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研究・創薬スクリーニングシリーズ効き目をどう測るか(力価試験)2/9入門

用量反応曲線とは?濃度を変えると、効き目がS字に変わるのはなぜか

Proglenth 編集部公開 2026-10-20更新 2026-10-20約5分で読めます
用量反応曲線とは?濃度を変えると、効き目がS字に変わるのはなぜか

化合物の効きの強さを比べるとき、細胞を使う試験で力価を出すとき、hERGなどの安全性の試験の結果を読むときに、土台になるのが用量反応曲線濃度を振ったときの応答の変化を表す曲線で、ここからIC50やEC50を導く。詳しく →です。用量反応曲線とは、薬の濃度や用量を段階的に変えて応答を測り、その関係を描いた曲線のことです。

ただし、曲線から読む値は、曲線の上と下の平坦部が測れていて初めて決まります。また、低い濃度で効くこと(強さ)と、最大でどこまで効くか(最大の効き目)は、別々の性質です。

この記事では、曲線で何を決めるのか、S字になる理由、強さと最大の効き目の違い、曲線から値を読む前に確かめることを順に説明します。

この記事の要点
  • 用量反応曲線とは⁠:濃度を変えて測った応答を、濃度の対数を横軸にとって並べた曲線です。多くの場合、応答は下の平坦部から上の平坦部へS字に変わります。
  • なぜS字になるのか⁠:薬が結合する標的の数には限りがあり、濃度を上げるほど空いた標的が減って、応答が頭打ちになるためです。
  • 低い濃度で効く薬ほど、よく効くのか⁠:低い濃度で効く強さと、最大でどこまで効くかは別の性質で、曲線の左右の位置と、上の平坦部の高さを分けて読みます。

1. 用量反応曲線は、何を決めるために描くのか

用量反応曲線は、薬がどの濃度から効き始め、どこまで効くかを1本の線で示し、化合物の強さの比較、ロットの効き目、安全性の判断に使います。 使う場面は、主に次の3つです。

  • 候補の化合物を比べる⁠:創薬の探索研究では、酵素や細胞の応答を半分まで抑える濃度(IC50)を並べて、次に進める化合物を選びます(IC50とは)。
  • ロットの効き目を確かめる⁠:バイオ医薬品抗体や組換えタンパク質など、生きた細胞や微生物に作らせる医薬品の総称です。細胞治療・遺伝子治療の製品を含めて呼ぶこともあります。化学合成で作る核酸医薬やペプチドは、ふつう含めません。詳しく →の力価試験細胞や生体分子に実際に作用させ、医薬品の生物活性(どれだけ効くか)を数値化する試験。詳しく →では、標準品と検体の曲線を同じ試験で並べ、横のずれから相対力価検体の力価を標準品と比べて表す値。生物系の日間変動を比で打ち消せる。詳しく →を出します(バイオアッセイとは)。
  • 安全性を見積もる⁠:心臓のカリウムイオンの通り道(hERG心筋の再分極を担うカリウムチャネルの一種。薬が塞ぐとQT延長や不整脈につながるため早期に評価する。詳しく → チャネル)を半分抑える濃度を、血中で働く濃度と比べて、安全域を見積もります(hERG安全域とは)。

細胞の試験で変えるのは液の中の濃度で、動物や人では投与する量(用量)を変えます。用量を変えた場合も、効き目を決めるのは血中や組織に届いた濃度です。用量反応の情報についての国際ガイドライン ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → E4 も、用量と血中濃度と応答の関係を知ることが、薬を安全かつ有効に使うために重要だとしています。

