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核酸医薬応用・製造工程シリーズ抗体で薬を届ける新しい形7/7実務

標的化LNPの抗体は1粒子に何本載せればよいのか

Proglenth 編集部公開 2026-10-29更新 2026-10-29約5分で読めます
標的化LNPの抗体は1粒子に何本載せればよいのか

核酸を包んだ脂質ナノ粒子(LNP)mRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。の表面に抗体を結合させた標的化LNPmRNAなどを包んで細胞へ届ける脂質の微粒子。全身投与では肝細胞に取り込まれやすい。では、粒子1個あたりに何本の抗体が載るかを、処方を決めた時点では決められません。抗体と脂質を反応させ、結合しなかった抗体を除いたあとに測って、初めて分かる値です。

ただし、測って出た本数は、多ければよいものではありません。多すぎると肝臓に捕まり、少なすぎると標的に効かないため、上限と下限の両方で挟んで規格にします。⁠

この記事では、なぜ本数が先に決まらないのか、多すぎ・少なすぎで何が起きるのか、規格をどう置き、何から決めるのかを順に説明します。

この記事の要点
  • なぜ本数を先に決められないのか⁠:抗体と結びつく反応基のうち、生きて残っている割合が工程で変わるためです。
  • 何本載せればよいのか⁠:多すぎると肝臓に捕まり、少なすぎると標的に効きません。
  • 規格はどう置くのか⁠:本数を上限と下限で挟み、遊離抗体の割合と結合活性を添えます。

この記事の前提

初めての方は、先にこちらを読むと、この記事に出てくる言葉の意味が分かります。

  • 標的化LNPとは?なぜ抗体を付けると届け先が変わるのか標的化LNP・抗体を付ける理由約5分
  • mRNA-LNPの製造工程とは?IVTから脂質ナノ粒子・無菌充填までLNPの製造工程約5分

1. なぜ、1粒子あたりの本数は作る前に決まらないのか

処方に入れた反応基の数ではなく、反応のときに生きて残っていた反応基の数で、載る本数が決まるからです。

粒子の表面には、抗体と結びつく反応基を付けたPEG脂質LNP表面を覆い、安定性や体内動態を調整する脂質。詳しく →(粒子の表面を覆うポリエチレングリコールの脂質)を混ぜておきます。入れた脂質の量は分かっていても、そのうち何本が抗体とつながるかは、反応が終わるまで分かりません。

たとえば、粒子1個あたり6本を狙って抗体を仕込み、精製後に測ると4本だった、という形で出ます(数字は説明用の仮の値です)。仕込んだ抗体のうち何割が結合したかは抗体結合率と呼び、結合工程の出来ばえを見る値として使います。製品の規格に置くのは、精製後に測った本数です。

歩留まりが読めない理由は、反応基の側にあります。よく使うマレイミドチオール基と選択的に結合する反応基。システイン結合型ADCで薬物リンカー側に用いられる。詳しく →(抗体のイオウを含む基と結びつく反応基)は、水の中で分解し、抗体と反応できない形に変わります。

リポソームで測った2016年の研究では、膜を作る前から入れたマレイミド脂質の活性は、表面で63%、精製を経ると32%まで下がりました。膜を作った後に差し込んだ場合は、76%が活性を保っています。ここから持ち帰るのは個々の値ではなく、反応基をいつ入れるかで生き残る割合が変わるという形です。

結合法を選べば本数も決まるのかというと、そうではありません。⁠結合法で決まるのは、いつ、どこに抗体を結ぶかまでです。 粒子を作った後に抗体付きの脂質を差し込むのか、反応基付きの脂質を混ぜて作った粒子に結合させるのか、抗体のどこをつかまえるのか、までが決まります。

臨床に入った標的化LNPの特許明細書でも、抗体にイオウを含む基を導入する経路、鎖のつなぎ目を還元して抗体の一部をほどく経路、決まった位置だけに基を入れる経路の3つが比べられています(US 12311033 の例20)。どれを選んでも、載った本数は精製後に測るまで分かりません。

抗体薬物複合体(ADC)抗体に細胞傷害性の薬物(ペイロード)を結合させた医薬。標的へ薬物を運んで作用させる。とは順番が逆です。ADC標的を選ぶ抗体に、細胞傷害性の薬物(ペイロード)をリンカーでつないだ分子。詳しく →では抗体1分子あたりの薬物の平均数を先に設計しますが、標的化LNPでは、抗体の形と結合法を決めたあとに本数を測ります(ADCのコンジュゲーションと薬物抗体比)。

