Integrated DNA Technologies(IDT)とAldevronは11月4日、塩基編集とプライム編集向けの研究用グレードmRNAを発売した。プライム編集酵素の「PE Ultra mRNA」、ABE8e(アデニン塩基編集酵素)系の在庫品mRNA6種、6種を並行して試せるスクリーニングキットを揃える。ともにDanaher傘下の両社は、9月に出したCas9 mRNAに続くラインアップと位置づけている。
プライム編集側はPE Ultra mRNAと化学修飾pegRNAの組み合わせ
PE Ultra mRNAは、改変したプライム編集酵素を載せたmRNAである。組み合わせるpegRNA(プライム編集ガイドRNA)には独自の化学修飾パターンを入れたとしている。IDTの公表データでは、HEK293細胞に6 bpの挿入を狙った比較で、市販のPEmaxより高い編集活性を示した。
pegRNAの設計用バイオインフォマティクスツールも無料で用意した。送達はエレクトロポレーションとLNP(脂質ナノ粒子)に対応し、それ以外の方法は検証していないとしている。
ABE8e系6種で、PAMと特異性の組み合わせを並行評価
塩基編集側は、ABE8eをnCas9、nSpG、nSPRYと組み合わせた3種に、V106Wバリアント版の3種を加えた計6種を在庫品で揃えた。対応するPAM(プロトスペーサー隣接モチーフ)はNGG、NGN、NRNで、PAMの制約で絞られる座位と編集活性のばらつきに、構成の選択肢で応じる組み立てだ。V106Wは、オンターゲットの活性を保ちつつ周辺の塩基も変わるバイスタンダー編集を抑える目的で報告されたバリアント(Gaudelli et al., 2020)。
スクリーニングキットは6種を各20 µgで束ねたもので、同じ標的に6通りを1回で並べられる。併せて発売したAlt-R Cas9 sgRNA XTは、2'-O-メチル修飾を増やし、分解を抑えたとするガイドRNAで、2〜100 nmolで供給する。
研究用グレードの在庫品は20 µg〜1 mg、それ以上はAldevronのカスタム製造
今回の製品は研究用グレードで、20 µg〜1 mgのスケールで注文できる。塩基編集酵素mRNAは20 µg・100 µg・1 mgの形態で、在庫品は最短1営業日で出荷するとしている。これより大きいスケールはAldevronのカスタム注文に回る。Aldevronは研究用グレード(RG)とCGMPの製品を扱い、9月16日に発売したS.p. Cas9 mRNAでは、スケールを上げたCGMP製造版への道筋を示していた。
実務の確認ポイント研究用グレードからCGMPグレードへの切り替えにおける留意点
mRNAで編集酵素を入れる場合、細胞内の酵素量は加えたmRNA量だけでは決まらず、どれだけ翻訳されるかにも左右される。ロットを受け入れる段では、CoA(試験成績書)をロット番号から引いて、キャップ率、dsRNA、残存鋳型DNA、ポリAテール、完全性のどれが規格項目でどれが参考値かを押さえておきたい。
スケールを上げるときは、キャップの付け方と修飾ヌクレオシドの構成が研究用グレードと同じかを、Aldevronのカスタム製造の仕様で確かめることになる(研究用試薬からGMPグレードへ)。pegRNAとsgRNAの修飾パターンは独自とされているため、ほかの供給元と並べるときは編集効率とオフターゲットの実測値で比べる必要がある。
6種のどれを選ぶかで、PAMとガイドRNAの配列が変わり、オフターゲットの候補部位も入れ替わる。スクリーニングの段で選び切っておけば、塩基編集・プライム編集の製造に移ったあとで評価を組み直す手戻りを避けられる。塩基編集のオフターゲット評価では8月26日にも、MaxCyteがCHANGE-seq-BEとONE-seq-BEを投入している。
※ 本ページは2026年11月4日のIntegrated DNA Technologiesの発表をもとにした紹介です。詳細・数値は一次情報もあわせてご確認ください。