バイオ医薬の製造装置と資材を手がける米 ABEC が、米ノースカロライナ州ウィルソンに新しい製造拠点を開きました。9月10日に発表し、9月24日に現地でテープカットの式典を開いて正式に稼働を始めました。この拠点がつくるのは、抗体医薬やワクチンの製造に使うバイオプロセス装置と、シングルユース資材(一度使って廃棄する消耗品)です。ベスレヘム(米ペンシルベニア州)、スプリングフィールド(米ミズーリ州)、アイルランドのファーモイとケルズに続く、製造拠点としては同社5か所目にあたります。
5か所目の製造拠点で、シングルユース資材を増産
ウィルソンの拠点は、ABECが2022年にノースカロライナ州と共同で発表した計画が、およそ4年を経て形になったものです。当時の発表では、投資額1,100万ドル、新規雇用251人、延べ床面積5万平方フィート(約4,600平方メートル)、13エーカーの敷地にISO 7等級のクリーンルームを備えるとされ、シングルユースの容器をつくる工場としては同社で3か所目と位置づけられていました。構想を公にしてから稼働にこぎ着けるまで、相応の時間がかかっています。この拠点が担うのは、ABECのシングルユース事業「CSR(カスタム・シングルラン)」の製品群です。CSRには、シングルユースのバイオリアクターや発酵槽、溶液の調製・保管用システム、ろ過系までがそろいます。ステンレスの設備を据え付けて洗って使い回す代わりに、使い切りのバッグや流路を交換しながら製造する方式で、消耗品は仕込みのたびに消費されるので、装置そのものと違って繰り返し売れます。大型の製造装置で知られるABECが、ウィルソンでは消耗品づくりに軸足を置いた点に、この拠点の性格が表れています。
装置メーカーが顧客の近くで資材を作る狙い
今回の投資で、ABECは顧客である製薬・バイオ企業の近くに、消耗品の供給点を増やします。ウィルソンのあるノースカロライナ州の東部は、研究開発から製造までが集まる、米国でも成長の速いライフサイエンスの集積地です。同社の最高経営責任者(CEO)スコット・ピッカリング氏は、「ウィルソン拠点の開設は、世界のバイオ医薬業界を支えるという当社の約束の、もう一つの重要な節目です。この投資によって製造能力が広がり、米国南東部の顧客にいっそう近づき、装置・消耗品・エンジニアリングをそろえた業界で最も幅広い品ぞろえを届ける力が強まります」とコメントしました(発言は編集部訳)。シングルユースはステンレス設備との使い分けで導入の是非が決まり、いったん採用すれば抽出物・浸出物(E&L)の管理のように、消耗品側の品質が製品の品質に直結します。だからこそ、必要な資材が途切れずに届くこと、そして供給元を切り替えるたびに検証をやり直さずに済むことが、買う側には重く効いてきます。装置そのものより、使うたびに消える消耗品を切らさないほうが、量産の現場ではやっかいな課題です。
シングルユース資材の需要は、新型コロナのワクチン増産で一度急に伸び、その後は落ち着きました。ABECが時間をかけて建てたこの拠点が賭けているのは、抗体医薬や細胞・遺伝子治療の量産がこれから厚みを増し、使い切りの消耗品がさらに要るという読みです。需要が思ったほど伸びなければ、消耗品の工場は過剰な設備として重くのしかかります。大型装置の作り手がシングルユースの供給網をどこまで太らせられるか、その巧拙がこれから試されます。
※ 本ページは公開情報をもとにしたProglenth編集部による整理です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。