ADCの結合位置は測れても、製造で分けられない? 位置異性体と精製の限界
ADC(抗体薬物複合体標的を選ぶ抗体に、細胞傷害性の薬物(ペイロード)をリンカーでつないだ分子。詳しく →)の平均DAR(drug-to-antibody ratio、抗体1分子あたりの平均薬物結合数)とDAR分布DAR0/2/4/6/8などの構成比。平均が同じでも分布の形しだいで製品の性質が変わる。が前のロットと同じでも、薬物が結合した位置の構成まで同じとは限りません。2023年の報告では、還元の時間を変えただけで、平均DAR抗体薬物複合体(ADC)で、抗体1分子に結合した薬物の平均数です。効果と安全性を左右するため測定する指標です。詳しく →と分布は同じ範囲のまま、結合位置の割合が入れ替わりました。
ただし、位置は測れないのではありません。測れても、製造で目的の位置の分子だけを選んで取り出すには、測定とは別の制約があります。
この記事では、位置異性体目的とする修飾が狙いと異なる部位に付いた化合物で、医薬品の不純物(類縁物質)として管理対象となる。詳しく →を製造後に選んで取り出したいときにどの層がいちばん効くかを決めるため、分析・反応・精製・スケールアップ・品質管理原料・資材・中間体・製品を規格に照らして試験し、使ってよいか、出荷してよいかの合否を決める仕事です。GMPでは製造部門から独立させます。詳しく →の5つの層を順に説明します。
- 還元の時間を延ばすと、平均DARと薬物数ごとの割合は同じ範囲のまま、結合位置の割合が入れ替わった報告があります
- HICが主に分けるのは薬物の数です。同じ数の位置異性体にも保持の差は出ますが、その差だけで製造の規模で高い純度に分けるのは難しくなります
- ICH Q6Bが求めているのは、不均一さの型を定義し、非臨床と臨床で使ったロットと一致することを示すことです
1. 測れることと、作れることの違い ― 限界の5つの層
位置異性体は、同じ数の薬物が抗体の別の位置に付いた分子を指します。
ADCの不均一さは、結合した薬物の数と、付いた位置の2つで決まります(ADCとは)。平均DARが規格に入っていても、後者までそろったことにはなりません。
限界は、分析から品質管理まで5つの層に分かれます。

- 分析の限界:平均DARも分布も測れます。鎖間システインに結合させたADCなら、非還元のCE-SDSSDSで処理したタンパク質をキャピラリー電気泳動で分離し、抗体などの純度や分子サイズ分布(断片・凝集)を評価する手法です。詳しく →などで位置異性体の構成も評価できる場合がありますが、1つの分子の中のすべての組み合わせまでは読み切れません。
- 反応の限界:還元の当量で平均は合わせられますが、鎖間システインにランダムに結合させた報告では、ちょうど目標の数だけ付いた分子は32〜42%にとどまりました。
- 精製・回収の限界:疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)高塩条件で疎水性の違いを利用して結合・分離する方式。凝集体や疎水性の高い変性体を分ける。詳しく →は主に薬物の数で分けます。同じ数の位置異性体にも保持の差は出ますが小さく、製造の規模で高い純度製品にどれだけ目的物質だけが含まれ、不純物や変性体が少ないかを示す指標です。抗体では単量体の割合やサイズの異なる成分の量などを見ます。詳しく →に分けるのは難しくなります。
- スケールアップ小型培養で確立した条件を、より大きなバイオリアクターへ拡大する取り組みです。酸素供給の指標kLaなどを揃え、性能を再現します。詳しく →の限界:分取で分けた公表例は、実験室の規模にとどまります。
- 品質管理の限界:位置の組み合わせは出荷規格の個別の項目にするとは限らず、特性解析規格試験より高い分解能で製品の品質特性を詳しく調べること。比較可能性の評価などで用いる。詳しく →と工程管理で不均一さの型の一貫性を示す方法もとられます。
位置異性体を製造後に選んで取り出したいとき、支配的になるのは3つ目の精製・回収の層で、その理由は7節に書きます。目的が変われば支配的な層も変わり、位置の分布を一定に保つことが目的なら、反応の層が先に効きます。
2. 分析の限界 ― 平均、分布、部位ごとの結合率
分析で分かることは、順に3つあります。
まず分かるのは分布です。リシンに結合させたトラスツズマブ エムタンシンを脱糖鎖してインタクト質量分析抗体を分解せず丸ごと高分解能質量分析で測り、糖鎖や修飾による質量分布や同一性を一括で俯瞰する手法。詳しく →(抗体をまるごと測る質量分析分子の質量を精密に測る手法。鎖の組み合わせ違いを分子量差として捉え純度評価に使う。詳しく →)にかけると、薬物が0個から8個まで付いた分子のピークが並び、その面積から平均DARが出ます(インタクト質量分析)。
