。
4. 規格には、溶出試験と崩壊試験のどちらを入れるのか
ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → Q6A は、飲み薬の固形製剤の規格には通常、溶出試験を入れるとしています(3.3.2.1)。
崩壊試験で代えてよいのは、次の2つを満たす製品です。
- 溶けやすい薬であること:pH 1.2〜6.8 のどこでも、最も多い1回量が250 mL 以下の液に溶けること。
- 速く溶ける製品であること:pH 1.2、4.0、6.8 のそれぞれの試験液で、15分以内に80%を超えて溶けること。
そのうえで Q6A は、崩壊と溶出の関係が確かめられているときや、崩壊のほうが違いを見分けやすいときに、崩壊試験が最も適しているとしています。どちらを選ぶかは、開発のデータで裏づけます。
なぜ「15分」なのか。FDA のガイダンスは、溶けやすい薬で、穏やかな条件の0.1 mol/L 塩酸で15分以内に85%が溶ける製品は液剤に近いふるまいをし、吸収の速さは胃から出ていく速さで決まるとしています。同じガイダンスが挙げる、空腹時に胃の内容物の半分が出ていく時間の平均は15〜20分です。
規格の値は、臨床試験や生物学的同等性二つの製剤が同程度に全身へ届くことを示すこと。後発品の評価などで用いる。詳しく →試験(2つの製剤を人に飲んでもらい、血中濃度の推移が同等かを比べる試験)に使ったロットの溶け方をもとに決めます。EMA は、欧州薬局方の製剤の各条にある溶出試験は最低限の要求で、Q の値を広げるには人での裏づけが要るとしています(薬局方とは)。
ICH Q6A は、即放性製剤(飲んですぐ溶け出すよう作った製剤)は通常1時点、徐放性製剤(ゆっくり放出するよう作った製剤)は複数の時点で測るとし、胃酸の少ない高齢者のように、薬を飲む人の特徴を試験の設計で考えることが重要だとしています。
5. 試験液の中で溶ければ、体の中でも同じように溶けるのか
そうとは限りません。溶出試験の条件は、胃や腸の中の液の量、成分、流れを再現したものではないためです。
試験液の成分で、結果はどれだけ変わるのか
溶けにくい薬では、試験液の成分で結果が大きく変わります。ダナゾールのカプセルでは、界面活性剤を含まない試験液から、空腹時の小腸の液を模した液(FaSSIF、胆汁の成分を含む液)に替えると、90分までに溶けた割合が30倍になったと報告されています(Galia 1998)。
一方で FDA のガイダンスは、試験管の中の溶出試験のほうが、人での試験より違いに敏感なことが多いとしています。品質を守る点では、体の中の働きが変わる前に変化を示す、見分ける力の高い方法が好ましいという考え方です。
人の試験を、溶出試験で代えられるのはいつか
人での試験を溶出試験で代えられる条件は、薬の性質と変更の大きさで決まっています。
- 後発品:日本の後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドラインは、先発品の3ロットのうち中間の溶け方のロットを比べる相手にし、pH の違う試験液とパドル法の毎分50回転などで溶け方を比べます。pH 6.8 付近で特に大きな差があれば、胃酸の少ない人で試験します。
- 処方の変更:経口固形製剤の処方変更のガイドラインは、変更の大きさを A〜E の水準に分けます。小さな変更では溶け方が同等なら生物学的に同等とみなし、E 水準では人での試験を求め、溶けにくい薬は C 水準から人での試験が要ります。
- BCS に基づくバイオウェーバー条件を満たせば生物学的同等性試験を溶出試験で代替できる制度。BCSに基づき検討される。詳しく →:ICH M9BCSに基づくバイオウェーバーの考え方を示すICHガイドライン。詳しく → は、溶けやすい薬(BCS原薬を溶解性と透過性の高低で四つに分ける分類。経口吸収の律速要因を整理するのに使う。詳しく → のクラスIとIII)に限り、添加剤などの条件を満たせば、pH 1.2・4.5・6.8 の溶出の比較で人の試験を代えられるとしています。
6. 自分の製品では、何から確かめるのか
原薬原薬。精製を終えた有効成分そのもので、製剤化する前の段階を指す。詳しく →の溶けやすさを確かめ、違いを見分けられる条件を選び、人で確かめたロットを基準に規格を決めます。
- 原薬の溶けやすさと腸の壁の通りやすさを確かめる(BCS分類):溶けやすい薬か、溶けにくい薬かで、試験液の選び方と、崩壊試験で代えられるかが変わります。
- 処方や製法の違いを見分けられる条件を選ぶ:pH 1.2〜6.8 の試験液と穏やかな回転数で、崩壊剤の量や造粒の方法を変えた錠剤の溶け方が分かれるかを確かめます。
- 人での試験に使ったロットを基準に、規格の値を決める:臨床試験や生物学的同等性試験に使ったロットの溶け方から、測る時点と Q の値を決めます。
- 崩壊試験で代えられるかを確かめる:ICH Q6A の条件(溶けやすい薬で、15分以内に80%を超えて溶ける)に当てはまるかを、開発のデータで示します。
- 製法や処方を変える前に、変更の大きさを確かめる:溶け方の比較で足りるのか、人での試験が要るのかを、ガイドラインの水準で確かめます。
最初に確かめる原薬の溶けやすさは、生物薬剤学分類システム(BCS)で整理します。では、溶けやすさと腸の壁の通りやすさの組み合わせで、製剤の打ち手はどう変わるのでしょうか。続きはBCS分類(生物薬剤学分類)とはで説明します。
参考文献
