製造工程を決めている7項目のうち4番目

ウイルスを減らす工程を組む

不活化と除去を組み合わせ、試験で減り方を示す

いつまでに
精製の条件と運転範囲を固めたあと、治験届の品質の資料をまとめる前
関わる人
プロセス開発(精製)・品質保証・薬事・受託試験会社

この項目で確かめること7項目

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終えたときに手元にあるもの工程ごとの LRV、合計に入れた行と外した行の理由、縮小モデルの条件を実機と並べた表

なぜ必要か

動物細胞の培養ではウイルスの混入が実際に起きていて、製品の検査だけでは見落としうるため、入ってしまっても製造工程で減らせることを、工程ごとの試験で数字にしておく必要があるからです(ICH Q5A(R2))。業界で匿名で共有された18件の混入事例の多くは、CHO 細胞の培養で起きていました。

見落としやすいこと

  • 工程ごとの対数減少値(LRV)を足した合計は、止め方が同じ工程を重ねたり、1桁程度以下の小さな低減を足したりすると、実力より大きく見えます。
  • 凝集した粒子を含むウイルスの標品は、ろ過で本来より止まりやすく、ろ過工程を実態より強く見せます。
  • 長い保持やろ過の工程では、ウイルスが時間とともに感染力を失うことがあり、同じ時間置いただけの対照と比べないと、工程の力と取り違えます。
  • 連続生産では、流れ続ける液のすべてに決めた保持時間を経験させる必要があり、滞留時間の分布を実測しておかないと保持時間を説明できません。

進め方

  1. 精製の工程ごとに、ウイルスを壊すのか止めるのかを書き出し、膜を持たないウイルスを除ける工程があるかを確かめます。

  2. 低 pH 不活化とウイルスろ過の条件と運転範囲を、自社の抗体で決めます。

  3. 実機の条件と並べた縮小モデルを用意し、運転範囲の端を含む試験計画を受託先と合意します。

  4. 試験の結果を受け取り、合計に入れる行と外す行を理由とともに決めます。

  5. 結果を治験届や申請の資料に載せ、工程を変えたときに試験をやり直すかを変更管理で判断する手順に入れます。

判断の分かれ目

こういうときこうする

こういうとき合計の大部分が同じ原理の工程から来ているとき

こうする止め方の違う工程を足すか、ウイルスろ過のグレードを見直します。

こういうとき抗体が酸に弱く、pH 3.5 前後で凝集体が増えるとき

こうするpH を少し上げて時間を延ばす、温度を下げる、緩衝液を見直すといった手で条件の窓を探し、足りなければ界面活性剤を使う不活化なども検討します。

こういうとき似た製品で取ったウイルスクリアランスのデータがあるとき

こうするICH Q5A(R2) の改訂で事前の知識を使える考え方が入りましたが、工程の仕組みと条件が十分に似ていることをデータで示せるときに限って使います。

どんな方法があるか

  • 低 pH 不活化Protein A の溶出液を酸性で保持し、膜を持つウイルスの感染力を失わせる
  • ウイルスろ過大きさでウイルスを止め、膜を持たないパルボウイルスにも効く
  • 陰イオン交換(AEX)フロースルーウイルスを樹脂に付け、抗体を素通りさせる

自社でできるか、外に出すか

本物のウイルスを扱うため専用の設備と経験が要り、試験の多くは専門の受託試験会社に出します。出したあとも、ウイルスの選び方と縮小モデルの代表性を確かめる責任は依頼した側に残ります。

外に出すとき、先に相手に確かめること

  1. どのモデルウイルスを、なぜ選んだのか
  2. 縮小モデルが実機を代表していることを、どのデータで示すのか
  3. 運転範囲の端でも試験するか
  4. 繰り返し使う樹脂やフィルターで、使い込んだあとの除去能と持ち越しをどう扱うか
  5. 加えたウイルスの量と、「以上」となった行の検出の限界を報告書に書くか

読んで確かめる4本

まずこれ約5分

ウイルスクリアランス報告書の読み方:合計の桁より先に見る点

報告書の合計が8桁でも、実力が8桁とは限りません。足してよい工程とだめな工程、縮小モデルが実機とずれる場面、受託先に聞くことと、報告書を受け取ったときに確かめる点を、混入事例とあわせて解説します。

詳しく分かる項目:工程の組み合わせ・効果のある工程の目安・縮小モデルの再現度・繰り返し使う樹脂とフィルター

約4分

LRVは工程ごとに足し算していい?足せる工程と足せない工程

ウイルスクリアランス試験のLRVを工程ごとに足して合計してよいかを解説します。足せるのは止め方が違う工程どうしだけです。ウイルスごとに合計が違う理由、「以上」と書かれた数字の読み方、報告書で確かめる点をまとめました。

詳しく分かる項目:合計の数え方

約6分

低pHウイルス不活化とは?酸に置く条件の幅が狭いのはなぜか

低pHウイルス不活化は、抗体の精製でProtein Aの溶出液を酸性のまま置き、膜を持つウイルスの感染力を失わせる工程です。効くウイルスと効かないウイルス、pHと時間の幅が狭い理由、抗体ごとに条件を決め直す理由、モデルウイルスでの確かめ方、連続生産での難しさを解説します。

このテーマを順に学ぶ

抗体医薬の精製(下流工程)全12回・約68分

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この項目の記事は第10回「ウイルスクリアランス報告書の読み方:合計の桁より先に見る点」です。

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