次に分かるのは部位ごとの結合率です。同じ品をトリプシンとAsp-Nで切ってペプチドマッピングタンパク質を断片に切り分け、どこがどれだけ化学変化したかを調べる分析。詳しく →(酵素で切った断片をLC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →で読む分析)にかけると、結合しうる92か所のうち82か所が部分的に結合していました(ペプチドマッピング)。
92か所は、リシンの側鎖88か所と、N末端のアミノ基4か所です。抗原に結合する可変部のリシンも、部分的に結合していました。
分かるのは、そこまでです。部位ごとの相対量は出ても、個々の部位の結合率を平均DARに直接結びつける方法はない、と同じ報告が書いています。
平均DARが近くても、部位ごとの結合量まで近いとは限りません。この承認品と、そのバイオシミラーの候補を並べると、平均DARは3.53と3.39で近いのに、軽鎖の定常部と重鎖のCH1の領域では部位ごとの結合量に約25%の差がありました。細胞傷害性と抗原への結合では差が出ませんでしたが、血漿中の安定性と薬物動態投与した薬が体内で吸収・分布・代謝・排泄されていく挙動。ADCではDARが大きく影響する。詳しく →は評価されていません。
1つの分子の中の組み合わせを読むには、非還元の条件で分析します。非還元のCE-SDS(SDSで変性させた試料を毛細管の中で大きさごとに分ける電気泳動)は、ADCがどの鎖のつながりで分かれるかを見ます。立体構造を保ったまま測るネイティブ質量分析をサイズ排除クロマトグラフィー多孔質の担体を通る時間差で分子をサイズ順に分離し、抗体の凝集体や断片がどれくらい含まれるかを測る手法です。詳しく →につなげば、薬物の数ごとの割合、平均DAR、未結合の抗体の量をまとめて出せます。
それでも区別のつかない組み合わせは残ります。鎖のつながりから位置異性体を割り付けた報告は、ヒンジにある2本のジスルフィドのどちらが残っているかは、用いた分析法では区別できないと断っています。
鎖間システインのADCなら、位置異性体の構成は評価できます。読み切れないのは、同じ分子の中で同時に結合している部位の、すべての組み合わせです。
ProgLoopで調べるこの製品・工程、ProgLoopで実務者に聞く関連製品や他社の使用経験とあわせて引けます。迷えば、そのまま質問も投げられます。ProgLoopで調べる3. 反応の限界
反応で決まるのは、平均の数と、位置の分布の両方です。
システインに結合させるADCでは、重鎖と軽鎖をつなぐFab重鎖の一部と軽鎖がジスルフィドで連結した約50kDaの抗体フラグメント。2本鎖で折りたたみがやや複雑。詳しく →側の2本と、重鎖抗体を構成する2種類のポリペプチド鎖のうち分子量が大きい方で、抗体の基本骨格と主要な機能領域を担う。詳しく →どうしをつなぐヒンジの2本、合わせて4本の鎖間ジスルフィドを部分的に還元して反応点を作ります。薬物の数は0から8の偶数が中心になり、それぞれの数に複数の位置異性体ができます(DARの決め方)。
平均を4個に合わせても、ちょうど4個付いた分子は多数派になりません。抗CD30抗体で3つの方法を比べた報告では、その割合は還元の方法によって32〜42%にとどまりました。
位置の分布も、同じ化学で動きます。還元剤で部分的に還元した材料と、いったん完全に還元してから酸化剤で戻した材料では、4個付いた分子の中で多数を占める位置異性体が入れ替わりました。
同じ報告は、還元がランダムに進むとした計算と実測が大きく外れたことから、ジスルフィドごとに還元の速さが違うと結論しています。
時間でも動きます。還元の時間だけを変えた試験では、HIC分子表面の疎水性の違いを利用して分けるクロマト担体で、高い塩濃度で吸着させ塩を下げて溶出させます。抗体の凝集体除去などに使われます。詳しく →で見た平均DARも薬物数ごとの割合も、再現のばらつきと測定法の精度を考えれば差がありませんでした。

非還元のCE-SDSで同じ試料を見ると、様子が変わります。薬物4個の分子のうち、重鎖2本がつながった断片として現れるものが11.0%から4.9%へ減り、重鎖と軽鎖抗体を構成する2種類のポリペプチド鎖のうち分子量が小さい方で、重鎖と対になって抗原結合部位を形成する。詳しく →がつながった断片として現れるものが9.1%から19.2%へ増えました。
報告は、Fab側の鎖間に結合していた薬物が、時間とともにヒンジ側へ移ることとして説明しています。分子の中でチオールとジスルフィドが入れ替わる反応を機構に挙げたうえで、仕組みはまだ完全には分かっていないと断っています。
加えた還元剤は反応の初めのうちに使い切られていたため、還元が続いたわけではない点も確かめています。
4. 精製・回収の限界 ― HICが主に分けるのは薬物の数
