DAC(分解誘導薬を載せた抗体)とは?ADCから変わる製造と分析
ADCの薬物をPROTACや分子糊に替えた複合体を作りたい。そう頼まれたとき、手元のADCの設備と分析は、どこまでそのまま使えるのでしょうか。DAR抗体薬物複合体(ADC)で、抗体1分子に結合した薬物の平均数です。効果と安全性を左右するため測定する指標です。詳しく →を測り、凝集を見て、遊離の薬物を測る。この三つの試験は残ります。変わるのは、それぞれの数字が何を意味するかです。

核心は一点です。ADCの薬物は細胞を殺し、分解誘導薬を載せたDAC(degrader-antibody conjugate)の薬物は、標的のタンパク質を消します。殺したかどうかは細胞の生死で測れましたが、消したかどうかは標的の量でしか測れません。しかも、DM1抗体薬物複合体(ADC)で抗体に結合させる強力な細胞毒(薬物)です。抗体によって標的の細胞まで運ばれ、そこで細胞を殺す作用を担います。詳しく →の分子量が738なのに対し、BET分解薬のGNE-987は供給元の表示でおよそ1,100あります。大きく疎水的になりやすい薬物は、抗体に載せる段階から凝集の余裕が小さい。作り方と測り方の両方に、ADC標的を選ぶ抗体に、細胞傷害性の薬物(ペイロード)をリンカーでつないだ分子。詳しく →の経験をそのまま持ち込めない箇所があります。
この記事が答えるのは、その一つの疑問です。臨床の現在地は、判断に要る分だけ先に置きます。DACを臨床まで運んだOrum Therapeuticsの2本は、ORM-5029が2025年に試験を打ち切られ、ORM-6151は2026年9月にBMSが開発を中止したと報じられています。
DACとMAC ― 標的を消すしくみと載せる薬の二種類
DACは、抗体にタンパク質分解誘導薬を載せた複合体です。ADCで毒素が座っていた席に、標的を消す薬が座ります。
分解誘導薬は二種類に分かれます。一つはPROTAC(proteolysis targeting chimera)で、標的に結合する部分とE3ユビキチンリガーゼに結合する部分を、リンカーADCで抗体とペイロードをつなぐ部分。両者の結合や体内での薬物放出の性質を左右する。詳しく →でつないだ分子です。もう一つは分子糊(molecular glue)で、E3リガーゼと標的を直接くっつける一価の小分子です。どちらも、細胞が持つユビキチン・プロテアソーム系に標的を引き渡し、壊させます。分子糊を載せた複合体は、MAC(molecular glue-antibody conjugate)とも呼ばれます。
働き方は毒素と違います。毒素は標的に結合して働くので、薬1分子が相手にできるのは標的1分子です。分解誘導薬は標的を分解系に渡すと自分は外れ、次の標的に向かえます。この触媒的な性質が治療域を広げうると、2025年の総説(Taoら)は論じています。
もう一つ、DACには標的が二つあります。抗体が狙う細胞表面の抗原と、薬が消す細胞内のタンパク質です。Maneiroらが作ったtrastuzumab(抗HER2抗体)とBRD4分解PROTACの複合体では、BRD4の分解がHER2陽性の乳がん細胞でだけ起き、陰性の細胞では起きませんでした。抗体が細胞を選び、薬が標的を選ぶ二段構えです。

抗体に載せる理由も、毒素とは違います。Genentechの研究者らは、BET製品中のエンドトキシンを検出・定量するバクテリアエンドトキシン試験の総称。詳しく →分解薬のGNE-987が、そのままでは生体内で十分な曝露を得られなかったと述べています。抗CLL1抗体に新しいリンカーでつなぐと、1回の静脈内投与で曝露が持続し、抗原に特異的な腫瘍の退縮が得られました(Pillowら、ChemMedChem 2020)。
抗体は薬を細胞へ運ぶだけではありません。単独では体内に留まりにくい分解誘導薬の、持ち運びの器も兼ねています。
臨床の現在地 ― Orumの2本が止まった経緯
DACを臨床へ運んだ例として知られるのは、韓国のOrum Therapeuticsです。その2本は、どちらも止まっています。
1本目のORM-5029は、ペルツズマブにバリン・シトルリンのリンカーで、GSPT1分解薬のSMol006をつないだ抗HER2のDACです(米国立がん研究所の薬剤辞典)。GSPT1は、消えると細胞が死ぬタンパク質です。HER2を発現する進行固形がんの第1相試験(NCT05511844)で、2022年10月に最初の患者へ投与しました。Orumは2024年11月に参加者の死亡を報告して新規の登録を止め、2025年4月に米国での試験の中止を発表しました(BioWorldと韓国メディア細胞を体外で生存・増殖させるために必要な栄養・エネルギー源・成長因子などを含む液体または固体の環境基盤。詳しく →の報道)。同社は、問題はこの分子に限られ、プラットフォームの技術に問題はないと説明しています。ClinicalTrials.govには、スポンサーの判断で終了し、完了日は2025年6月2日と登録されています。
