培養
2026.09.26•Cytiva•約6分

iCELLis(Cytiva)――付着細胞を面積で増やす発想

Photo: Michael Schiffer / Unsplash

iCELLis は、Cytivaが手がける付着細胞培養向けの固定床バイオリアクターです。容器の中にポリエチレンテレフタレート(PET)製の担体を詰め込み、培養液をその隙間に循環させる方式で、培養面積はNanoの0.5m²から500+の500m²まで、装置のスケールを選ぶだけで変えられます。pH・溶存酸素・圧力・バイオマスの4項目は、いずれもシングルユースのセンサーで直接測ります。

ここで押さえておきたいのは、この装置が培養液の容量ではなく担体の表面積でスケールを語っているという点です。

面積で増やすという設計思想

付着細胞は、培地に浮かせるだけでは増えません。足場になる面が要ります。長らくこの面を稼ぐ手段はローラーボトルやセルファクトリーを何段も積むことで、面積を増やすたびに扱う容器の数も増えていました。

iCELLisは、この面積稼ぎを1つの容器の中で完結させます。PET製の担体は繊維が交差した構造をしていて、細胞はその繊維に沿って三次元的に付着・増殖します。担体をどれだけ密に詰めるか(圧密度)によって培地の流れやすさが変わるため、低圧密(LC)と高圧密(HC)の2系統を用意し、必要な面積と流量のバランスを選べるようにしてあります。⁠容器の数を増やすのではなく、1つの容器の中の詰め方で面積を稼ぐという発想が、この装置の核にあります。

0.5から500という数字が示す意味

iCELLisにはNano・50・500+という3つのスケールがあって、対応する培養面積はそれぞれ0.5〜4m²、6〜50m²、66〜500m²です。全体で見ると、最小と最大の間には1000倍近い開きがあります。

この幅の大きさよりも意味があるのは、3つのスケールが同じ担体の化学組成と、同じ流路の設計思想を保ったまま並んでいることです。研究開発の初期にNanoで決めた培養条件は、担体そのものが変わらないぶん、50や500+に移すときに前提から作り直す必要が少なくなります。センサーの構成も、pH・DO・圧力・バイオマスという組み合わせが3スケールを通じて共通しています。⁠面積という物差し1つでスケールを3つとも揃えてあることが、開発で決めた条件を量産までそのまま持ち越せる理由です。

遺伝子治療の製造現場が抱える面積の問題

AAVやレンチウイルスといったウイルスベクターの多くは、HEK293系の付着細胞を使い、一過性トランスフェクションで作られます。この生産方式を大きくしようとすると、細胞を貼りつける面積そのものを増やさなければならず、従来は培養容器の数を増やす、いわゆるスケールアウトで対応してきました。

容器の数が増えれば、その分だけ操作のばらつきが入り込む余地も増えます。BioProcess Internationalの技術論考でも、付着細胞培養をスケールアウトする際の一貫性の確保が課題として挙げられています。iCELLisのように1つの固定床の中で面積を稼ぐ方式は、操作の単位を容器1本のまま保てるという点で、この問題に対する1つの答えです。⁠スケールアウトで増えていた操作のばらつきを、スケールアップという形に置き換えて減らす狙いが、固定床という構造の実務上の意義です。

導入で確認したいこと

※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様の詳細は公式情報をご確認ください。

主要諸元

方式シングルユース固定床バイオリアクター
培養面積レンジ0.5〜500m²(Nano/50/500+の3スケール)
担体USP Class VI ポリエチレンテレフタレート(PET)製、繊維が交差した固定床構造
センサーpH・溶存酸素(DO)・圧力・バイオマスをシングルユースで一体搭載(温度はサーモウェル式)
500+ベッセルの付帯仕様溶着チューブ・Kleenpak Presto無菌コネクタを搭載、ガンマ線滅菌済みで供給
主な用途ウイルスベクター・エクソソーム・ワクチンの臨床〜商用生産

いずれもメーカー公表値です。構成やキットにより異なるため、実際の条件はメーカーの製品ページでご確認ください。

メーカー公式
Cytiva
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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