HICは、主に薬物の数ごとに分けます。
薬物が増えるほど分子の疎水性分子が水と親和せず、油脂や非極性溶媒と相互作用しやすい性質で、二本鎖RNAと一本鎖RNAではその程度が異なり分離の指標となる。詳しく →が上がり、担体カラムに充填する多孔質ビーズ。表面のリガンドと成分の相互作用差で目的物と不純物を分離する。詳しく →に強く保持されるためです(HIC)。分取のHICで薬物2個・4個・6個の材料を取り出した報告では、薬物の数については95%以上の純度が得られています。
位置では、その差が小さくなります。還元の時間を変えた前節の報告は、位置異性体は薬物の数が同じで疎水性が近いため、HICでは分離しにくいと書いています。
ただし、同じ報告は、ピークの形から位置異性体どうしの部分的な分離も起きているとしています。薬物4個の分子では2つのピークを、Fab側に付いた分子とヒンジ側に付いた分子に割り当てられ、ヒンジ側の分子は薬物が覆われやすいため疎水性が低く、先に溶出しました。
一方、薬物2個の分子では、2つの位置異性体が同じところに溶出していました。保持の差は分析では手がかりとして使えますが、その差だけで製造の規模の分取に足る分離が得られるとは限りません。
別の原理なら、位置に対する選択性が出ます。弱陽イオン交換クロマトグラフィー負電荷の樹脂に正電荷の分子を結合させて分ける分離法。凝集体除去に向く。詳しく →(表面の電荷の違いで分ける方法)でHIC由来の薬物4個の材料をさらに分けた報告では、画分ごとに多数を占める位置異性体が違いました(電荷バリアント)。
ただし、同じ報告は、薬物の数に対する分離能が限られ、一方の位置異性体の酸性の成分がもう一方の主ピークと重なりうるとも述べています。
さらに、位置を読む分析は変性と還元を伴います。読み終えた材料を製品に戻すことはできません。
分取で確実に切り分けられるのは、主に薬物の数です。位置の組み合わせは、分けるより、反応の側で決める問題として残ります。
5. スケールアップの限界
分取のHICで公表されている例は、実験室の規模です。
Fc領域抗体の定常部にあたる「足」の部分。FcγRや補体、FcRnと相互作用し、機能や血中半減期を担う。詳しく →のリシンを選んで結合させた材料を、2 mol/Lの塩化ナトリウムでフェニル基の担体に捕捉し、イソプロパノールを加えた緩衝液溶液のpHを一定範囲に保つために使用される弱酸と共役塩基の混合溶液。詳しく →で溶出した報告では、12〜50 mgの3水準で回収率添加した既知量の標準物質に対して試験で実際に測定された値の割合を示す指標で、試験の正確さを表す。詳しく →と分離が再現し、回収率は60%を超えました。
代償も同じ報告が挙げています。塩化ナトリウムや硫酸アンモニウムのような塩は、製造施設では廃液の問題になりうるうえ、ADCの凝集と析出を招くおそれがあります。硫酸アンモニウムを使うと回収が落ちました。
分離能と回収は、担体の選び方で両立しにくくなります。別の報告では、粒子径35 µm以下の担体でなければ薬物の数ごとに分かれず、疎水性が強く出る条件ほど保持が強くなって回収は下がりました。
粒子の大きい担体を使うときは、段階的な勾配にして低・中・高の3つの群に分けています。
取り出せる量の上限も、反応の分布から決まります。3節で見たように、ちょうど目標の数だけ付いた分子が半分に満たない反応なら、そこだけを採る工程では、抗体の半分以上を捨てます。
ばらつきの要因は、担体の側にもあります。機構モデルを作った報告は、HICの分離が温度、担体の性質、カラムの中の担体と液の比で動くとしたうえで、担体ごとの疎水的な容量の管理が、DARの分離のばらつきを抑えると述べています。
この工程はペイロード抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →を扱うため、封じ込めた設備の中で回します(封じ込め)。
承認品の工程で薬物の数ごとに分けているかどうかは、編集部が確認した審査報告書からは分かりません。結合させたあとに精製するとしか書かれていないためです。
担体のメーカーや受託先に聞くべきは、「DARごとに分けられるか」ではありません。「その規模で、担体のロットを変えたときに、回収と凝集がどれだけ動いたか」です。分けられること自体は、実験室の規模で確かめられています。
6. 品質管理の限界 ― 規格・特性解析・工程管理の分担
ICH Q6B生物薬品の規格・試験方法の設定の考え方を示すICHガイドライン。力価などの規格を扱う。詳しく →は、適用範囲にコンジュゲートを含めています(1.3)。
同じ文書の 2.1.1 は、タンパク質には生合成に由来する不均一さがあるとしたうえで、目的物の不均一さの型を定義し、非臨床と臨床で使ったロットと一致することを示すよう求めています。一定の型が示されれば、個々の形について活性・有効性・安全性を評価することは必ずしも必要ではないとも書いています(ICH Q6B)。