2. 本数が多いと肝臓に捕まり、少ないと標的に効かない

下限の根拠は標的への結合、上限の根拠は標的以外の細胞に捕まる量です。⁠

上限の側から見ます。2021年の研究は、ポリサルコシン系のナノ粒子に抗体を平均で2本、6本、12本結合させて比べました。本数が増えるほど、肝臓への集積が増えています。経路は、肝臓の血管の内側にある細胞(肝類洞内皮細胞)が持つFc受容体です。

同じ研究では、Fc領域抗体の定常部にあたる「足」の部分。FcγRや補体、FcRnと相互作用し、機能や血中半減期を担う。詳しく →を持たないF(ab')2断片に替えるか本数を減らすと、細胞への結合を保ったまま肝臓への集積が抑えられました。読み取るのは、本数を増やすほど標的以外に捕まる経路が強くなる、という向きです。

では、本数を減らせばよいのか。リポソームで1粒子あたり330本、480本、690本の3ロットを比べた報告では、いちばん少ない330本のロットで、細胞の塊を使った試験の効きが下がる傾向が見られました(3ロットのあいだに統計的な差はありません)。最も密度が高いロットが最良だったのではなく、中間の480本が最もよく効いています。

どちらの報告もLNPではない粒子の結果で、粒子の大きさや表面の覆い方が違えば、ちょうどよい本数の桁も変わります。⁠文献から持ち帰るのは上限と下限の両方に根拠があるという形で、LNPでの値は、標的細胞への結合と標的以外への集積を自社の粒子で測って決めます。

抗体を載せた粒子を3つ横に並べた図。左の赤い区画は抗体が少なすぎる粒子で、標的の細胞をつかむ力が足りず、運んだ核酸が標的で働かないと書かれ、下限の根拠と示される。中央の緑の区画はちょうどよい粒子で、標的に結合し、標的以外には捕まりにくいと書かれる。右の赤い区画は抗体が多すぎる粒子で、肝類洞内皮細胞のFc受容体に捕まり肝臓に集まると書かれ、上限の根拠と示される。図の下に、本数は処方では決まらず、反応と精製を終えた粒子で測って初めて分かること、上限と下限の値は自社の粒子で取ることが書かれている
本数は、多すぎても少なすぎても働かない(概念図)
図をダウンロード(会員・無料)
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3. 本数の規格は上限と下限で挟み、遊離抗体は割合で置く

抗体の本数は上限と下限の両方で挟み、結合しなかった抗体は、全抗体量に対する割合で置きます。

抗体を載せると、規格に3つの項目が加わります。1粒子あたりの本数(抗体修飾密度)、結合活性から読む抗体の向き、遊離抗体の割合です。原料は抗体と反応基付きのPEG脂質の2つ、工程は結合の反応と遊離抗体を除く精製の2つが増えますが、装置は増えません。

もとからある粒子径、PDI粒子径分布の広がりを表す指標。DLSで会合や凝集の傾向を早期に捉えるのに使う。詳しく →(粒子径のそろい方を表す指数)、封入率も、これまでどおり測ります(LNPの粒子径とPDI、LNPの封入率)。ただし、抗体を結合させる前の粒子で取った規格値は、結合と精製を経たあとの粒子で取り直します。

本数は、抗体の総量を粒子の個数濃度で割って平均として出すか、粒子を1個ずつ見て分布として出します。上限を平均だけで置くと、取りこぼしが出ます。

装置メーカーが2026年に出したポスターは、粒子を1個ずつ測る電荷検出質量分析個々のイオンの質量と電荷を同時に測る質量分析法です。ウイルスベクターのような大きく不均一な粒子の分析に向きます。詳しく →(CDMS)での結果を報告しました。反応基付きの脂質を0〜5%の範囲で増やしていくと、結合量が多いほど分布が広がり、粒子は複数の部分集団に分かれました。平均が規格に収まっていても、本数の多い集団が混じっていれば、肝臓に捕まる分はその集団から出ます。

向きも、本数と同じだけ効きます。抗体のリシン残基と反応する基(NHSエステル)のように場所を選ばずに結合させると、抗原をつかむ部分が粒子側を向いた抗体が混じります。向きがばらつけば、本数が同じでも標的をつかまえる力は下がります。