2本目のORM-6151は、抗CD33抗体に分子糊型のGSPT1分解薬を載せたDACです。2023年11月にBristol Myers Squibb(BMS)がプログラムごと買い取りました。前払いは1億ドル、マイルストンを含めると最大1.8億ドルです。BMSはBMS-986497の名で、再発または難治の急性骨髄性白血病(AML)と骨髄異形成症候群(MDS)に第1相試験(NCT06419634)を進めていました。
Orumの開示を引いた韓国メディアの報道によると、BMSは2026年9月16日、第1相のデータを検討したうえで開発を中止し、残る8,000万ドルのマイルストンの支払い義務が消えたことをOrumに通知しました。前払いの1億ドルは返す必要がありません。報道の範囲では、BMSは中止の理由を説明していません。試験登録(NCT06419634)は「終了」となり、理由欄には「プロトコルの目的を満たせなかった」とだけ書かれています。
ここから製造の失敗を読み取ってはいけません。理由が一行しか示されていない以上、有効性、安全性、製造のどこに原因があったのかは、外からは分かりません。確かなのは、臨床の蓄積が薄いことです。Taoらの総説は、2025年の時点で臨床に入ったMACを2つと数えています。編集部が確認した範囲では、承認されたDACはありません。
DACは、臨床で価値が確かめられた方式ではありません。製造と分析の設計にも、答えの揃っていない問いが残っています。
ProgLoopで調べるこの製品・工程、ProgLoopで実務者に聞く関連製品や他社の使用経験とあわせて引けます。迷えば、そのまま質問も投げられます。ProgLoopで調べる結合の難しさ ― 大きさ、疎水性、結合点
ADCの毒素は分子が比較的小さく、リンカーをつなぐ位置の探索にも長い蓄積があります。分解誘導薬は、そのどちらも事情が違います。
PROTACは、標的に結合する部分、E3リガーゼに結合する部分、その間のリンカーを一つの分子に収めます。最初から荷物が大きいのです。GNE-987の分子量は、供給元の表示のほとんどが1,096で、1,083とするものも一つあります。化学式(C56H67F2N9O8S2)から計算しても約1,096で、DM1の738のおよそ1.5倍です。Genentechの研究者らがJ Med Chem 2021に書いたとおり、こうしたキメラ分解薬は比較的大きく、溶解性や体内動態を損ないやすい分子の特徴を持ちます。
大きさに疎水性分子が水と親和せず、油脂や非極性溶媒と相互作用しやすい性質で、二本鎖RNAと一本鎖RNAではその程度が異なり分離の指標となる。詳しく →が重なると、凝集の問題が前に出ます。疎水性の高い薬物を載せるほど、抗体どうしが会合しやすくなり、血中からも速く消えます。ADCではこの関係が2004年に実測されていて、DAR 8の複合体はDAR 4の3倍の速さで消えました(ADCのコンジュゲーションとDAR)。
結合点の問題は、DACでいっそう重くなります。毒素なら、活性を落とさない位置を探してリンカーをつなげば足ります。PROTACは両端が相手と結合して初めて働くので、どこにつないでも二つの結合のどちらかを邪魔しうると考えられます。Genentechの研究者らがJ Med Chem 2021の第1報で、抗体、リンカー、搭載数、ペイロードの分子性状を変数として振ったのは、このためと読めます。第2報では、BRD4に結合する部分をより強い断片に替えたペイロードで、抗原依存的な分解とマウスでの抗腫瘍効果を示しました。既存の分解薬をそのまま載せず、載せる前提で薬の側を作り直しています。
もう一つ、細胞の中で放出される姿があります。リンカーが切れたあとに薬へ断片が残り、その断片が結合を妨げるなら、抗体にどれほど効率よくつないでも分解は起きません。Maneiroらは、細胞に取り込まれてリンカーが切れたあとに、PROTACの活性が戻る設計にしました。ORM-5029が使うバリン・シトルリンは、ADCで使い込まれた切断部位です。切断の部位はADCの資産が使え、放出後の姿の確認がDACで加わる仕事です。
