細胞治療(iPS細胞)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける19 / 19 工程
採取・初期化
1リプログラミング
ゲノムに傷を残さない初期化法の選択が後工程全体の安全性を左右する。
- 基準の方法
- 非組込み型Sendaiウイルスベクターによるリプログラミング
- ほかの方法
- エピソーマルプラスミド法(oriP/EBNA1)・合成修飾mRNA法・組込み型レトロ/レンチウイルス法
樹立・拡大・バンク化
2セルバンク化/MCB・WCB
良質クローンを選び全ロットの源となるバンクを規定・ゼノフリーで恒常化する。
- 基準の方法
- フィーダーフリー・ゼノフリー2D接着培養での拡大とMCB/WCB二段バンク化
- ほかの方法
- ラミニン-521単一成分マトリクス・代替阻害剤/ROCKフリー・自動培養・閉鎖系プラットフォーム
3本培養・スケールアップ
1ロットで多数患者分を賄う他家製品の大量拡大を低せん断で実現する商業生産の鍵。
- 基準の方法
- Vertical-Wheel型バイオリアクタによる凝集体(アグリゲート)懸濁培養での大量拡大
- ほかの方法
- マイクロキャリア懸濁培養・翼付き撹拌槽(インペラ型)バイオリアクタ・中空糸/灌流バイオリアクタ
4ハーベスト・濃縮
バイオリアクタ拡大後、分化に渡す前に培地・残渣を除き濃縮する必須中間工程
- 基準の方法
- 閉鎖系・単回使用カウンターフロー(向流)遠心によるiPSC凝集体の洗浄・濃縮・バッファ交換
- 試薬・資材
- 試薬: 洗浄用 Thermo Fisher DPBS(14190)または CTS DPBS、規定基礎培地。ROCK阻害剤 Y-27632 含有ハーベストバッファ(DPBS+10µM Y-27632)
- ほかの方法
- 向流遠心エルトリエーション式細胞洗浄・中空糸タンジェンシャルフローろ過(TFF)・ベンチトップ遠心による回収・洗浄・再懸濁
分化誘導
5目的細胞への指向性分化誘導
発生経路を模倣し目的細胞へ頑健・スケーラブルにGMP分化させる工程。
- 基準の方法
- 規定培地・低分子/成長因子による段階的指向性分化
- 試薬・資材
- 分化誘導・分化能評価試薬
- ほかの方法
- 胚様体(EB)形成を介する分化・遺伝子導入による強制分化(転写因子過剰発現)・3Dオルガノイド/バイオリアクタ分化
6単一細胞化・解離
分化後の凝集体を磁気選別にかける前に単一細胞へ解離する必須前処理工程
- 基準の方法
- 組換え酵素による緩和な酵素的解離とフィルタ通過によるシングルセル懸濁液化
- 試薬・資材
- 細胞解離・剥離酵素
- 代表的なメーカー
- MerckCorningMiltenyi BiotecMiltenyiSTEMCELL
- ほかの方法
- 組換えトリプシン様酵素+EDTA解離・用手的トリチュレーション+メッシュろ過
精製
7細胞選別・精製
残存未分化細胞や副産物の腫瘍化・不純物リスクを除き目的細胞を高純度化する。
- 基準の方法
- 磁気活性化細胞選別(MACS)による陽性/陰性選択での目的細胞濃縮
- 試薬・資材
- iPS・幹細胞 選択・純化試薬
- 代表的なメーカー
- Miltenyi BiotecBDMiltenyi
- ほかの方法
- 蛍光活性化細胞選別(FACS)・代謝選択(乳酸培地等)・接着/重力分離・濾過
8洗浄・濃縮/製剤化
磁気選別後に残存試薬を除き目標密度へ濃縮、凍結保護液へ置換する必須製剤化工程
- 基準の方法
- 閉鎖系カウンターフロー遠心による洗浄・濃縮・凍結保護液へのバッファ交換
- 試薬・資材
- 凍結保存液
- ほかの方法
- 自動細胞洗浄・濃縮システム・中空糸TFFによる洗浄・濃縮
9充填・凍結保存
氷晶傷害を抑える制御速度凍結で投与時まで生存性と品質を保つ最終工程。
- 基準の方法
- DMSO含有凍結保護液での分注と、プログラムフリーザー
- ほかの方法
- 低濃度/DMSOフリー保護液・−80℃非制御速度凍結・ガラス化(ビトリフィケーション)
品質特性・分析
10STR鑑定
取り違えや他株混入を排し登録ドナー由来の正株であることをDNA指紋で保証する。
- 基準の方法
- STR
- 試薬・資材
- 試薬: Promega PowerPlex Fusion 6C System(DC2705)または Thermo Fisher GlobalFiler PCR Amplification Kit(4476135)等のSTRマルチプレックスPCRキット、サイズスタンダード GeneScan 600 LIZ
- 代表的なメーカー
- PromegaQIAGENIlluminaThermo FisherApplied Biosystems
- ほかの方法
- STR-NGS(次世代シーケンシング型STR)・SNPジェノタイピング照合・HLAタイピング
11多能性マーカー・フロー
バンクが未分化で高品質な多能性状態にあることを陽性率で数値化しロット判定する。
- 基準の方法
- 多色フローサイトメトリーによる多能性マーカー(SSEA-4、TRA-1-60)陽性率の定量
- 試薬・資材
- 試薬: 蛍光標識 anti-SSEA-4(BioLegend 330406/BD 560073)、anti-TRA-1-60(BioLegend 330610/Miltenyi 130-100-347)。補完で細胞内 anti-OCT4(BD 560329)・anti-NANOG(BD 561300)。生死判別に BD 7-AAD(559925)
- ほかの方法
- 免疫蛍光染色(ICC/IF)・qPCR/RT-qPCRによる多能性遺伝子発現・PluriTest(トランスクリプトーム照合)
12三胚葉分化能・Scorecard
三胚葉分化能で多能性を機能的に証明しテラトーマ試験を定量法で置換する。