向きをそろえる手は結合法の側にあります。決まった位置だけに反応基を入れる部位選択的な結合法のほか、抗体のFc領域に結合する小さな抗体断片全長抗体から抗原認識に必要な部分だけを取り出した分子。Fcを持たず小さく、微生物でも作れる。詳しく →を粒子に載せて抗体をそのまま捕まえる方式では、抗体を無作為につないだ従来法の粒子より、培養したT細胞株での発現が8倍以上だったと報告されています。

向きは直接測れないため、結合活性から間接的に見ます。固定した抗原への粒子の結合を、表面プラズモン共鳴(SPR)標的を固定した表面に分子を流し、結合による質量変化を光学的に、ラベルなしで検出する測定手法。詳しく →やバイオレイヤー干渉法センサー先端に結合した分子の膜厚変化を光の干渉で捉え、抗体などの結合・解離のしやすさ(親和性)をリアルタイムで測る手法です。詳しく →(BLI)で測り、その結合量を本数で割れば、載っている抗体のうち働いている割合が出ます(SPRとBLIの違い)。

遊離抗体は、何で抜くのか

遊離抗体は、標的細胞の同じ受容体に結合しますが、核酸は運びません。抗体そのものが細胞に作用する標的もあるため、投与量の考え方に遊離の分を含めるかを先に決めます。さきの特許(US 12311033)では、イオウを含む基を導入する経路でゲルろ過、部分還元の経路でタンジェンシャルフローろ過(TFF)を使っていました。

ここでカタログを読み違えることがあります。LNPの濃縮用の膜は、公称の分画分子量膜がふるい分ける境目となる分子サイズ。約150kDaの抗体では30kDaが定番で、目的物を留め小分子を通す。詳しく →が約150 kDaのIgGより小さいことがあります。そうした膜は抗体をほとんど通さず、濃縮には向いていても、遊離抗体を抜く用途では働きません。

POINT
膜を選ぶときに聞くのは、分画分子量の数字ではなく、その膜でのIgGのふるい係数(膜をすり抜ける割合)です(ふるい係数とは)。

洗い流す回数が増えれば、粒子のロスや粒子径の変化も起きます。精製のあとに粒子の側の3項目を測り直し、残った遊離抗体は、大きさで分けてから酵素免疫測定法抗原と抗体の結合を酵素反応による発色などで検出し、目的の物質の有無や量を測る手法です。不純物や力価の測定に広く使われます。詳しく →(ELISA)や紫外吸光で定量します。

規格がそろっても、残る試験

粒子の側の項目が規格に収まっていても、抗体を載せた目的そのものを確かめる試験は省けません。標的の抗原を持つ細胞と持たない細胞の両方に粒子を加え、運んだ核酸の発現を比べます。

mRNA から作られるタンパク質は一時的にしか出ないので、読み取る時点を先に決めます。初代のT細胞を使うとドナーによる差も出るため、参照ロットを同じプレートに置いて相対力価検体の力価を標準品と比べて表す値。生物系の日間変動を比で打ち消せる。詳しく →で読むと、ロット間の差が粒子の側にあるのか細胞の側にあるのかを切り分けられます(バイオアッセイ(力価試験))。

保管中の変化も新しい項目です。結合したあとも抗体が外れる経路が残るため、安定性試験出荷時から有効期限まで品質特性が規格内にとどまることを確認する試験。詳しく →には粒子径と封入率に加えて、抗体の本数、遊離抗体、結合活性を時点ごとに入れます(ICH Q5C)。