結合の位置と数を揃える手法は、DACでも使われています(部位特異的コンジュゲーション)。Maneiroらは、ジスルフィドを再架橋したtrastuzumabに、アジド基を持つPROTACをクリック反応で結合し、抗体1分子あたり4個の複合体を得ました。4個ついた質量になることは、質量分析分子の質量を精密に測る手法。鎖の組み合わせ違いを分子量差として捉え純度評価に使う。詳しく →で確かめています。
DACで先に決めるのは、DARより、放出された薬が活性を保つ結合点です。DARはそのあとに決まります。
凝集とDAR ― 低く置く理由と、決まらない目標
ADCでは、DARを上げるほど凝集と早い消失が進みます。DACでは、この上限を低く置く案が出ています。
Prelude TherapeuticsはAACR 2026の教育セッションの資料で、分解誘導薬ペイロードの利点として高い力価と低いDARを挙げています。企業の資料なので割り引く必要がありますが、筋は通っています。触媒的に働く薬なら、少ない数で足りるかもしれません。
低いDARには代償があります。同じモル数の薬物を届けたいなら、DAR 2はDAR 4の2倍の抗体が要ります。抗体の製造量が、そのまま2倍です。DARを上げて凝集を許すか、DARを下げて抗体を増やすか。公開されたDACのデータでは、まだ答えを出せる数が揃っていません。
凝集を抑える手は、リンカー側にもあります。エキサテカンでは、リンカーの設計でDAR 8の凝集を抑えたとする2026年の報告があります(エキサテカン系ADCの凝集、リンカー設計でどう抑えたか)。分解誘導薬で同じ手が通じるかは、公開されていません。
反応後に疎水性の強いDAR種や凝集体を取り分けるなら、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)高塩条件で疎水性の違いを利用して結合・分離する方式。凝集体や疎水性の高い変性体を分ける。詳しく →を使います。Cytivaの Capto Butyl ImpRes は、疎水性の強い種をマイルドな条件で分取するとされます。Sartoriusの Sartobind Phenyl は膜型で、同社の表示では従来のレジンの5〜10倍の速さで凝集体タンパク質分子どうしが結合してできた高分子量の集合体です。有効性や免疫原性に影響するため、その含量を測ります。詳しく →を除けます。どちらもADCの用途で、DACでの使用実績は確認できませんでした。有機溶媒の比率は、水に溶けにくい薬物ほど上げたくなりますが、上げるほど抗体は変性しやすくなります。
DARの目標は、ADCの値を借りずに、実際の薬物で決めます。載せる数を一段上げるごとに、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)で見る高分子量種(HMW、凝集体)と、HICの分布を取り直します。決める前の測定が、後の手戻りを減らします。
目標のDARは、そのDARで凝集がどこまで出るかを実測してから置きます。ADCの値は、出発点にも上限にもなりません。
分析で変わるもの ― 力価の物差しと遊離薬物の許容量
DARを測るHICも、凝集を見るSECも、DACでそのまま使えます。遊離薬物を測るLC-MS/MS液体クロマトグラフィーと質量分析を組み合わせ、断片を一つずつ読んで配列や修飾部位を特定する手法。詳しく →の装置も同じです。変わるのは、力価試験細胞や生体分子に実際に作用させ、医薬品の生物活性(どれだけ効くか)を数値化する試験。詳しく →の物差しと、遊離薬物に許す量です。

DARの分布は、ADCと同じくHICで見ます。Tosoh Bioscienceの TSKgel Butyl-NPR(粒子径2.5 µmの非多孔性)は、トラスツズマブ系ADCのDAR 0〜8を分離できます。Watersの Protein-Pak Hi Res HIC も、同じ粒子径です。ただし、この実績は従来のADCの薬物で積まれたものです。保持が強いDACの薬物で同じ勾配が通るとは限りません。位置の違う異性体まで見るには、変性LC-MS液体クロマトグラフで成分を分離したうえで質量分析計にかけ、分子量を測って物質の同定や定量を行う手法です。詳しく →を足します(ADC品質評価に2D-LC+ネイティブMSを組み合わせる)。
