細胞治療(CAR-T細胞療法)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける18 / 18 工程
採取・選別
1アフェレーシス/出発材料採取
出発材料の質(T細胞数・組成・活力)が最終製品の成否をほぼ決めるため、採取の標準化が最優先となる工程。
- 基準の方法
- 連続流遠心法による白血球アフェレーシス(単核球採取)
- 試薬・資材
- Terumo BCT ACD-A 抗凝固液(クエン酸ナトリウム/クエン酸/ブドウ糖)+ Baxter/ヘキサル等の生理食塩水(0.9% NaCl)でのプライミング・置換。抗凝固比(AC:WB)は概ね1:12〜1:13で運転。
- 代表的なメーカー
- Terumo BCTFresenius Kabi
- ほかの方法
- 間欠流遠心式アフェレーシス・間欠流アフェレーシス・全血採血からの後工程分離(研究/小規模)
2単核球分離・洗浄
血小板・赤血球・残存DMSOを除きT細胞の活性化・形質導入効率と再現性を高めるため
- 基準の方法
- 閉鎖系自動細胞処理装置によるFicoll密度勾配遠心で単核球を分離し、血小板・赤血球を除去のうえ洗浄・濃縮
- 代表的なメーカー
- CytivaBaxterGrifols/CSL Behring
- ほかの方法
- 対向流遠心エルトリエーション・スピンメンブレン/ろ過式自動洗浄・濃縮
3凍結・コールドチェーン
採取と製造を時間的に切り離し、輸送遅延や枠調整を吸収して安定供給するため
- 基準の方法
- DMSO含有凍結保護液
- 代表的なメーカー
- Thermo Fisher ScientificBioLife SolutionsCharter MedicalGrifols/CSL Behring
- ほかの方法
- 凍結せず新鮮輸送・LN2フリー伝導冷却式制御速度凍結
4T細胞選別・エンリッチメント
単球・顆粒球・赤血球を除きT細胞を濃縮し、後続の活性化と遺伝子導入の効率を安定させる工程。
- 基準の方法
- 磁気ビーズによる陽性選択(CD4/CD8またはCD3選別)
- 試薬・資材
- T細胞・CAR-T 細胞選別・活性化試薬
- 代表的なメーカー
- Miltenyi Biotec
- ほかの方法
- 対向流遠心エルトリエーション・選別を省略しPBMC直接活性化・ナイーブ/メモリーTサブセット選別
活性化
5T細胞の活性化(増殖の起動)
休止T細胞をCD3/CD28で活性化して分裂を起動し、ウイルスベクターの導入効率を大きく高める工程。
- 基準の方法
- 可溶性CD3/CD28アゴニスト試薬による活性化
- 代表的なメーカー
- Miltenyi Biotec
- ほかの方法
- 常磁性ビーズによる活性化・可溶性ナノ試薬/可逆的多量体・人工抗原提示細胞(aAPC)
遺伝子導入
6CAR遺伝子の導入(形質導入)
がん抗原を認識するCAR遺伝子をゲノムに組み込む中核工程。導入効率とコピー数が用量と安全性を左右する。
- 基準の方法
- レンチウイルスベクターによる形質導入
- ほかの方法
- ガンマレトロウイルスベクター導入・トランスポゾン(非ウイルス)導入・CRISPRによる部位特異的ノックイン
培養・産生
7拡大培養
治療必要数まで増やしつつ疲弊を避け、生着・持続に有利な若いメモリー表現型を保つことが品質目標の工程。
- 基準の方法
- 閉鎖系自動バイオリアクターでの灌流/撹拌培養
- 代表的なメーカー
- Miltenyi BiotecThermo Fisher
- ほかの方法
- ガス透過性容器による静置/半自動培養・完全自動化カートリッジ型製造・短期培養/無培養(next-gen)
回収・清澄化
8洗浄・濃縮/ビーズ除去
磁気ビーズや培地・サイトカイン残渣を除き、製剤前に細胞濃度を整えて回収率と最終品質を守る工程。
- 基準の方法
- 自動洗浄・濃縮(および磁気ビーズ除去)
- 試薬・資材
- 細胞凍結保護用ヒトアルブミン(HSA)
- ほかの方法
- 向流遠心エルトリエーションによる洗浄・磁気スタンドによるビーズ除去・膜分離による洗浄・濃縮
9フィル&フィニッシュ/凍結保存
投与施設への輸送と投与までの時間を確保するため凍結し、解凍後の生存率と機能を保つ工程。
- 基準の方法
- DMSO含有凍結保護液による制御速度凍結
- 試薬・資材
- 凍結保存液
- ほかの方法
- 汎用DMSO配合・自家調製凍結液・受動式凍結・新鮮(非凍結)製剤での即時投与
品質特性・分析
10CAR発現率測定
CAR分子の表面発現と陽性率を確認する工程。製品の同一性であり用量設計の根拠となる重要品質特性。
- 基準の方法
