ゼリア新薬工業は10月26日、スイス子会社のTillotts PharmaがAenova Holdingからドイツの製造会社Haupt Pharma Wülfling(HPW)の全持分を取得する契約を結んだと発表しました。持分譲渡契約の締結日は2026年10月23日(スイス時間)で、取得する持分は100%、取得前の持分は0%です。HPWは長年にわたりTillottsの炎症性腸疾患(IBD)治療剤「アサコール」製造の大部分を担ってきた戦略的な製造拠点で、取得を実行すると、ゼリア新薬から見てHPWは孫会社に当たります。ゼリア新薬は、Tillottsが全持分を取得して同拠点での製造を内製化すると説明しています。持分譲渡の実行は2027年1月以降の予定で、関係当局からの承認取得を含むクロージング条件が満たされることが条件です。
同じ拠点で作り続け、製造能力と生産計画を決める側が変わる
この取得で動くのは、製造する場所ではなく、その拠点の製造能力・生産計画・品質管理を誰が決めるかです。ゼリア新薬は、HPWの全持分を取得して同拠点の製造を内製化することで、Tillottsの医薬品製造基盤が大幅に拡充され、製造能力、生産計画、品質管理をより直接的かつ機動的にコントロールできるようになると説明しています。これにより、長期的な製品の安定供給体制がさらに強固になるとしています。
一般に、外の会社に委託を続ける形では、生産量を増やすときも設備に手を入れるときも、相手の計画との調整が要ります。拠点を持分ごと引き継げば、その判断はグループ内で決まります。
HPWが持っているのは、アサコールを作る能力だけではありません。発表文は、HPWが固形製剤の開発・製造・包装や治験薬の取り扱いで高度な専門知識を持つとし、長年の経験を積んだ従業員をグループに迎え入れることがTillottsの自社製造能力の維持・発展に不可欠で、今後のポートフォリオ拡充に向けた柔軟な製造ニーズにも対応できるようになるとしています。Tillottsは消化器系疾患を対象とするスペシャリティ・ファーマで、アサコールをはじめとする医療用医薬品を世界約65カ国で展開しています。
HPWはドイツのGronauに所在し、1996年9月24日設立、資本金500万ユーロの医薬品製造会社です。売上高は2023年12月期が51,007千ユーロ、2024年12月期が47,828千ユーロ、2025年12月期が41,062千ユーロで、3期で2割ほど減りました。営業利益等の金額は公表を控えるとしており、その金額は適時開示上の軽微基準内としています。
実行は2027年1月以降、当局の承認を含む条件が残る
契約は結ばれましたが、持分譲渡の実行は2027年1月以降の予定です。関係当局からの承認取得を含む一般的な前提条件が満たされることが条件です。ゼリア新薬は、今期と来期以降の連結業績への影響を精査中で、開示すべき事項が生じた場合に速やかに知らせるとしています。
持分を買う形では、拠点を運営する会社(HPW)はそのまま残り、その持分を持つ親会社が替わります。同じ拠点で製造を続ける前提では、工程を別の工場へ移す技術移転とは確かめ直す範囲が違います。一方で、承認書の記載に触れる変更に当たるかどうかは品目ごとに変更管理の中で判断され、国ごとの手続きを伴うことがあります。製造所の持ち主が替わる場面で何が移り何が残るかは、拠点ごと従業員が移るのか、工程だけを別の工場へ移すのかで変わります。
譲渡元のAenovaは、ドイツのStarnbergに本社を置く医薬品の開発製造受託の会社です。
固形製剤と治験薬の扱いまで含めて拠点ごと引き継ぐ形からは、アサコールの供給を確保するだけでなく、開発段階の品目を自社で作れる幅を広げる狙いがうかがえます。
現時点で分かっているのは、長年アサコール製造の大部分を担ってきた拠点を持分ごと引き継ぎ、製造能力と生産計画、品質管理の決定を自社側に移す契約が結ばれたところまでです。次に確かめられるのは、2027年1月以降に予定される実行と、関係当局からの承認を含むクロージング条件が満たされるかどうかです。
※ 本ページは2026年10月26日のゼリア新薬工業の発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。