Hull LyoStar 4.0 は、SP Industries が手がけるR&D・プロセス開発向けの凍結乾燥機です。チャンバー容量は0.113 m³とコンパクトで、棚温度は-70℃まで、コンデンサは-85℃以下まで落とせます。商用生産機ではなく、サイクル開発と工程理解に使うスケールダウン機という位置づけです。
この機種を語るうえで欠かせないのが、LyoFluxというバイアルに触れずに昇華速度を測るセンサーです。
プローブを刺さずに昇華速度を測るLyoFlux
凍結乾燥のサイクル開発では、一次乾燥がどこまで進んだかを知るために、製品の温度を測ります。従来は熱電対をバイアルに直接差し込む方法が使われてきましたが、この方法には弱点があります。プローブ自体が氷の核形成のきっかけになり、刺したバイアルだけ周りと違う挙動を示すことがあるからです。しかもバッチ全体の中で測れるのは、プローブを刺したごく一部のバイアルに限られます。
LyoFluxは、チャンバーとコンデンサをつなぐダクトの中を通る水蒸気の濃度と速度を、レーザー吸収分光(TDLAS)でリアルタイムに測ります。バイアルには何も触れません。ここから昇華速度、つまり製品からどれだけの水分が抜けているかを、プローブを使わずに推定できます。製品に触れる測定はその1本を代表値からずらしてしまう恐れがあるので、触れずに測れることは精度の向上だけでなく、測定そのものがサイクルを乱さないという意味を持ちます。
棚は-70℃まで、コンデンサは-85℃以下まで
棚温度の制御範囲は-70℃から60℃まで、許容差は±0.5℃です。コンデンサは-85℃以下まで下げられ、最大30L以上の氷を溜め込める容量と、0.548 m²の表面積を持ちます。
タンパク質やmRNA-LNPの処方は、共晶点やガラス転移温度が低いものが少なくありません。棚を深く冷やせる範囲が広いほど、そうした処方でも凍結を確実に終わらせるサイクルを組みやすくなります。コンデンサの容量が小さいと、長い一次乾燥の途中で氷が満杯になり、圧力が上がって乾燥が止まってしまうことがあります。棚とコンデンサの両方が深い温度まで対応していることは、処方を選ばずにサイクル開発を進められるという意味で効いてきます。
あくまでR&D機、商用機への橋渡しが要る
チャンバー容量は0.113 m³で、商用生産用の凍結乾燥機と比べるとかなり小さい規模です。位置づけとしては、サイクルの条件出しと工程理解を進めるための開発機であり、そのまま商用生産に使う機種ではありません。
小さいチャンバーで得られた棚温度・チャンバー圧力の条件を、面積も体積も桁違いに大きい商用機へそのまま持ち込むと、熱の伝わり方や乾いた層を通る蒸気の抜け方が変わり、同じ条件でも一次乾燥の終わり方がずれることがあります。LyoStar 4.0で作った設計空間は、商用機への技術移管という別の検討を経て初めて量産条件になります。
導入で確認したいこと
- LyoFluxのTDLASデータを、自社のデータインテグリティ・PAT運用の枠組みでどう記録・レビューするか
- 棚温度-70℃・コンデンサ-85℃以下という範囲が、自社処方の共晶点・ガラス転移温度に対して十分な余裕を持つか
- 商用スケールの凍結乾燥機への技術移管を、どの段階でどう計画するか
- チャンバー容量0.113 m³で何バイアル分のサイクル開発が回せるか、自社のバッチサイズと照らしたか
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様の詳細は公式情報をご確認ください。
