GEN が、バイオ医薬品製造の担当者に 「製品品質と患者の安全を確保するため、上流・下流のどの地点で、どのような技術を使って不純物を効果的に除去しているか」を問うたラウンドアップ記事を掲載した。
問いの立て方に、この分野の性格が出ている。「どの技術が最良か」ではなく「どこで何を使うか」——不純物除去は単独の工程ではなく、工程列全体の配置の問題だからである。
何を「不純物」と呼んでいるのか
まず整理しておくと、不純物は由来で二つに分かれる。
- 工程由来:宿主細胞タンパク質(HCP)、宿主細胞DNA、培地成分、プロテインAリガンドの漏出、消泡剤、ウイルス
- 製品由来:凝集体、断片、電荷変異体、酸化・脱アミド体
この二つは対処の仕方が違う。工程由来は取り除く。製品由来は、取り除くこともできるが、そもそも作らない(培養条件や製剤で抑える)ほうが効くことが多い。除去技術の話をするとき、この区別が曖昧なまま進むと議論が噛み合わない。
「どこで」が効く理由
同じ不純物でも、取る場所によって難易度が桁で変わる。
上流で決まる部分がある。 細胞の生存率が落ちれば、破裂した細胞からHCPとDNAが放出される。培養の後半をどこで切るかは、収量と純度の取引になる。細胞株の選択や培地の組成でも、出てくるHCPの種類と量は変わる。下流で苦労する量は、上流で決まっているという言い方ができる。
回収の段階で大きく落ちる。 ハーベストと清澄化、あるいは中和・沈殿と深層ろ過は、地味だが負荷の大半をここで削る。ここが甘いと、後段のカラムに余計な負担がかかり、樹脂の寿命に響く。
捕捉工程は選択性が高い。 抗体であればプロテインAが大部分を一度に落とす。ただし完全ではなく、特定のHCPは製品と共に溶出してくることが知られている。
残りをポリッシングで詰める。 ポリッシングクロマトグラフィー(AEX/CEX/HIC/マルチモーダル)で、残存HCP・DNA・凝集体を規格まで落とす。フロースルーで通すか吸着させるかは、不純物と製品の性質の差による。近年はシングルユースの膜クロマトグラフィーがここに入ることが増えた。
ウイルスは別枠で担保する。 ウイルスろ過と低pH不活化は、除去というよりクリアランスを積み上げて示す性質の工程である。
「除ければよい」で終わらない
除去技術を選ぶときに実際に効いてくるのは、除去率そのものよりも周辺の条件である。
- 収率とのトレードオフ:純度を上げれば製品も一緒に失われる。どこで折り合うかは規格と経済性で決まる
- 測れるか:除いたことを示すには測定法が要る。HCPのELISAは抗体の被覆率という前提を抱えており、LC-MSによる補完が議論されるのはこのためである
- スケールで挙動が変わる:滞留時間、線速度、負荷量。スケールダウンモデルが実機を代表できているかが、検証の前提になる
- 一貫生産との相性:連続化・工程強化を進めるほど、不純物の負荷が定常的にかかる。バッチとは別の設計が要る
モダリティが増えると設計が変わる
抗体では確立された流れがあるが、他のモダリティでは前提が違う。
- AAV:残存DNAのクリアランスに加え、中空粒子と充填粒子の分離という抗体には存在しない課題がある
- mRNA:dsRNAの除去や、オリゴdTによる精製
- 微生物系:封入体からのリフォールディングとエンドトキシン除去が主戦場になる
つまり「不純物除去の技術」は一枚のリストにはならない。製品ごとに、何が問題になるかを先に決めてから工程を組む——というのが、この種の問いに対する実務の答えといえる。
※ 本ページは公開情報(GEN の記事)をもとにしたProglenth編集部による整理です。回答者の具体的な発言・採用技術の詳細は一次情報をご確認ください。本文中の解説はバイオ医薬品製造一般の構造に関する説明であり、記事中で各社が述べた見解を要約したものではありません。