創薬候補を選んでいる10項目のうち1番目

標的の妥当性を確かめる

標的を動かせば病気が動くかを、ヒトの遺伝学と実験で確かめる

いつまでに
スクリーニングの系を組む前(化合物や抗体を探し始める前)
関わる人
研究(生物・薬理)、トランスレーショナル研究

この項目で確かめること6項目

0 / 6 項目に印印はこのブラウザにだけ残ります
題とページの URL を添えてコピーします。会議の資料やチャットに貼れます。

終えたときに手元にあるもの遺伝学の証拠の強さ、原理の違う手段での検証結果、安全性の見立て、進む基準と止める基準をまとめた標的評価書

なぜ必要か

標的が病気を動かしていなければ、候補をどれだけ磨いても臨床で効果は出ないからです。第2相の失敗の大半は有効性の欠如で、その4割強では、仕組みをきちんと試せたのかさえ判断できなかったと報告されています(Morgan、2012年)。

見落としやすいこと

  • 病変で発現が高いという相関だけで選ばれた標的では、止めれば効くと期待した第2相試験で、病気がかえって悪化した例があります(IL-17Aとクローン病)。
  • 発生の途中から標的が欠けた細胞や動物では補う仕組みが働き、薬で成体の標的を一時的に抑えた場合と結果が違うことがあります。
  • 遺伝学の証拠が強い標的でも、個々の薬が試験に勝てるかは別の問いで、Lp(a)を下げたアンチセンス薬が第3相で主要評価項目を達成できなかった例があります。
  • RNA を標的にする CRISPR では、RT-qPCR で測るとノックダウンが実際より大きく見えうることが報告されています。

進め方

  1. ヒトの遺伝学と公開データベースで、標的と病気の結びつきの強さと、必須遺伝子の可能性を調べます。

  2. 実験の結果が出る前に、進む基準と止める基準を文書にします。

  3. ツール化合物と遺伝子操作の両方で標的を動かし、表現型が一致するかを確かめます。

  4. 標的が発現している細胞と、陽性対照が効く動物モデルで、曝露・結合・下流の反応を測ります。

  5. 安全性の見立てと合わせて標的評価書にまとめ、スクリーニングに進むかを決めます。

判断の分かれ目

こういうときこうする

こういうとき証拠が発現の高さや経路上の位置づけだけのとき

こうする止めて悪化する可能性も含めて仮説を立て直し、遺伝学か遺伝子操作の証拠を足してから評価系に進みます。

こういうとき化合物の効き目が、標的を壊した細胞でも消えないとき

こうするその化合物を標的の検証には使わず、構造の違う別の化合物か遺伝子操作で確かめ直します。

こういうとき機能を失った人が集団にほとんどいない遺伝子のとき

こうする強く長く抑える設計を避けるか、部分的な抑制で効くかを先に確かめます。

自社でできるか、外に出すか

標的評価書は自社で書き、遺伝子操作した細胞や動物モデルでの試験は創薬支援の受託企業に出せます。

外に出すとき、先に相手に確かめること

  1. 遺伝子操作の結果を、独立した複数の配列と、標的を戻すレスキュー実験で確かめるか
  2. 使う細胞とモデルで、標的の発現と陽性対照の効き方を示せるか
  3. 曝露・結合・下流の反応を、別々の測定で出せるか
  4. 進む基準と止める基準を、試験を始める前に合意できるか

読んで確かめる4本

まずこれ約4分

標的選定で何を疑うか:遺伝学の証拠の強さを見分ける

創薬の標的選定で何を疑うかを解説します。GWASのヒットだけでは原因遺伝子を取り違える例(FTO)、機能喪失変異という強い証拠(PCSK9)、病気に関わると見られても第2相で逆の結果が出た例(IL-17A)、遺伝的根拠が強くても勝てない例(Lp(a))を整理します。

詳しく分かる項目:遺伝学の証拠の強さ・必須遺伝子の可能性・抑え続けたときの安全性

約5分

ターゲットバリデーションとは?選んだ標的を前臨床で確かめる方法

ターゲットバリデーション(標的検証)は、選んだ標的を叩けば病気が動くかを前臨床で確かめる仕事です。薬が届き、結合し、反応したかの3つの柱、化合物・遺伝子操作・核酸の使い分け、MELKとBACE阻害薬の教訓を解説します。

詳しく分かる項目:曝露・結合・下流の反応・原理の違う手段の突き合わせ

約5分

細胞ベースの疾患モデルとは?培養皿の結果はどこまで信じられるのか

細胞ベースの疾患モデルとは、病気の一部を培養細胞に映し、薬の候補を動物実験の前に絞る実験系です。3つの型、細胞株だけでは足りない理由、培養皿の結果で言えること、結果を信じてよいかの確かめ方を解説します。

このテーマを順に学ぶ

創薬の出発点:標的からヒット化合物まで全14回・約75分

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  11. 11
  12. 12
  13. 13
  14. 14

この項目の記事は第1回「標的選定で何を疑うか:遺伝学の証拠の強さを見分ける」です。

使える手段


この項目の関連