3章は、規格が製造工程に結びつくものだとしています。工程の変更や保存によって不均一さの型が臨床の材料と変わりうるため、その違いの意味を評価するよう求めています。
Q6Bは、具体的な試験法も判定基準も推奨しないと最初に断っています(1.3)。
承認品の規格では、この線引きが見えます。ブレンツキシマブ ベドチンの製剤の規格には、試験法としてHICが入っています。トラスツズマブ デルクステカンの原薬の出荷規格はキャピラリーゾーン電気泳動やサイズ排除分子の大きさの差で分けるクロマトグラフィー。詳しく →HPLCイオン対試薬を使い疎水性の差で分ける液体クロマト。一本鎖と二本鎖RNAの分離やdsRNA除去に使われます。詳しく →などで、平均DAR 7.8は特性解析の側に書かれています。
判定の数値そのものは、どちらも公表されていません。
未結合体の扱いも、規格の側にあります。ゲムツズマブ オゾガマイシンの添付文書は、結合した抗体と結合していない抗体の混合物であり、カリケアマイシン誘導体の数は主に0から6、平均2から3だと書いています。審査報告書は、未結合の抗体と未結合のカリケアマイシンが管理の対象だとしています。
位置の組み合わせは、出荷規格の個別の項目にするとは限りません。特性解析と工程管理で不均一さの型の一貫性を示す方法があり、製品によっては位置の評価を規格に組み込むこともできます。
7. いちばん効いているのはどこか
位置異性体を製造後に選んで取り出したいとき、支配的な層は3つ目の精製・回収です。
理由は3つあります。
- 分離の選択性が足りない:位置異性体は薬物の数が同じで、疎水性の差が小さく残るだけです。HICでも別の原理でも位置に対する選択性は出ますが、ここで引いた報告では、製造の規模で高い純度に分けるところまでは届いていません。
- 分けられる単位でも代償が大きい:薬物の数で分ける分取でさえ、塩と有機溶媒、収率、凝集、封じ込めが付いてきます。目標の数の分子が半分に満たない反応なら、取り出せる量の上限もそこで決まります。
- 管理が反応の側に戻る:位置を決めるのは反応の条件ですが、当量をそろえても、還元の時間だけで位置の割合は動きました。
測ることはできます。品質管理も、型が一定であることとして受け取ります。抜けているのは、読めたものを製品の側で選び直す工程です。
位置異性体を製造後に選んで取り出したいとき、ボトルネックは分析ではなく、分けるための物性の差が小さいことです。位置の分布を一定に保つことが目的なら、管理の中心は反応の層に移ります。
8. 解決の方向と、代わりに増える課題
方向は、分けるのをやめて、位置を反応で決めることです。
部位特異的コンジュゲーションは、改変システイン、非天然アミノ酸、酵素、糖鎖の4系統に分かれます(部位特異的コンジュゲーション)。
外れるのは、精製・回収の層です。アルデヒドを使う部位特異的なADCをネイティブ質量分析で見た報告では、薬物4個の分子が主で、3個の分子は全体の1割に満たず、薬物の付いていない重鎖は検出されませんでした。
IdeS(抗体をヒンジで切る酵素)で切ってから測れば、薬物がFc側の断片とFd側の断片に1つずつ付いていることまで確かめられます。
代わりに、課題は前後に移ります。
- 上流に移る:改変システインを使う方式では、抗体の遺伝子と細胞株を作り直します(工程のつなぎ目)。
- 反応の段が増える:改変したシステインは培養の間に保護された形で出てくるため、還元と再酸化が結合反応の前に入ります。
- 分取が消えるとは限らない:Fc領域のリシンを選ぶ方式でも、薬物1個と2個の分子が混ざるため、分取のHICで分けています。
- 別の軸が動く:結合する位置は安定性と薬物動態に影響し、その差は動物種によっても変わりました。
部位特異的な方式は精製・回収の層の限界を外しますが、課題を細胞株と反応の前後に移します。
9. 次に確かめること
自分の対象では、次の順に決めます。
- 規格に何を置くかを決める:平均DAR、分布、未結合体の上限のどこまでを書くかを、分析法を組む前に決めます。
- 位置を読む方法を決める:非還元のCE-SDS、非還元のペプチドマッピング、ネイティブ質量分析のどれで読むかを決め、特性解析に置くか工程の管理に置くかを分けます。
- 反応の管理範囲に時間を入れる:還元剤の当量だけでなく、還元の時間と温度を管理の範囲に入れ、その範囲で位置の割合が動かないことを確かめます。
- 分けるかどうかを決める:分取で薬物の数を切り分けるなら、収率、廃液、凝集、封じ込めの代償を先に見積もります。
課題ごとの行き先は、次のとおりです。
| 課題 | 関連する技術 | 行き先 |
