低分子医薬(化学合成原薬)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける20 / 20 工程
合成・反応
1受入試験・原料同定
出発物質の純度が全合成の質を決め、初段の不純物は後工程まで引きずる。
- 基準の方法
- FT-IR(赤外分光)による同定+HPLCによる純度確認
- ほかの方法
- 近赤外/ラマン分光による迅速同定・ガスクロマトグラフィー(揮発性原料・溶媒)・融点・旋光度などの物理恒数確認
2インプロセスコントロール
反応の止め時を誤れば未反応原料残存か副生成物増加。終点判定が収率を左右。
- 基準の方法
- HPLC(抜取りインプロセス分析)による反応率・不純物プロファイル監視
- ほかの方法
- in situ ATR-FTIR(リアルタイム反応追跡)・TLC(簡易反応追跡)・in-line/ベンチトップNMR、NIR
3中間体の単離・IPC
多段合成では中間体を都度単離・規格適合させ不純物を持ち越さないため
- 基準の方法
- 中間体の晶析・濾過による単離とインプロセスコントロール(HPLC/GCによる純度・含量・不純物確認)
- ほかの方法
- テレスコープ(中間体を単離せず次反応へ連投)・カラムクロマトグラフィーによる中間体精製
後処理・晶析
4抽出・分液・水洗
塩・触媒・水溶性不純物を相分離で粗く除き、後段の晶析負荷を軽くする一次精製。
- 基準の方法
- 液液抽出・分液・洗浄(水洗・酸/塩基洗浄)
- ほかの方法
- 活性炭処理+濾過(脱色・微量不純物除去)・クエンチ+濾過(固体副生物除去)・連続向流抽出(液液抽出の連続化)
5脱色・清澄ろ過/カーボン処理
晶析前に着色不純物・微量金属・異物を活性炭と清澄濾過で除き高純度結晶を得るため
- 基準の方法
- 活性炭処理
- 装置
- デプスフィルター
- ほかの方法
- 金属スカベンジャー樹脂による残留触媒(Pd等)除去・カートリッジ式活性炭インライン通液
6晶析・多形コントロール
精製と固体形決定を同時に担い、多形・塩で溶解性・安定性・製造性が決まる最重要工程。
- 基準の方法
- 制御晶析(冷却/貧溶媒/反応晶析)+シード添加・PAT監視
- 代表的なメーカー
- MerckHoneywellSigma-Aldrich
- ほかの方法
- 単純冷却再結晶・塩・共結晶スクリーニング・連続晶析(MSMPR/連続フロー)
7ろ過・乾燥/ろ過乾燥機・ANFD
残留溶媒・水分の規格達成と多形転移・分解の回避を、乾燥の温度と時間で作り込む。
- 基準の方法
- 減圧濾過/遠心濾過+真空乾燥(コニカル/トレイ)
- ほかの方法
- 流動層乾燥・凍結乾燥(熱に弱い/非晶質原薬)・回転式真空乾燥(ダブルコーン)
製剤・充填
8微粉化/ジェットミル・ミリング
粒度が溶解性と製剤性に直結。低溶解性薬は微粉化で表面積を稼ぎ狙った分布に揃える。
- 基準の方法
- ジェットミル(気流式微粉砕)による微粉化
- 試薬・資材
- 粉砕媒体不要。粉砕ガス: 圧縮窒素または乾燥圧縮空気(医薬グレード、無油)。
- 代表的なメーカー
- Hosokawa MicronSturtevantFluid Energy
- ほかの方法
- ピンミル/ハンマーミル(粗~中粉砕)・湿式ビーズミル(ナノ化)・球形化/晶析による粒子設計
9最終ブレンド・均質化
微粉化後の複数ロットを混合し含量・粒度均一な最終原薬バッチにするため
- 基準の方法
- ビン(コンテナ)ブレンダー/タンブルブレンダーによる最終原薬の均質化混合
- 試薬・資材
- なし(原薬のみ)。必要に応じ不活性窒素雰囲気下で実施。
- ほかの方法
- コーンミル解砕・整粒後にブレンド・タンブル混合(ダブルコーン/V型)
品質特性・分析
10構造確認/NMR・MS
保持時間では構造を保証できず、分光・質量で目的分子であることを最終証明する。
- 基準の方法
- NMR(1H/13C、必要に応じ19F/31P)+質量分析による構造確認
- ほかの方法
- FT-IR(官能基同定・対照標準比較)・UV-Vis分光・元素分析(CHN)
11含量・類縁物質/HPLC定量
効能を担う含量と合成・分解由来の類縁物質を定量し、品質の核心を押さえる。
- 基準の方法
- 逆相HPLC/UHPLC(UV検出、安定性指示法)による定量
- ほかの方法
- LC-MS/MS(微量不純物の帰属・定量)・イオンクロマトグラフィー・CAD/ELSD検出
12ニトロソアミン超微量分析
微量でも発がん性のある不純物を、通常試験より桁違いに低いppbで確実に管理する。
- 基準の方法
- LC-MS/MS(またはGC-MS/MS)による超微量定量
- ほかの方法
- HS-GC-MS(揮発性ニトロソアミン)・GC-ECD(揮発性アルキルハライド等)・HRMSスクリーニング/工程パージング評価