曲線を読むときは、次の4か所を見ます。応答を上げる向きの試験で説明します。

  • 下の平坦部⁠:薬がほとんど効かない低い濃度での応答で、比べる基準として使います。
  • 上の平坦部⁠:濃度を上げても応答がそれ以上変わらない高さで、最大の応答(Emax)を表します。
  • 中点⁠:応答が、下の平坦部と上の平坦部のちょうど中間になる濃度で、EC50応答を半分まで立ち上げる濃度のことで、作動薬など活性化系の効力指標に使う。詳しく →(50%効果濃度)と呼びます。応答を抑える向きの試験では曲線が右下がりになり、応答を半分まで抑える濃度をIC50(50%阻害濃度)と呼びます。
  • 傾き⁠:応答が変わる区間の急さで、Hill係数という数で表します。
上の帯に、濃度の低い順に3つの場面を並べる。左は、標的のほとんどが空いていて、薬が結合した標的が少ない場面。中央は、標的の半分が薬で埋まった場面。右は、標的のほぼすべてが埋まり、それ以上濃度を上げても応答が増えない場面。下は用量反応曲線の模式図で、横軸は濃度(対数)、縦軸は応答。曲線は左の下の平坦部(薬がほとんど効かない応答)から始まり、中ほどで立ち上がって、右の上の平坦部(最大の応答、Emax)で頭打ちになるS字を描く。上の平坦部と下の平坦部の中間の高さを与える濃度が中点のEC50で、立ち上がりの急さが傾き(Hill係数)。上の帯の3つの場面は、それぞれ曲線の下の平坦部、中点、上の平坦部の位置に対応する。いちばん下の帯に、応答を抑える向きの試験では曲線が右下がりになり、中点をIC50と呼ぶと示す。模式図で、実際の測定値ではない。応答の割合は、標的が埋まった割合と同じとは限らない
用量反応曲線の4つの読みどころと、濃度が上がるにつれて標的が埋まっていく様子を示した模式図
図をダウンロード(会員・無料)

このように、用量反応曲線は、効き始めから頭打ちまでを1本の線で示します。では、なぜ応答は直線ではなく、S字に変わるのでしょうか。

2. 濃度を上げると、なぜ応答がS字に変わるのか

薬が結合できる標的の数には限りがあり、濃度を上げるほど空いた標的が減って、応答が頭打ちになるためです。 濃度の対数を横軸にとると、この頭打ちの曲線がS字に見えます。

薬の分子は、受容体や酵素などの標的に結合したり離れたりをくり返し、濃度に応じた割合で標的を埋めます。この割合を占有率と呼び、結合と解離が釣り合った状態では「濃度 ÷(濃度 + Kd)」で表されます。Kd(解離定数)は、標的の半分が埋まる濃度です(Salahudeen と Nishtala, 2017年)。

この式では、濃度がKdの9分の1のとき占有率は10%、Kdの9倍のとき90%で、そのあいだで濃度は81倍に変わります。濃度をふつうの目盛りで並べると、曲線は低い濃度で急に立ち上がり、高い濃度でゆっくり頭打ちになる形(双曲線)を描きます。

濃度の対数で並べると、同じ曲線が中点を挟んで左右対称のS字になり、中点の濃度を読みやすくなります(Salahudeen と Nishtala, 2017年)。

傾きからは、何が分かるのか

傾きを表すHill係数は、1つの標的に1分子が結合する単純な場合は1で、上の占有率の曲線がこの傾きにあたります。 Hill係数が1より大きい曲線はこれより急で、1より小さい曲線はなだらかです(GraphPad)。

Hill係数が極端に大きい急な曲線では、結合の仕組みを考える前に、化合物が液の中で集まって粒をつくる凝集などを疑います(IC50とは)。

応答は、占有率と同じなのか

同じとは限りません。 標的に結合したあとの信号が細胞の中で増幅される系では、標的の一部が埋まっただけで最大の応答に達することがあり、EC50がKdより低い濃度に出ます(Kim と Lim, 2018年;Zsuga ら, 2017年)。

つまり、S字の形は標的が埋まっていく様子から生まれますが、曲線の位置は、結合の強さと、細胞が応答を返す仕組みの両方で決まります。では、曲線が左にある薬ほど、よく効くと言えるのでしょうか。

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3. EC50が小さい薬ほど、よく効くと言えるのか

低い濃度で効くという意味では「強い」と言えますが、最大でどこまで効くかは別の性質で、上の平坦部の高さで読みます。 薬理学では、この2つを次のように分けて呼びます(Salahudeen と Nishtala, 2017年)。

  • 強さ(potency):同じ大きさの応答を出すのに要る濃度の低さです。EC50が小さいほど強い薬で、曲線は左にあります。
  • 最大の効き目(efficacy):濃度を十分に上げたときに届く応答の高さです。上の平坦部(Emax)が高いほど、効き目の上限が高い薬です。

標的を働かせる薬(作動薬)の中には、標的を十分に埋めても応答が最大まで届かないものがあり、部分作動薬と呼ばれます。部分作動薬は、EC50が小さくても、上の平坦部が低いままです。

