PMDA(独立行政法人医薬品医療機器総合機構)レギュラトリーサイエンスセンターは11月2日、「薬事活動におけるAI利活用に関する基本的考え方(Early Consideration)」を事務連絡で公表した。主たる対象は、開発から製造、市販後までのうち、薬事上の判断及び意思決定に関わる活動でAIを利活用する場面で、対象者には製造販売業者と製造業者も挙げられている。
主たる対象は薬事上の判断・意思決定に関わる活動、対象者に製造販売業者と製造業者
主たる対象は、医薬品・医薬部外品・化粧品・医療機器・再生医療等製品の開発段階(非臨床試験や臨床試験)から製造、市販後までのライフサイクル全般で、薬事上の判断及び意思決定に関わる活動に生成AIを含むAIを利活用する場面である。その活動で使うAIの開発も、継続的な更新などの運用工程を含めて対象になる場合がある。基礎研究段階の利用や一般的な医療行為は、主たる対象としていない。
対象者は、機構、申請者、製造販売業者、製造業者、治験依頼者、CRO(開発業務受託機関)などで、AIモデルやAIシステムを開発・提供する側も含まれる。
規制上の要件の新設ではなく、留意事項を3階層で整理した参考情報
本文書は規制上の要件を新たに定めるものではなく、AIの利活用で生じ得るリスクを管理しつつ便益を最大化するための考え方だとされる。Early Considerationは、科学的知見が必ずしも十分に集積されていない段階で、その時点の考え方を示した参考情報で、今後変わり得るとしている。
留意事項は、人間中心の原則、基本的な留意事項、実装・管理上の留意事項の3階層に整理された。これに対応するだけで必要な事項が全て充足されるものではなく、組織としてのガバナンスと体制の整備は記載の有無にかかわらず適切に対応されるべきだとされる。
データの記録・追跡可能性と、利活用前の性能評価・妥当性確認
製造と品質の実務に関わるのは、データの扱いについての記述だ。利活用時は、入力または処理させるデータの適切性を利用目的に照らして確認するとされた。開発に用いるデータについては、データの特性、データソース、処理過程、変更履歴、意思決定の根拠を適切に記録・管理し、追跡可能性の確保に努めるとされる。開発に用いるデータと更新の履歴についても、データインテグリティや監査証跡と同じ問いが出てくる。
評価は一度で終わらない。利活用前に、利用目的や適用範囲、想定されるリスクに応じた性能評価及び妥当性確認を行い、性能だけでなく実際の利用環境での運用も踏まえて評価するとされた。開始後も継続的なモニタリングと評価を続け、定期的に見直す。講じる措置はリスクの程度に応じて決めるとされる。
実務の確認ポイント薬事活動へのAI利活用における留意点
確かめるのは、薬事上の判断や意思決定に関わる活動で自社がどのAIを使い、利用目的と適用範囲をどこに定めているかである。申請資料や試験記録の下書きを生成AIで作る運用も、薬事上の判断に関わる活動であれば主たる対象に当たり得る。CSVの枠で扱うか別の管理とするかは、利用目的・適用範囲とリスクの程度から自社で決めることになる。
記録の側では、入力データの適切性を確認する手順と、開発や更新のときにデータソース・処理過程・変更履歴・意思決定の根拠を残す場所を決めておきたい。人間による確認と判断をどの工程に置き、出力を過度に信頼せず適切に介入できる体制があるかも、関係者の側で確かめることになる。AIの推定を製造で使う場面でも、最終的な責任は人間が担う。
AIシステムを提供する側も対象に含まれるため、委託先とベンダーには利用目的・利用状況・限界の開示を確認し、あわせて更新時の通知の取り決めも決めておきたい。英訳版も同日付で出ている。参考用の暫定訳で日本語版が優先するとされるが、海外の本社や委託先との共有には使える。ファーマコビジランスでも、AIは定型業務の自動化から判断支援へ移りつつある。
※ 本ページは2026年11月2日のPMDAレギュラトリーサイエンスセンターの事務連絡をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。