培養Sartorius2026.10.24約6分

Biostat STR(Sartorius)槽と一緒に袋の膜が決まる

Photo: National Cancer Institute / Unsplash

Biostat STR は、Sartorius の撹拌槽型(STR)シングルユースバイオリアクターです。ステンレス製のバッグホルダーに使い捨ての Flexsafe STR バッグを掛け、制御タワーで温度や pH、溶存酸素(DO)を測りながら培養を制御します。バッグホルダーは50 Lから2,000 Lまでの5サイズで、作動容量としては12.5 Lから2,000 Lまでを掲げています。現行機は、制御ソフトを同社の自動化基盤 Biobrain に載せた Generation 3 です。

抗体の本培養やシードトレインの槽として、Cytiva の Xcellerex XDR などと並べて比べられる機種です。XDR も10 Lから2,000 Lまでをそろえているので、容量の上限では差がつきません。

見ておきたいのは、⁠この槽を選んだ時点で、毎バッチ買い続ける袋の膜と、工場の制御系へのつなぎ方が一緒に決まるという点です。

Ambr 250 と同じ形でそろえた2,000 Lまでの系列

この系列の土台は、2017年4月の発表にあります。5サイズの槽と新しい Flexsafe STR バッグを同時に出し、槽の形を小型の Ambr 250 と同じ比率にそろえたと Sartorius は説明しました。250 mL の検討から2,000 L の製造まで、移す作業を「数か月ではなく数週間で」終えられる、というのが当時の同社の主張です。

形をそろえる意味は、スケールアップでそろえる指標を選ぶ場面で出てきます。槽の高さと径の比、槽の径と翼の径の比が同じなら、撹拌動力や翼の先端の速さを合わせたときに、流れの形が崩れにくくなります。同社はさらに、Ambr 250 から2,000 L までの槽の特性データを積んだ BioPAT Process Insights というソフトを出し、条件の移し替えを予測できるとしています。用途には抗体や mRNA、ワクチンなどを挙げ、AAV の生産を250 mL から200 L へ移した応用ノートも公開しています。

それでも、容量が8,000倍になれば、気泡の当たり方も混ざるまでの時間も変わります。小型槽で再現しにくい点は Ambr 250 の製品トピックにまとめたとおりです。

設備の組み方にも特徴があります。制御タワーはどのサイズのバッグホルダーにもつなげる設計で、ホルダーを替えれば同じタワーで別の容量を回せます。500 L、1,000 L、2,000 L には、袋を吊り上げて据え付ける装置もオプションで用意されています。

形をそろえたことは移す前に確かめる項目を減らす材料で、大きな槽での確認を省く根拠にはなりません。

袋の膜 S80 と、細胞が増えなかった報告

Flexsafe STR バッグは、Sartorius が配合を決めた多層のポリエチレン膜 S80 でできています。

この膜には由来があります。2012年の学会では使い捨ての袋のロット差が細胞の増え方を左右した例が、2013年の PDA Journal では袋から溶け出した化合物が増殖を妨げた例が報告されました。Sartorius は自社のページでこの2件を引き、問題を避けるには膜に入れる酸化防止剤の濃度を最適化して管理することが要ると説明しています。そのうえで、樹脂や添加剤、フィルムのメーカーと組んで S80 を開発し、標準化した細胞増殖試験で原料と配合を詰めました。酸化防止剤は薬局方に載っているものだけを使い、滑り剤は入れていないとしています。溶け出す物質の種類と評価の考え方は、抽出物・溶出物(E&L)の解説で扱っています。

同社によれば、樹脂の配合から袋の組み立てまでを自社の管理下に置いているので、ロット間で溶出物の傾向がそろいます。E&L の評価を一度組めば、同じ膜の袋を使い続けるかぎり前提が崩れにくい点は、品質保証の側から見て心強い話です。

袋の側では新しい選択肢も出ています。酸素の移動を高める intensified sparger(散気管)付きの袋で、高密度の培養を支え、酸素の使用量を抑えられると同社は説明しています。ただ、袋の構成が変われば、手元にある溶出物と細胞増殖のデータがその構成まで及ぶかを、確かめ直す必要があります。

