品質試験を整えたい9項目のうち8番目

安定性試験を組む

有効期間の根拠になる長期のデータを、計画どおりに集める

いつまでに
治験薬の最初のロットから置き始め、承認申請の時点で長期の実測データをそろえる
関わる人
品質管理(分析)・製剤開発・品質保証・薬事・物流

この項目で確かめること7項目

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終えたときに手元にあるもの条件・時点・ロット・容器・試験項目を書いた計画書、時点ごとの成績、有効期間と保管条件の根拠をまとめた報告書

なぜ必要か

ラベルに書く有効期間と保管条件は実際の保存条件で取った長期のデータでしか支えられず、申請の時点では途中までの実測しか手元にないため、ロット数・時点・容器・分析法を先に決めておかないと、承認後に期間を延ばす根拠も、輸送中の温度逸脱への答えも出せないからです。

見落としやすいこと

  • 抗体では、温度を上げると冷蔵庫では起きない経路で凝集や変性が進むことがあり、加速条件の傾きから冷蔵の有効期間は読めません。
  • ワクチンの冷蔵流通を調べた総説では、冷蔵庫や輸送の積み荷の14〜35%が凍る温度にさらされていて、温度の記録は上限だけでなく下限でも見ます。
  • 別の製品の安定性データを借りて有効期間の根拠の中心にすることはできず、米国の cGMP(21 CFR 211.166)は、製品ごとに十分な数のロットを試験して有効期間を決めると定めています。
  • ICH は Q1A〜Q1E と Q5C を1本の ICH Q1 にまとめる改訂を進めていて、草案には使用時の安定性と短期の温度逸脱の扱いが新しく入っています。

進め方

  1. 強制分解で壊れ方を調べ、安定性に使う分析法がそれを捉えることを確かめます。

  2. 条件、時点、ロット、容器、試験項目を計画書に書き、品質保証の承認を受けます。

  3. 治験薬のロットから長期と加速の試験を始め、時点ごとに測ります。

  4. 規格内でも傾向が変わった値を、OOT(傾向外れ)の基準で見張ります。

  5. 申請の時点の実測で有効期間を提案し、承認後も長期試験を続けて期間を延ばします。

判断の分かれ目

こういうときこうする

こういうとき長期のデータが規格の中でほとんど動かず、ロット間のばらつきも小さいとき

こうするICH Q1E の手順で実測より少し長い期間を提案できる余地はありますが、抗体ではこの余地を使う場面が限られるため、実測の範囲を基本にします。

こういうとき容器、栓、シリンジのメーカーや塗布方式を変えるとき

こうする中身を変えていなくても、安定性・凝集・粒子を測り直します。

こういうとき試験の数を減らす設計(ブラケッティングやマトリキシング)を使いたいとき

こうする減らした条件が全体を代表することを、劣化の経路から説明できる場合に限って使います(ICH Q1D)。

どんな方法があるか

  • 長期保存試験ラベルの保管条件で置き、有効期間の根拠にする
  • 加速試験温度を上げて傾向を読み、輸送中の一時的な逸脱の影響を見る
  • 苛酷試験(強制分解)わざと壊して壊れ方と分析法の力を確かめる

自社でできるか、外に出すか

安定性チャンバーがあれば自社で置けます。保管と試験をまとめて受託先に出すこともでき、そのときは条件、時点、ロット数、容器を伝えます。

外に出すとき、先に相手に確かめること

  1. ICH の条件(温度・湿度)で、温度分布を確かめたチャンバーに置けるか
  2. 時点ごとの試験を、自社と同じ分析法で行えるか
  3. チャンバーの温度が外れたときの連絡と評価の手順
  4. 保管する検体の量と、時点を足せる余裕
  5. 生データと時点ごとの報告を、どの形で受け取れるか

読んで確かめる4本

まずこれ約6分

安定性試験(ICH Q1)とは?有効期間の決まり方と統合改訂の動き

有効期間24か月は、24か月待ってから決めるとは限りません。ICH Q1の長期・加速・苛酷の役割、抗体でQ5Cが上乗せされる理由、試験が通っても現場で困る失敗、Q1が1本に統合される改訂の現状と、明日から確かめることを解説します。

詳しく分かる項目:保存の条件・ロット数と申請時のデータ・測る時点・使用時と温度逸脱

約7分

強制分解(苛酷)試験とは?なぜ薬をわざと壊し、どこまで壊せばよいのか

強制分解(苛酷)試験とは、原薬や製剤に加速試験より厳しいストレスをかけてわざと壊し、分子の壊れ方と、分析法が壊れた分を見つけられるかを確かめる試験です。有効期間を決める試験との違い、わざと壊す理由、かけるストレスと抗体の壊れ方、壊す強さの決め方、結果の読み方、報告書で確かめる順番を解説します。

詳しく分かる項目:分析法が壊れ方を捉えるか

約6分

OOT(傾向外れ)とは?規格内なのになぜ調べ、どこで線を引くのか

OOT(Out of Trend:傾向外れ)とは、試験結果が規格の範囲内にありながら、これまでのロットの値の並びから外れている状態です。OOS(規格外)との違い、規格内でも調べる理由、アラートとアクションの線の引き方、線を越えない変化の見つけ方、見つけたときに何から調べるかを解説します。

このテーマを順に学ぶ

安定性と有効期間全9回・約56分

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この項目の記事は第1回「安定性試験(ICH Q1)とは?有効期間の決まり方と統合改訂の動き」です。

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