力価試験は、考え方が変わります。ADCは、抗原陽性の細胞が死ぬ濃度(IC50対象の働きを半分に抑えるのに必要な薬物濃度で、値が小さいほど強く阻害する。hERG阻害の強さを表す。詳しく →)を測れば足りました。毒素の仕事は殺すことで、殺せたかどうかが効きだったからです。分解誘導薬の仕事は標的を消すことで、その目盛りは二つあります。標的が半分に減る濃度のDC50と、最大でどこまで減るかのDmaxです。GNE-987は、EOL-1細胞でDC50が0.03 nMと、供給元の資料に記載されています。
GSPT1のように、消すと細胞が死ぬ標的なら、生死を読む試験が分解の代わりを務めやすいと考えられます。そうでない標的では、増殖の抑制は分解の遠い結果にすぎません。GenentechがBRD4のDACで、分解と増殖抑制の両方を報告しているのも、同じ事情でしょう。ロット出荷にどちらを使うかを定めた公開規格は、確認できませんでした。
そのため、標的の量を読む試験を主に置き、細胞の生存を読む試験を並べるのが筋です。対照には抗原陰性の細胞を入れます。Maneiroらの結果のように、抗原の有無で分解が分かれることが、この薬の選択性の証拠だからです。結果は基準ロットとの相対力価検体の力価を標準品と比べて表す値。生物系の日間変動を比で打ち消せる。詳しく →で報告します(バイオアッセイ(力価試験)とは?)。PROTACには、濃度を上げすぎると分解が落ちるフック効果が知られています。DACで山型の曲線が出るかは公開データから分かりませんが、用量の範囲は広く取り、曲線が崩れたときの扱いを先に決めておきます。
遊離薬物は、抗体に守られていない薬そのものです。細胞の中で0.03 nMで効く分子が抗原のない細胞に入るなら、わずかな量でも無視できません。許容量は、毒性試験の担当と同じ席で決めます(ADCの非臨床安全性)。標準品力価の基準に定めた品。検体と同じアッセイで並べて測り、相対力価の基準にする。詳しく →の備えも違います。ADCの定番ペイロードには、MedChemExpressのMMAE標準品(純度製品にどれだけ目的物質だけが含まれ、不純物や変性体が少ないかを示す指標です。抗体では単量体の割合やサイズの異なる成分の量などを見ます。詳しく →99%超)や、重水素標識のMMAE-d8があります。分解誘導薬のペイロードに同じ品揃えがあることは、当サイトの製品データベースでは確認できませんでした。自社で合成し、規格を立てる前提で動くほうが安全です。
「細胞が死んだ」は、「標的が消えた」の証拠になりません。DACの力価は、標的の量と細胞の生存を並べて読み、抗原陰性の細胞を対照に置いたときに初めて、効きの原因が分解だったと言えます。
測る装置はADCと同じで、変わるのは基準の置き場所です。力価の物差しと遊離薬物の許容量は、自社の薬物で決めます。
細胞の外を消す別系統 ― LYTACとAbTAC
PROTACと分子糊が消せるのは、細胞の中のタンパク質です。細胞の表面や外にあるタンパク質を消す方法は、別に研究されています。
LYTAC(lysosome-targeting chimera)は、標的に結合する抗体などと、リソソーム細胞内で不要なタンパク質などを分解する小器官。取り込まれた抗体の多くが最終的にここへ運ばれる。詳しく →行きの受容体CI-M6PRに結合する糖ポリペプチドをつなぎます。標的は受容体と一緒に細胞へ取り込まれ、リソソームで分解されます。Banik、Bertozziらは2020年にNature誌で、セツキシマブにM6Pnという糖ポリペプチドをつなぐと、セツキシマブ単独よりEGFRを効率よく減らせたと報告しました。抗体に高分子をつなぐ複合体なので、DARに当たる結合数に加えて、高分子の長さの分布が品質の軸に加わると考えられます。
AbTAC(antibody-based PROTAC)は、低分子の薬を使いません。Cotton、Wellsらが2021年にJACS誌で報告したもので、PD-L1に結合する腕と、膜貫通型のE3リガーゼRNF43に結合する腕を持つ、組換えの二重特異性抗体2つの異なる標的に同時に結合する抗体。T細胞と標的細胞を橋渡しする用途などがある。詳しく →です。PD-L1がリソソームで分解されます。複合体ではないため、CMCの論点は薬物の結合ではなく、二重特異性二種類の異なる標的に同時に結合できるよう設計した抗体。詳しく →抗体で一般に問題になる、正しい組み合わせの取り分けが中心です。
臨床の状況は、DACよりさらに薄いと言えます。LYTACの事業化を進めるLycia Therapeuticsは、提出書類(Form DRS)に、IgEを標的とするLCA-0061の第1相試験を進めていると書いています。標的は細胞外の可溶性タンパク質です。膜タンパク質を消すLYTACやAbTACで、臨床データは確認できませんでした。