- ICH Q6A, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for New Drug Substances and New Drug Products: Chemical Substances(3.3.2.1 a 溶出:固形製剤の規格には通常、放出を測る試験を入れる、即放性は1時点、徐放性は複数時点、腸溶性は2段階、胃酸の少ない高齢者など服用する人を考える、生物学的利用率に大きく影響するなら許容できないロットを不合格にする基準。b 崩壊:pH 1.2・4.0・6.8 で15分以内に80%超が溶け、1回量/溶解度の体積が pH 1.2〜6.8 で250 mL 以下なら崩壊で代えてよい。Decision Tree #7、用語集の Rapidly Dissolving Products)
- 第十九改正日本薬局方(令和8年4月10日 厚生労働省告示第193号). PMDA 第十九改正日本薬局方(一般試験法 6.09 崩壊試験法:有効成分が完全に溶けるかの確認は目的としない、37±2℃、1分間29〜32往復、素錠30分・コーティング錠60分・カプセル20分、18個中16個。6.10 溶出試験法:回転バスケット法・パドル法・フロースルーセル法、37±0.5℃、判定法1の S1〜S3、判定法2。9.41 試薬・試液:溶出試験第1液 pH 約1.2、溶出試験第2液)
- U.S. FDA. Guidance for Industry: Dissolution Testing of Immediate Release Solid Oral Dosage Forms(1997年8月。吸収は放出・溶解・透過で決まる、ロットの品質・製剤開発・変更後の品質の確認に使う、規格は臨床・生物学的同等性試験のロットに基づく、溶けやすく15分で85%溶ける製品は液剤に近く胃排出が律速で空腹時の胃排出の T50% は15〜20分、溶けにくく透過しやすい薬では溶解が律速になりうる、試験液500・900・1000 mL と pH 1.2〜6.8、37±0.5℃、バスケット50〜100 rpm・パドル50〜75 rpm、溶出試験は人の試験より違いに敏感なことが多い)
- ICH Q4B Annex 7(R2), Dissolution Test General Chapter(日本薬局方 6.10・欧州薬局方 2.9.3・USP米国で医薬品・原料・試験法の公式基準を定める公定書で、製薬用水に関する規格も収載されている。詳しく →〈711〉の相互利用と、その条件)/ICH Q4B Annex 5(R1), Disintegration Test General Chapter(日本薬局方 6.09・欧州薬局方 2.9.1・USP〈701〉。判定基準は承認申請書で定める)
- EMA/CHMP. Q&A on implementation of Ph. Eur. Medicinal Product Monographs (MPM)(Rev.1、2026年4月13日。Q3・Q10:各条の溶出試験は最低限の要求、規格はバイオバッチの結果から決める、Q 値を広げるには人での裏づけが要る)
- ICH M9, Biopharmaceutics Classification System-Based Biowaivers(Step 4、2019年11月。3.2 溶出の比較:パドル50 rpm またはバスケット100 rpm、900 mL 以下、pH 1.2・4.5・6.8、各12個以上、f2 が50以上で類似)
- 厚生労働省 医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長通知 薬生薬審発0319第1号(令和2年3月19日)後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン等の一部改正について. 別紙1 後発医薬品の生物学的同等性試験ガイドライン(標準製剤は先発品3ロットの中間の溶出性のロット、溶出試験は各12ベッセル以上でパドル法50回転の4つの試験液と100回転、pH 6.8 付近で特異的に著しい差があれば低胃酸の被験者で試験)、別紙3 経口固形製剤の処方変更の生物学的同等性試験ガイドライン(処方変更水準 A〜E と要求される試験)
- Galia E, Nicolaides E, Hörter D, Löbenberg R, Reppas C, Dressman JB. Evaluation of various dissolution media for predicting in vivo performance of class I and II drugs. Pharm Res. 1998;15(5):698-705. doi:10.1023/a:1011910801212(ダナゾールのカプセルで、界面活性剤を含まない水系の試験液から FaSSIF に替えると90分までの溶出率が30倍、FeSSIF で100倍)
- Dressman JB, Amidon GL, Reppas C, Shah VP. Dissolution testing as a prognostic tool for oral drug absorption: immediate release dosage forms. Pharm Res. 1998;15(1):11-22. doi:10.1023/a:1011984216775(溶出試験が体の中の働きを予測できる条件と、消化管の液の成分・量・流れ・混ざり方の生理学的なデータ)
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