4. 抗体を載せると決めたら、上から順に決める

上から順に決めると、抗体の形を変えたときの手戻りが減ります。 供給元や受託先との打ち合わせにも、この順番を持ち込めます。

  1. 狙う受容体と抗体の形を決める⁠:全長IgG、F(ab')2、Fab重鎖の一部と軽鎖がジスルフィドで連結した約50kDaの抗体フラグメント。2本鎖で折りたたみがやや複雑。詳しく →、重鎖だけでできた小さな抗体(VHHラクダ科の重鎖抗体に由来し、単一ドメインで抗原を認識する小さなフラグメント。対合ミスが起きず安定。詳しく →)などから選びます。全長IgGはFc領域を持つので、肝臓のFc受容体に捕まる経路が残ります。
  2. 結合法を決める⁠:粒子ができた後に差し込むか、作るときに混ぜるか。何で結ぶかは、抗体が化学修飾に耐えるかで選びます。
  3. 反応基を付けたPEG脂質(ポリエチレングリコール脂質)の供給元に聞く⁠:GMP医薬品を一定の品質で安全に造るために守るべき製造・品質管理の基準(適正製造規範)です。詳しく →のグレードで調達できるか、反応基の活性割合に規格があるか、ロット間でどれだけ振れるかを確かめます。
  4. 抗体を独立した原料として受け入れる⁠:製造元、純度と凝集体、エンドトキシングラム陰性菌の外膜由来の発熱性物質(LPS)で、注射剤では厳しく管理し、LAL試験などで測定します。詳しく →の規格を決め、製造所が違うなら受け入れ試験の持ち方も決めます。
  5. 結合工程の条件を重要工程パラメータ製品の品質に大きく影響する工程条件。傾向を監視して管理された範囲で運転する。詳しく →の候補に挙げる⁠:温度、時間、抗体と反応基のモル比、pHが候補です。遊離抗体を抜く膜は、IgGの通りやすさ(ふるい係数溶質が膜をどれだけ通り抜けるかを表す値。1なら自由に透過し、バッファ交換や濃縮の挙動を左右する。詳しく →)から選び直します。
  6. 本数の上限と下限を、自社のデータで置く⁠:標的細胞への結合が落ちる本数を下限、標的以外への集積が増える本数を上限にします。平均だけでなく、分布の裾も見ます。
  7. 変更管理工程・設備・手順などの変更を評価・承認し、品質への影響とともに記録する仕組み。詳しく →の線を引く⁠:抗体のクローンや断片の形、反応基付き脂質の供給元を変えたとき、どこまで再試験するかを先に決めます。

抗体の本数は、設計で決める値ではなく、作った粒子から読み取る値です。上限と下限の根拠を自社のデータで持っていれば、ロットごとの数字をそのまま判断に使えます。標的化LNPが何をするものかは標的化LNPとは?にあります。

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  • 3. 本数の規格は上限と下限で挟み、遊離抗体は割合で置く
  • 4. 抗体を載せると決めたら、上から順に決める

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参考文献

  • Oswald M, Geissler S, Goepferich A. Determination of the activity of maleimide-functionalized phospholipids during preparation of liposomes. Int J Pharm. 2016;514(1):93-102.(マレイミド活性の63%、32%、76%。リポソーム)
  • Chen, et al. A versatile antibody capture system drives specific in vivo delivery of mRNA-loaded lipid nanoparticles. Nat Nanotechnol. 2025;20(9):1273-1284.(抗体のFc領域に結合する断片による抗体の捕捉。培養T細胞株での発現は無作為結合の従来法より8倍以上)
  • Rodallec A, et al. Prototyping trastuzumab docetaxel immunoliposomes with a new FCM-based method to quantify optimal antibody density on nanoparticles. Sci Rep. 2020;10:4147.(1粒子あたり330±30、480±110、690±80本。細胞の塊での効きは3ロットのあいだで統計的な差なし。リポソーム)
  • Kappel C, et al. Density of conjugated antibody determines the extent of Fc receptor-dependent capture of nanoparticles by liver sinusoidal endothelial cells. ACS Nano. 2021;15(9):15191-15209. doi:10.1021/acsnano.1c05713(平均2本、6本、12本の比較。肝類洞内皮細胞のFc受容体)
  • Waters, Multimodal Characterization of Targeted Lipid Nanoparticles Using Charge Detection MS and Orthogonal Separation Techniques(2026年のポスター。装置メーカー発表。反応基付き脂質0〜5%でのCDMSの分布)
  • US 12311033「Lipid nanoparticle formulations and compositions」(例20。イオウを含む基の導入・部分還元・部位選択的な導入の3経路の比較、ゲルろ過とTFFによる精製の記述)
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LNP用脂質 ↗TFFカセット ↗LNPの粒子特性評価 ↗SPR(表面プラズモン共鳴) ↗#LNP#mRNA#コンジュゲーション#品質管理
この記事の目次
  1. 1. なぜ、1粒子あたりの本数は作る前に決まらないのか→
  2. 2. 本数が多いと肝臓に捕まり、少ないと標的に効かない→
  3. 3. 本数の規格は上限と下限で挟み、遊離抗体は割合で置く→
  4. 4. 抗体を載せると決めたら、上から順に決める→
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この記事の目次
  1. 1. なぜ、1粒子あたりの本数は作る前に決まらないのか→
  2. 2. 本数が多いと肝臓に捕まり、少ないと標的に効かない→
  3. 3. 本数の規格は上限と下限で挟み、遊離抗体は割合で置く→
  4. 4. 抗体を載せると決めたら、上から順に決める→
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Proglenth(proglenth.com) https://www.proglenth.com/article/tlnp-antibody-conjugation-quality

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