|---|---|---|
| 平均DARと分布を測る | HIC、インタクト質量分析 | DARの分析 |
| 結合位置の組み合わせを読む | 非還元CE-SDS、ネイティブ質量分析 | CE-SDS、LC-MS |
| 薬物の数ごとに分取で分ける | 分取HIC、担体と塩と勾配の選択 | HIC樹脂 |
| 還元の当量と時間を決める | 還元剤、クエンチ | ADC還元剤 |
| 位置を反応で決める | 部位特異的コンジュゲーション | 部位特異的結合の試薬 |
| 封じ込めた工程で委託する | 高薬理活性原薬の取り扱い | ADC・バイオコンジュゲートの受託 |
工程を変えたときに何を比べるかは同等性評価(ICH Q5E)に、凝集の見方は凝集体をどの分析で見るかにまとめています。
参考文献
- van den Berg EBA, Hendriks JCW, Elsinga EW, Eggink M, Dirksen EHC. Switching positions: Assessing the dynamics of conjugational heterogeneity in antibody-drug conjugates using CE-SDS. Electrophoresis. 2023;44(1-2):62-71. doi:10.1002/elps.202200140(還元時間を変えてもHICで見た平均DARと薬物数ごとの割合が変わらないこと、非還元CE-SDSで薬物4個の分子の構成が入れ替わったこと(本文の4つの割合)、位置異性体は疎水性が近くHICでの分離が難しいこと、Fab側からヒンジ側への移動とチオール・ジスルフィド交換の機構、還元剤が反応の初期に消費されていたこと)
- Sun MMC, Beam KS, Cerveny CG, et al. Reduction-alkylation strategies for the modification of specific monoclonal antibody disulfides. Bioconjug Chem. 2005;16(5):1282-1290. doi:10.1021/bc050201y(部分還元と再酸化で薬物4個の分子が占める割合、方法によって多数を占める位置異性体が入れ替わること、還元がランダムではないこと、分取HICで薬物2個・4個・6個を薬物数についてほぼ単一に取り出したときの純度、ヒンジの2本のジスルフィドのどちらが残っているかは区別できないこと)
- Chen L, Wang L, Shion H, et al. In-depth structural characterization of Kadcyla (ado-trastuzumab emtansine) and its biosimilar candidate. MAbs. 2016;8(7):1210-1223. doi:10.1080/19420862.2016.1204502(脱糖鎖したインタクト質量分析で薬物0個から8個までのピークと2品の平均DAR、結合しうる92か所のうち82か所が部分的に結合、可変部のリシンも部分的に結合、部位ごとの結合率を平均DARに直接結びつける方法がないこと、軽鎖定常部とCH1での差、細胞傷害性と抗原結合に差が出なかったこと、血漿中安定性と薬物動態は評価していないこと)
- Zhang Z, Zhou S, Han L, et al. Impact of linker-drug on ion exchange chromatography separation of antibody-drug conjugates. MAbs. 2019;11(6):1113-1121. doi:10.1080/19420862.2019.1628589(弱陽イオン交換が位置異性体に選択性を示す一方で薬物数に対する分離能は限られること、HICで取り出した薬物4個の材料の画分ごとに多数を占める位置異性体が違ったこと、一方の酸性成分がもう一方の主ピークと重なりうること)
- Matsuda Y, Leung M, Okuzumi T, Mendelsohn B. A Purification Strategy Utilizing Hydrophobic Interaction Chromatography to Obtain Homogeneous Species from a Site-Specific Antibody Drug Conjugate. Antibodies. 2020;9(2):16. doi:10.3390/antib9020016(3水準の仕込み量で再現したこと、回収率、2 mol/Lの塩化ナトリウムとイソプロパノールを使う移動相、硫酸アンモニウムで回収が落ちたこと、塩の廃液と凝集・析出の懸念、部位特異的でも薬物1個と2個が混ざるため分取で分けたこと)