2つのグラフを左右に並べる。どちらも横軸は濃度(対数)、縦軸は応答。左のグラフは強さ(EC50)が違う2つの薬で、2本の曲線は同じ形と同じ高さの上の平坦部を持ち、横にずれている。左にある薬Aは、右にある薬Bより低い濃度で同じ応答に達し、EC50が小さい。右のグラフは最大の効き目(Emax)が違う2つの薬で、薬Cの曲線は高い上の平坦部まで届くが、薬Dの曲線は低い高さで頭打ちになる。薬Dは部分作動薬の例で、EC50が小さくても、最大の応答は薬Cより低い。下の帯に、EC50は左右の位置、Emaxは上の平坦部の高さで読み、2つは別々に比べると示す。模式図で、実際の測定値ではない
曲線の左右の位置(強さ)が違う場合と、上の平坦部の高さ(最大の効き目)が違う場合を比べた模式図
図をダウンロード(会員・無料)

ただし、標的が多く信号の増幅が大きい組織では、同じ薬が最大近くまで効いて見えることがあると報告されています(Zsuga ら, 2017年)。上の平坦部の高さも、試験の系によって変わります。

上の平坦部は、用量を決めるときにも意味を持ちます。ICH E4 は、過去には多くの薬が、あとから過剰と分かる用量、つまり効き目の平坦部に深く入った用量で発売されたと述べ、高血圧に使うチアジド系利尿薬の低カリウム血症などを例に挙げています。上の平坦部に入ると、用量を増やしても効き目は増えず、副作用だけが増えるおそれがあります。

つまり、化合物を比べるときは、EC50の並びだけでなく、上の平坦部の高さもそろっているかを見ます。では、曲線から読んだEC50やIC50は、いつでも信じてよいのでしょうか。

4. 曲線から値を読むには、何がそろっていればよいのか

上と下の平坦部が測定点で決まっていること、応答が半分を越えていること、液の中の実際の濃度が分かっていることの3つがそろって、値が決まります。

  • 両端の平坦部が測れている⁠:解析ソフトは、平坦部が測れていなくても曲線を当てはめて値を返します。Sebaugh(2011年)は、曲線が平坦部へ曲がる点の外側に、上下それぞれ2点以上の測定点を置くことを目安にしています。
  • 応答が半分を越えている⁠:最も高い濃度でも応答が半分に届かなければ、中点の濃度は「その濃度より高い」としか言えません。hERGの試験について、ICH E14/S7B の質疑応答(2022年)は、半分の抑制に届かなかった場合は、最も高い試験濃度の根拠と、治療で届く血中濃度との関係を示すよう推奨しています(S7B Q&A 2.1)。
  • 実際の濃度が分かっている⁠:化合物が溶け残ったり、容器に吸着したりすると、液の中の濃度は加えたつもりの濃度より低くなります。同じ質疑応答は、細胞にかかった液の濃度を分析で確かめ、加えた濃度と大きく違えば、測った濃度で曲線を描くよう推奨しています。

つまり、EC50やIC50は、曲線の両端と実際の濃度に支えられた値です。4PLS字型の用量反応曲線を下限・上限・傾き・中間用量の四つで表すモデル。相対力価の算出に使う。(4パラメータロジスティック)での当てはめ方や、相対IC50と絶対IC50の違いは、IC50とはで扱います。

5. 自分のデータでは、何から確かめるのか

曲線から読んだ値を使う前に、次の順に確かめます。

  1. 濃度か用量かを確かめる⁠:横軸が液の中の濃度か、投与した量(用量)かを確かめます。細胞の試験の値と動物や人の用量を比べるときは、用量を血中濃度に直してから比べます。
  2. 両端の平坦部を確かめる⁠:上と下の平坦部の外側に、それぞれ2点以上の測定点があるかを見ます。
  3. 中点と傾きを確かめる⁠:報告された値が、最大の応答の半分を与える濃度(EC50)か、応答を半分まで抑える濃度(IC50)かと、Hill係数が極端に大きくないかを見ます。
  4. 上の平坦部の高さを比べる⁠:化合物を比べるときは、EC50(50%効果濃度)の並びと一緒に、最大の応答(Emax)がそろっているかを見ます。
  5. 実際の濃度を確かめる⁠:液の中の濃度を分析で確かめたか、溶け残りや吸着がないかを見ます。