- 基準の方法
- TaqMan hPSC Scorecardアッセイ
- 試薬・資材
- 試薬: TaqMan hPSC Scorecard Panel(Fast 96-well A15876/384-well A15870等。自己複製・三胚葉系統マーカーの94 TaqManアッセイをドライダウン)、逆転写・PCRに High-Capacity cDNA Kit+TaqMan Fast Advanced Master Mix
- 代表的なメーカー
- IlluminaThermo FisherSTEMCELLApplied Biosystems
- ほかの方法
- テラトーマ形成試験(in vivo)・胚様体(EB)分化+三胚葉マーカー染色・PluriTest/指向性分化検証
13ゲノム安定性・核型の評価
培養で蓄積する染色体異常を全ゲノム概観で監視し腫瘍化・機能異常を防ぐ。
- 基準の方法
- Gバンド分染核型解析(メタフェーズ核型)による染色体異常スクリーニング
- 試薬・資材
- 試薬: コルセミド(KaryoMAX Colcemid、Thermo Fisher 15212012)、ギムザ染色液(Merck/Sigma GS500)、トリプシン処理液、培養試薬
- 代表的なメーカー
- Bio-RadMerckIlluminaThermo FisherApplied Biosystems
- ほかの方法
- SNPアレイ(分子核型)・デジタルPCR標的アッセイ(iCS-digital PSC)・全ゲノムシーケンシング(WGS)/NGS
14ベクタークリアランス確認
初期化に使ったSendaiや導入因子の残存を高感度に否定し安全性を確認する。
- 基準の方法
- RT-qPCRによる残存Sendaiウイルスゲノム/導入トランスジーンの検出(陰性確認)
- 試薬・資材
- 逆転写酵素・RT試薬(配列確認用)
- 代表的なメーカー
- Bio-RadQIAGENRocheThermo Fisher
- ほかの方法
- 免疫細胞化学(ICC)によるSeVタンパク検出・エピソーマル/プラスミドDNAのqPCR検出・デジタルPCR(高感度定量)
15残存未分化細胞・ddPCR
分化製品に残る未分化iPSCの移植後腫瘍化を極微量レベルで検出する最重要課題。
- 基準の方法
- LIN28A標的のデジタルPCR(ddPCR)による残存未分化細胞の超高感度定量
- 代表的なメーカー
- Bio-RadThermo FisherBD
- ほかの方法
- RT-qPCR(LIN28A/TRA-1-60転写産物)・培養上清miRNA測定(miR-302b等)・フローサイトメトリー(TRA-1-60/SSEA-5陽性細胞)
16無菌・マイコ・エンドトキシン
終末滅菌不能で短有効期間の製品の汚染を防ぐ無菌・マイコ・発熱性の法定試験。
- 基準の方法
- 無菌試験
- 試薬・資材
- 試薬: BacT/ALERT iFA Plus(好気)/iFN Plus(嫌気)培養ボトル、Roche MycoTOOL Mycoplasma Real-Time PCR Kit(06495605001)、LAL試薬(ゲル化/比濁/比色)
- ほかの方法
- 迅速マイコプラズマqPCR(CAR-T等で承認実績)・組換えファクターC(rFC)法エンドトキシン・迅速微生物検出(ATP生物発光・呼吸検出)
17エンドトキシン(細菌内毒素)試験
発熱性のグラム陰性菌内毒素を規格値以下と確認する全ロット必須の安全性試験
- 基準の方法
- 動態比濁法/比色法によるLALエンドトキシン定量
- 試薬・資材
- 試薬: Endosafe LAL カートリッジ(動態比色法、感度域 0.005〜10 EU/mL等)、Control Standard Endotoxin(CSE)標準品、LAL Reagent Water
- ほかの方法
- 組換えカブトガニC因子(rFC)法・ゲル化法(LALゲルクロット)
18マイコプラズマ否定試験
無菌試験では検出できないマイコプラズマ汚染を確認する全ロット必須の安全性試験
- 基準の方法
- リアルタイムPCR(NAT)法によるマイコプラズマ核酸検出(薬局方代替法)
- 試薬・資材
- 試薬: Roche MycoTOOL Mycoplasma Real-Time PCR Kit(06495605001、160 PCR分。内部コントロール・キャリアDNA同梱)または Thermo Fisher MycoSEQ Mycoplasma Detection Kit(4460623)、核酸抽出は MagNA Pure/PrepSEQ
- 代表的なメーカー
- RocheThermo Fisher
- ほかの方法
- 培養法(寒天平板・液体培地)・指標細胞・DNA染色(Hoechst)法
19純度・力価/生存率
目的細胞の純度・同一性を系統マーカーで確認し投与量根拠の細胞数と生存率を測る。
- 基準の方法
- 系統特異マーカーのフローサイトメトリーによる純度・同一性評価+生存率
- 試薬・資材
- 試薬: 系統マーカー抗体(例 心筋 anti-cTnT〔BD 565744〕、RPE anti-PMEL17/anti-TYRP1、NK anti-CD56〔BioLegend 318304〕)、生死判別に BD 7-AAD(559925)または ChemoMetec Via1-Cassette内蔵 AO/DAPI
- ほかの方法
- アクリジンオレンジ/PI法 自動カウント・免疫蛍光/ハイコンテントイメージング・機能的力価アッセイ
19工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ19工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。