13残留溶媒/ヘッドスペースGC
毒性に応じ上限が異なる残留溶媒を定量し、乾燥十分性と安全性を最終確認する。
- 基準の方法
- ヘッドスペースGC-FID(HS-GC)による残留溶媒定量
- ほかの方法
- HS-GC-MS(同定が必要な場合)・直接注入GC・Karl Fischer(水分は別途)
14元素不純物/ICP-MS
微量でも毒性となる金属触媒残渣を許容量内に管理し、除去十分性を最終確認する。
- 基準の方法
- ICP-MS(マイクロ波酸分解前処理)による元素定量
- 試薬・資材
- 原薬参照標準品・不純物標準(CRS)
- 代表的なメーカー
- MerckAgilentPerkinElmerHoneywell
- ほかの方法
- ICP-OES(高濃度元素向け)・AAS(原子吸光)・比色法/簡易キット(限度試験)
15キラル純度/キラルHPLC
望まない鏡像体は効果と安全性を変えるため、分離定量し不斉合成の成否を保証する。
- 基準の方法
- キラルHPLC(キラル固定相、CSP)による鏡像体分離・定量
- ほかの方法
- キラルSFC(超臨界流体クロマト)・旋光度測定・キラルGC
16結晶多形/粉末X線回折・XRPD
多形差で溶解性・安定性・吸収が変わるため、狙った多形での一貫製造をロットごと確認。
- 基準の方法
- 粉末X線回折(XRPD)による多形同定
- 試薬・資材
- 試薬不要(Cu Kα線源, λ=1.5406 Å)。ゼロバックグラウンド試料ホルダー(Si単結晶)使用。
- 代表的なメーカー
- Malvern PanalyticalBrukerRigaku
- ほかの方法
- 固体NMR(ss-NMR)・ラマン/FT-IR分光・偏光顕微鏡(PLM)
17熱分析・水分/DSC・TGA・KF
熱挙動で多形安定性と水和・溶媒和を、水分量で安定性と含量計算への影響を把握する。
- 基準の方法
- DSC+TGA(熱分析)+カールフィッシャー滴定(水分)
- 試薬・資材
- DSC/TGA: 試薬不要(高純度窒素パージ、Al/Pt坩堝)。KF: Honeywell Hydranal試薬(容量法はComposite 5/2、電量法はCoulomat AG)。
- 代表的なメーカー
- TA InstrumentsMettler ToledoMetrohmHoneywell
- ほかの方法
- 動的水分吸着(DVS)・ホットステージ顕微鏡(熱顕微鏡)・乾燥減量(LOD)
18水分定量/カールフィッシャー
原薬の含水率を規格管理し水和状態・吸湿性・安定性を担保するため
- 基準の方法
- 電量滴定式カールフィッシャー法(微量水分の絶対定量、必要に応じ加熱気化オーブン併用)
- 試薬・資材
- Honeywell Hydranal Coulomat AG(電量法アノライト, 製品番号 34836)、隔膜なしセル兼用。オーブン併用時 Hydranal Coulomat AG-Oven(製品番号 34739)。
- ほかの方法
- 容量滴定式カールフィッシャー法(水分が多い品目)・乾燥減量(LOD)
19粒度分布/レーザー回折
粒度ばらつきが溶解性・流動性・製剤均一性に効くため重要品質特性として管理する。
- 基準の方法
- レーザー回折法による粒度分布測定(Dv10/Dv50/Dv90)
- 装置
- レーザー回折式粒度分布計: Malvern Panalytical Mastersizer 3000(Aero乾式/Hydro湿式ユニット)/Sympatec HELOS+RODOS/Microtrac SYNC。
- 試薬・資材
- 乾式: 無油圧縮空気/窒素。湿式: 分散媒(水またはイソパラフィン系、界面活性剤 例 Tween 20/レシチン添加)。
- 代表的なメーカー
- Malvern PanalyticalSympatecMicrotrac
- ほかの方法
- BET比表面積測定・動的画像解析・ふるい分け/顕微鏡法
20微生物限度・エンドトキシン
製剤前の微生物汚染を確認。無菌製剤原料では発熱物質も投与経路に応じ管理する。
- 基準の方法
- 微生物限度試験(TAMC/TYMC)+必要時BET(LAL法)
- 試薬・資材
- バイオバーデン試験(微生物数定量)
- 代表的なメーカー
- MerckCharles RiverLonzabioMérieuxSartorius
- ほかの方法
- 組換えファクターC(rFC)法・迅速微生物法(RMM)・無菌試験(無菌原薬の場合)
20工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ20工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。