LYTACとAbTACはDACの代わりではなく、消す場所が違う別系統です。製造の論点もDARから、高分子の付加と二重特異性分析法において、共存する不純物・分解物・添加剤などが存在しても目的成分だけを正確に測定できる能力。詳しく →の取り分けに移ります。
DACの案件で確かめる順番
案件を受けるときも、委託先を選ぶときも、次の順に確かめます。上から順に決めると、手戻りが減ります。
最初に、ペイロードの正体を聞きます。PROTACか分子糊か、分子量はいくつか、水への溶解度はどのくらいか、リンカーが切れたあとに薬へ残る断片は何か。取り扱いの封じ込めの区分も、この時点で確かめます(ADCのペイロード・リンカー供給)。
次に、標準品と同位体標識の内標準を、誰がどの純度で用意するかを決めます。遊離薬物の定量も、DARの校正も、ここに乗ります。
そのうえで、結合の方式とDARの目標を置きます。低いDARから始め、載せる数を増やすたびに、SECの凝集体とHIC分子表面の疎水性の違いを利用して分けるクロマト担体で、高い塩濃度で吸着させ塩を下げて溶出させます。抗体の凝集体除去などに使われます。詳しく →の分布を取り直します。位置の違う異性体まで見るため、HICに加えて変性LC-MSを置きます。
その次が力価試験です。標的の量を読む試験と、細胞の生存を読む試験を並べ、抗原陰性の細胞を対照に入れます。用量の範囲は、曲線が山型になっても読み取れる広さにします。基準ロットを決めて、相対力価で報告します。
続いて、遊離薬物とその分解物の許容量を、毒性試験の結果と照らして決めます。抗原のない細胞に、遊離薬物がどの濃度から効くかを実測し、その値を根拠に使います。
最後に、保管中の変化を見ます。遊離薬物が増えないか、DARの分布が動かないか、凝集が進まないか。強制分解あえて過酷な条件をかけて分解を前倒しで進め、弱点や変化しやすい箇所を調べる試験。詳しく →で、薬物側の分解が抗体より先に出るかも確かめます。
この順番の外側に、投資の段取りがあります。BMSの中止のように、臨床の価値が確かめられる前に開発が止まる例がある以上、専用のGMPラインに大きく投じる理由はまだ多くありません。第1相向けの分析は、薬物の同一性、DAR、凝集、遊離薬物、力価の五つを、適格性確認(qualification)の水準で押さえます。バリデーション試験法が目的に合う性能を持つことを立証する妥当性確認。正確さ・精度などを評価する。詳しく →は、DARの目標と規格が固まってから進めます。規格の立て方はICH Q6B生物薬品の規格・試験方法の設定の考え方を示すICHガイドライン。力価などの規格を扱う。詳しく →、工程の考え方はICH Q11原薬の開発・製造を扱い、原薬側の管理戦略の作り込みを示すICHのガイドライン。詳しく →に沿います。
参考文献
- Tao et al. Molecular glue meets antibody: next-generation antibody-drug conjugates, Trends Pharmacol Sci. 2025;46:520-534
- Poudel, Thakore, Chekler. The New Frontier: Merging Molecular Glue Degrader and Antibody-Drug Conjugate Modalities To Overcome Strategic Challenges, J Med Chem. 2024(BMSの著者による、MACの総説)
- Maneiro et al. Antibody-PROTAC Conjugates Enable HER2-Dependent Targeted Protein Degradation of BRD4, ACS Chem Biol. 2020;15(6):1306-1312
- Pillow, Dragovich, et al. Antibody Conjugation of a Chimeric BET Degrader Enables in vivo生きた動物の体内で試験を行うこと。物質が吸収・代謝を受けた実際の状態での影響を見られる。詳しく → Activity, ChemMedChem. 2020. doi:10.1002/cmdc.201900497
