Pellicon 3 は、タンジェンシャルフローろ過(TFF)の平膜カセットです。液を膜の面に沿って流し、通ったぶんだけ横へ抜くので、行き止まりのろ過より長く回せます。抗体の濃縮とバッファ交換では、この形がいまも標準の位置にあります。
見どころは膜そのものより、型番の読み方にあります。10桁の型番が、膜の種類、MWCO、スクリーン、膜面積の4つをそのまま表しています。
型番の10桁が何を言っているか
P3C030C10 を例にします。
先頭の P3 が Pellicon 3。次の1文字が膜で、C なら再生セルロースの Ultracel、B なら PES の Biomax です。続く3桁が MWCO で、030 なら 30 kDa。その次の1文字がスクリーンで、A・C・D の3種。最後の2桁が面積コードで、00 が 88 cm²、01 が 0.11 m²、05 が 0.57 m²、10 が 1.14 m² を指します。
つまり P3C030C10 は、再生セルロースの 30 kDa 膜、C スクリーン、1.14 m² という意味です。手元のカセットの型番を読めば、装置の記録を見に行かなくても仕様が分かります。
スクリーンは流路の話であって、膜の話ではない
A・C・D の違いは、膜と膜のあいだに挟むメッシュの粗さです。粗いほど流路が開いて圧力損失が小さくなり、細かいほど液がかき混ぜられて膜の表面に層が積もりにくくなります。
粘度の高い液や、濃縮が進んだ終盤では、細かいスクリーンが詰まりの原因になります。逆に、薄い液を速く回したい場面では、粗いスクリーンだと膜の表面が洗われず、流束が落ちます。同じ MWCO・同じ面積でもスクリーンが違えば別の挙動になるので、スケールアップのときはここを揃えます。
運転の上限は、条件とセットでしか意味がない
メーカーが公表している上限は、膜の内と外の圧力差(TMP)で 5.5 bar(80 psig)です。ただしこれは 30 ℃ のときの値で、4〜50 ℃ の範囲まで広げると 2.8 bar(40 psi)に落ちます。入口と出口の圧力差(ΔP)の上限は 1.4 bar(20 psid)。
温度を上げれば粘度が下がって流れやすくなりますが、そのぶん耐えられる圧力は下がります。「何 bar まで」という数字だけを控えても、何℃での話かが抜けると使えません。
導入で確認したいこと
- 面積コードの刻み(88 cm² → 0.11 → 0.57 → 1.14 m²)が、開発から商用までのスケール比に合うか
- スクリーンを開発時と商用時で揃えられるか(型番の5文字目)
- 再生セルロース(Ultracel)と PES(Biomax)のどちらで走るか。吸着を避けたいなら前者、耐薬品性と流量を採るなら後者
- マルチユースなので、洗浄と保管、そして完全性試験の手順を誰が持つか
同じホルダーで Biomax に差し替えられるので、膜の化学を後から変える余地は残ります。ただし MWCO の呼び値が同じでも透過の挙動は変わるので、入れ替えは再評価とセットになります。
※ 本ページは公開情報をもとにした紹介です。仕様・型番体系の詳細は公式情報をご確認ください。