- Müller E, Sevilla M, Endres P. Evaluation of hydrophobic-interaction chromatography resins for purification of antibody-drug conjugates using a mimetic model with adjustable hydrophobicity. J Sep Sci. 2020;43(12):2255-2263. doi:10.1002/jssc.201900895(担体の粒子径と分離の関係、回収がpHで動くこと、大きい粒子の担体では段階的な勾配で低・中・高の3つの群に分けたこと)
- Botzanowski T, Erb S, Hernandez-Alba O, et al. Insights from native mass spectrometry approaches for top- and middle-level characterization of site-specific antibody-drug conjugates. MAbs. 2017;9(5):801-811. doi:10.1080/19420862.2017.1316914(サイズ排除クロマトグラフィーにつないだネイティブ質量分析で薬物数ごとのプロファイル・平均DAR・未結合の抗体をまとめて読めること、部位特異的なADCでは薬物3個の分子が少なく未結合の重鎖が検出されなかったこと、IdeS消化でFc側とFd側に1つずつ結合していることを確かめたこと)
- Hahn T, Lyu F, Graf P, et al. Model-based analysis of a hydrophobic interaction chromatography for antibody-drug conjugate purification. J Chromatogr A. 2025;1750:465916. doi:10.1016/j.chroma.2025.465916(HICの分離が温度・担体の性質・カラムの固液比に感度を持つこと、担体ごとの疎水的な容量の管理がDAR分離のばらつきを抑えること。本文で引いたのは要旨の記載)
- Strop P, Liu SH, Dorywalska M, et al. Location matters: site of conjugation modulates stability and pharmacokinetics of antibody drug conjugates. Chem Biol. 2013;20(2):161-167. doi:10.1016/j.chembiol.2013.01.010(結合する位置が安定性と薬物動態に影響し、その差が動物種によって変わること。本文で引いたのは要旨の記載)
- ICH, Q6B Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products(1.3 の適用範囲にコンジュゲートを含むこと、具体的な試験法と判定基準は推奨しないこと、2.1.1 の不均一さの型の定義と非臨床・臨床ロットとの一致、3章の規格と製造工程の結びつき)
- European Medicines Agency, Adcetris: EPAR - Public assessment report(鎖間ジスルフィドのうち平均2本を還元して結合させること、軽鎖に1か所・重鎖に3か所の結合点があり最大8か所になること、製剤の規格の試験法にHICが入っていること)
- European Medicines Agency, Enhertu: EPAR - Public assessment report(平均DARを逆相HPLCとHICで求めたこと、原薬の出荷規格の試験項目)
- European Medicines Agency, Mylotarg: EPAR - Public assessment report(未結合のゲムツズマブと未結合のカリケアマイシンが管理の対象であること)
- DailyMed, MYLOTARG (gemtuzumab ozogamicin) 添付文書(結合した抗体と結合していない抗体の混合物であること、カリケアマイシン誘導体の数の範囲と平均)
- DailyMed, KADCYLA (ado-trastuzumab emtansine) 添付文書(リシンに結合させたADCで、抗体あたりに結合したDM1の平均の数)
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