- Dragovich PS, et al. Antibody-Mediated Delivery of Chimeric BRD4 Degraders. Part 1: Exploration of Antibody Linker, Payload Loading, and Payload Molecular Properties, J Med Chem. 2021. doi:10.1021/acs.jmedchem.0c01845(第2報は J Med Chem. 2021;64:2576-2607)
- Dragovich PS. Degrader-antibody conjugates, Chem Soc Rev. 2022;51:3886-3897. doi:10.1039/D2CS00141A
- National Cancer Institute, anti-HER2 GSPT1 degrader ORM-5029(NCI薬剤辞典)
- ClinicalTrials.gov, Study of ORM-5029 in Subjects With HER2-Expressing Advanced Solid Tumors(NCT05511844)
- ClinicalTrials.gov, Study of BMS-986497 (ORM-6151) as a Monotherapy, in Double and Triple Combination With Azacitidine and Venetoclax in Participants With Relapsed or Refractory AML or MDS(NCT06419634)
- Orum Therapeutics, Orum Therapeutics Announces Acquisition of ORM-6151 Program by Bristol Myers Squibb(2023年11月、前払い1億ドル・総額1.8億ドル)
- Orum Therapeutics, Orum Therapeutics Announces First Patient Dosed in Phase 1 Clinical Trial of ORM 5029(2022年10月)
- BioWorld, Orum halts US study of DAC cancer asset after patient death(2025年4月。同月の韓国報道はBizwatch)
- SBS Biz, 오름테라퓨틱 "BMS에 기술이전한 후보물질 개발 중단"(2026年9月。Orumの開示を伝える韓国の報道。同日付のBizwatchも同趣旨)
- Prelude Therapeutics, AACR 2026 Education Session(企業資料)
- MedChemExpress, GNE-987(DC50の記載は供給元の資料。分子量はSelleckが1,096、InvivoChemが1,083の表示)
- MedKoo, Mertansine(DM1)データシート
- Banik et al. Lysosome-targeting chimaeras for degradation of extracellular proteins, Nature. 2020;584:291-297(プレプリントはChemRxiv)
- Cotton et al. Development of Antibody-Based PROTACs for the Degradation of the Cell-Surface Immune Checkpoint Protein PD-L1, J Am Chem Soc. 2021;143:593-598
- Lycia Therapeutics, Form DRS(SEC提出書類)
- ICH医薬品規制の国際調和を目的として、日米欧の規制当局と製薬業界が参加する国際的なガイドライン策定機関。詳しく → Q6B, Specifications: Test Procedures and Acceptance Criteria for Biotechnological/Biological Products
- ICH Q1医薬品の安定性試験の実施条件(長期・加速・過酷)および保管条件の設定方法を規定した国際ガイドライン群。詳しく →1, Development and Manufacture of Drug Substances
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Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/degrader-antibody-conjugate-dac