上の3つは1つの曲線を読むための、下の2つは曲線どうしを比べるための項目です。用量から血中濃度への換算は、血中濃度曲線の読み方(AUC・Cmax・Tmax)で扱います。

曲線の中点は、解析ソフトが4PLを当てはめて返します。では、ソフトが返したIC50(50%阻害濃度)は、本当に応答が半分になる濃度なのでしょうか。続きはIC50とはで説明します。

参考文献

  • Salahudeen MS, Nishtala PS. An overview of pharmacodynamic modelling, ligand-binding approach and its application in clinical practice. Saudi Pharm J. 2017;25(2):165-175. doi:10.1016/j.jsps.2016.07.002(占有率は濃度÷(濃度+Kd)、ふつうの目盛りでは双曲線、濃度の対数ではS字、EC50が高いほど強さは低いこと、強さ・最大の効き目・部分作動薬、Hill 係数)
  • Kim H, Lim HS. Mechanistic ligand-receptor interaction model: operational model of agonism. Transl Clin Pharmacol. 2018;26(3):115-117. doi:10.12793/tcp.2018.26.3.115(占有率と効果の関係は一般に直線ではなく、KdとEC50が異なること、強さは結合の強さと占有を応答に変える効率の両方で決まること)
  • Zsuga J, Erdei T, Szabó K, et al. Methodical Challenges and a Possible Resolution in the Assessment of Receptor Reserve for Adenosine, an Agonist with Short Half-Life. Molecules. 2017;22(5):839. doi:10.3390/molecules22050839(一部の受容体の刺激で最大の効果が出る場合があること(受容体予備)、受容体予備の大きい組織では効き目の低い作動薬も大きな効果を出し、完全作動薬のように振る舞うことがあること)
  • GraphPad. Prism Curve Fitting Guide: Hill slope(2026年10月参照。標準の傾き1では、応答10%から90%までに81倍の濃度が要ること、急な曲線ほど傾きが大きいこと)
  • Sebaugh JL. Guidelines for accurate EC50/IC50 estimation. Pharm Stat. 2011;10(2):128-134. doi:10.1002/pst.426(相対EC50/IC50は、上下の曲がり角の外側にそれぞれ2点以上の測定点があるときに使う)
  • ICH E4 Dose-Response Information to Support Drug Registration(Step 4、1994年3月). ICH(I. 用量・血中濃度・応答の関係の重要性、効き目の平坦部に深く入った用量で発売された例とチアジド系利尿薬の低カリウム血症)
  • ICH E14/S7B Questions and Answers: Clinical and Nonclinical Evaluation of QT/QTc Interval Prolongation and Proarrhythmic Potential(Step 4、2022年2月). ICH(S7B Q&A 2.1:主な評価項目はIC50対象の働きを半分に抑えるのに必要な薬物濃度で、値が小さいほど強く阻害する。hERG阻害の強さを表す。詳しく →とHill係数、50%の抑制に届かない場合の最高濃度の根拠、細胞にかかった液の濃度の確認と、大きく違えば測った濃度で曲線を描くこと)
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#用量反応#IC50#EC50#4PL

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この記事の目次
  1. 1. 用量反応曲線は、何を決めるために描くのか→
  2. 2. 濃度を上げると、なぜ応答がS字に変わるのか→
  3. 3. EC50が小さい薬ほど、よく効くと言えるのか→
  4. 4. 曲線から値を読むには、何がそろっていればよいのか→
  5. 5. 自分のデータでは、何から確かめるのか→
  6. 参考文献→
シリーズ2 / 9
効き目をどう測るか(力価試験)
  1. 1力価(titer)とは?抗体の濃度だけ測っていると何を見落とすか
  2. 2用量反応曲線とは?濃度を変えると、効き目がS字に変わるのはなぜか
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  3. 3. EC50が小さい薬ほど、よく効くと言えるのか→
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編集メモ:この記事は Proglenth 編集部が、規制文書・論文・メーカーの公開資料をもとに整理した一般的な解説です。実際の製造方法・管理戦略・品質基準は、製品や企業、各国の規制によって異なり、特定製品の推奨や規制・医療上の助言ではありません。実務で判断するときは、薬局方・ガイドライン(ICH・GMP など)やメーカーの一次情報を確かめてください。誤りやご指摘はお問い合わせからお知らせください。

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