膜を一社で管理していることは品質の裏づけであり、培養のたびに消費する袋の供給を、その一社に預けることでもあります。

XCell ATF の内蔵と、DCS へのつなぎ方

灌流と制御まわりの拡張は、ここ数年で厚くなりました。

2023年8月、Sartorius と Repligen は、細胞保持装置 XCell ATF の制御を Biostat STR に組み込んだ構成を発売しました。ATF を動かすハードウェアはバッグホルダーに収まり、操作は Biobrain の画面から行います。灌流のために別の制御盤を置かずに、50 Lから2,000 Lまでを一か所で制御できます。試験済みの決まった構成で売るので、案件ごとに設計する方式より納期が短い、というのが両社の説明です。N-1灌流で種培養の細胞を濃くしたい工場には、検討の入口が近くなりました。ATF そのものの仕組みは XCell ATF の製品トピックで解説しています。

現行の Generation 3 Release 2 は、この ATF の内蔵に加えて、ポンプと天秤をまとめる Media Control Hub を足しました。設置面積は0.8 m²です。構成は Essential と Performance の2つで、重量で管理する流加ラインは Essential が2本、Performance が最大5本です。生細胞量を測る BioPAT Viamass と、グルコースと乳酸を測る BioPAT Trace を足せば、細胞の抜き取り(ブリード)とグルコースの流加を自動で回せます。製造向けの構成では、pH と DO のセンサーをそれぞれ最大4本まで冗長に持てます。

工場の制御系とのつなぎ方も選べます。2017年の発表の時点で、同社の SCADA である BioPAT MFCS のほか、Emerson の DeltaV や Siemens の SIMATIC PCS7 といった分散制御システム(DCS)から制御できるとしていました。いまは DeltaV にじかに組み込む版も用意されています。Biobrain は監査証跡とバッチ報告を備え、データを1年分ためておけます。

工場の DCS で一元管理するか Biobrain で完結させるかでバリデーションの範囲が変わるので、槽の型番より先に決めておきます。

導入前にメーカーへ確かめたいこと

最初に聞きたいのは、サイズごとの最小作動容量です。系列全体の12.5 Lは最小サイズの下限で、500 L や2,000 L の槽をどこまで絞れるかは公表されていません。ターンダウン比はシードトレインの段数を左右するので、型番ごとに数字で受け取っておきます。

次は、袋の構成ごとの溶出物データと細胞増殖データです。標準の袋と intensified sparger 付きの袋で、データの範囲がそろっているかを見ます。膜や部材を変えるときに、どの時点で知らせてもらえるかも、供給契約の段階で決めておきたい点です。

最後に、性能の数字です。同社は、細胞の生存率と密度が上がり、製品の純度も高まると打ち出しています。比較の条件と数値を伴った主張ではないので、自社の細胞株で、いま使っている槽と並べて取り直します。価格は問い合わせ制で、リースの選択肢もあるとされています。国内での据え付けと保守、袋の在庫の持ち方は、販売店を含めて詰めておきます。

比べるべきは容量の上限ではなく、型番ごとの下限、袋の構成ごとのデータ、制御をどこに置くかの3点です。

※ 本ページは公開情報(Sartorius の製品ページ・発表資料)をもとにした Proglenth 編集部による整理です。仕様・数値の詳細は公式情報をご確認ください。

SPECIFICATIONS

主要諸元

方式
撹拌槽型(STR)のシングルユースバイオリアクター
バッグホルダー
ステンレス製、50 L 〜 2,000 L の5サイズ。制御タワーはどのサイズのホルダーとも組み合わせ可能
作動容量
12.5 L 〜 2,000 L
撹拌・通気
磁気結合のセンターライン軸。インペラとスパージャーは複数の選択肢から構成。酸素移動を高める intensified sparger 付きの袋も選択可
培養バッグ
Flexsafe STR(多層ポリエチレンフィルム S80)
一体型センサー
シングルユースの光学式 DO・pH、電気化学式 pH、BioPAT Viamass
制御
Biobrain(GAMP 5・ISA 88・OPC UA に準拠と同社)。BioPAT MFCS4、外部 SCADA・DCS と接続。XCell ATF 制御の内蔵はオプション
保護等級
IP65 / NEMA 4X(制御タワー)、IP54 / NEMA 12(バッグホルダー)

いずれもメーカー公表値です。構成やキットにより異なるため、実際の条件はメーカーの製品ページでご確認ください。

メーカー公式
Sartorius
Biostat STR Generation 3
製品ページを見る ↗

本ページは各社の公開情報をもとに、Proglenth編集部が整理したものです。仕様・数値はメーカー公表値、発言は発表資料からの引用(英文は編集部訳)であり、本ページは販売・推奨を目的とするものではありません。導入の検討では必ず一次情報とメーカーへの確認を行ってください。編集の考え方は編集方針に記載しています。

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