- フローサイトメトリーによるCAR陽性率測定
- 試薬・資材
- 細胞治療製品 力価・機能評価
- ほかの方法
- Protein L/抗Fab汎用検出・抗イディオタイプ抗体検出・タグ/レポーター検出
11VCN測定
1細胞あたりのコピー数を測り、挿入変異による腫瘍化リスクを平均5コピー以下で上限管理する安全性指標。
- 基準の方法
- ドロップレットデジタルPCR(ddPCR)による絶対定量
- 試薬・資材
- ベクターコピー数(VCN)測定受託
- 代表的なメーカー
- Bio-RadThermo Fisher
- ほかの方法
- リアルタイム定量PCR・フローCAR陽性率を代替指標・次世代シーケンス(インテグレーションサイト解析)
12細胞数・生存率測定
投与するCAR陽性生細胞数は用量そのもの。生存率は製品の健全性を示し放出規格の中核となる工程。
- 基準の方法
- 自動細胞計数(画像・蛍光ベース生死判定)
- 装置
- セルカウンター
- 試薬・資材
- ChemoMetec Via1-Cassette(アクリジンオレンジ〔総細胞〕+DAPI〔死細胞〕二色固定化染色カセット)。
- ほかの方法
- トリパンブルー色素排除(自動)・フローによる生死+CAR同時定量・血球計算盤による用手計数
13免疫表現型解析
CD4/CD8比やメモリー比、疲弊マーカーを調べ、生着・持続・効果に関わる製品の一貫性を管理する工程。
- 基準の方法
- マルチカラーフローサイトメトリーによる表現型解析
- 試薬・資材
- 抗CD3/CD4/CD8/CD45RA/CD45RO/CCR7(CD197)/CD62L/PD-1(CD279)/LAG-3/TIM-3 蛍光標識抗体パネル(BD Horizon/BioLegend/Beckman/Miltenyi)+ 生死色素 BD Fixable Viability Stain/7-AAD。
- 代表的なメーカー
- BDBeckman CoulterCytekBioLegendMiltenyi Biotec
- ほかの方法
- スペクトルフローサイトメトリー・マスサイトメトリー(CyTOF)・シングルセルRNA-seq表現型
14力価/ポテンシー測定
標的を認識して殺傷しサイトカインを出せるかを確認する工程。製品の効く力を示す規制上必須の力価試験。
- 基準の方法
- 抗原刺激によるIFN-γ産生測定(機能性力価)
- 試薬・資材
- ELISA細胞治療製品 力価・機能評価
- ほかの方法
- リアルタイム細胞傷害(インピーダンス)・フロー/色素ベース細胞傷害アッセイ・多重サイトカインプロファイリング
15RCL試験/増殖性ウイルス否定
ベクターが複製能を取り戻し感染性ウイルス化していないことを確認する、規制上必須の安全性試験。
- 基準の方法
- 感受性細胞での増幅後にプロウイルス配列をqPCR検出(RCL試験)
- 代表的なメーカー
- Bio-RadPerkinElmerThermo FisherTakara
- ほかの方法
- PERT(製品増強逆転写酵素)アッセイ・p24抗原ELISA(HIV-1ベクター)・ガンマレトロのRCR試験
16無菌試験
終末滅菌できない生細胞製品の細菌・真菌混入を否定し、投与による重篤感染を防ぐ工程。
- 基準の方法
- 薬局方無菌試験(メンブレンフィルター/直接接種)
- 装置
- 無菌試験
- 試薬・資材
- 滅菌フィルター(除菌ろ過 0.2µm)
- ほかの方法
- 自動血液培養システムによる迅速無菌試験・PCR/核酸ベース迅速微生物検出・グラム染色(中間管理)
17マイコプラズマ・エンドトキシン試験
見えにくいマイコプラズマと発熱性エンドトキシンを放出前に否定する工程。短い保存期間ゆえ迅速法を用いる。
- 基準の方法
- 迅速PCRによるマイコプラズマ検出+動態比濁/比色LAL法によるエンドトキシン定量
- 試薬・資材
- マイコプラズマ試験
- ほかの方法
- 薬局方マイコプラズマ培養法+指示細胞法・ゲル化法LAL・組換えファクターC(rFC)法
18プロセス由来不純物管理
残存ビーズ・残留DMSO・残存ベクター等を規定値以下と確認し、患者へ持ち込む不純物を最小化する工程。
- 基準の方法
- 残存磁気ビーズ計数・残留試薬の定量
- ほかの方法
- 残存DMSO/添加物の測定・残存サイトカイン/培地成分の定量・残存ベクター(遊離粒子)評価
18工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ18工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。