抗体医薬(抗体フラグメント)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける18 / 18 工程
細胞構築・発現
1宿主・コンストラクト設計
糖鎖不要なFabを大腸菌で安価に作り、鎖間ジスルフィドを正しく組ませる発現様式の選択。
- 基準の方法
- E. coli ペリプラズム分泌発現
- ほかの方法
- 細胞質酸化的フォールディング発現・封入体発現+in vitroリフォールディング・メタノール資化酵母分泌発現
培養・産生
2本培養・発現誘導
高密度まで増やしてから誘導し、早期溶菌とプロテアーゼ分解を抑えて収量と品質を両立させる運転管理。
- 基準の方法
- 規定培地によるフェドバッチ高密度培養
- 試薬・資材
- 発酵用炭素源・誘導物質(グリセロール・メタノール・グルコース等バルク原料)発現誘導試薬(IPTG・オートインダクション用ラクトース)消泡剤(アンチフォーム)トレースメタル・微量元素混合液(規定最少培地用)
- ほかの方法
- 連続灌流/高密度植菌・回分(バッチ)培養・PATリアルタイム制御
回収・清澄化
3菌体回収・ペリプラズム抽出
蓄積した目的物の遊離法を誤ると宿主タンパク・DNAが混入し後段精製負荷が跳ね上がるため。
- 基準の方法
- 遠心による菌体回収 → ペリプラズム抽出(浸透圧ショック/熱抽出)→ 遠心・深層ろ過で清澄化
- 試薬・資材
- ヌクレアーゼ(ベンゾナーゼ等)
- ほかの方法
- 全細胞高圧破砕・TFFによる清澄化・菌体除去・封入体洗浄+可溶化
4清澄化・デプスろ過
濁った抽出液は樹脂目詰まりを起こすため、捕捉前に清澄化が必須
- 基準の方法
- ディスクスタック遠心後のデプスろ過(グレード密度+珪藻土含有メディア)
- ほかの方法
- 代替メーカーのデプスフィルター・遠心レス・デプス+ボディフィード・タンジェンシャルフロー精密ろ過(MF)
精製
5キャプチャー
Fc非保有のFabを軽鎖/CH1で特異捕捉し、宿主不純物・DNA・エンドトキシンを一段で除く。
- 基準の方法
- 軽鎖/CH1ドメイン特異的アフィニティクロマトグラフィー(Fab捕捉)
- 代表的なメーカー
- CytivaMerckRocheThermo Fisher
- ほかの方法
- プロテインLアフィニティ(κ VL結合)・固定化金属アフィニティ(IMAC)・混合モード/イオン交換による非アフィニティ捕捉
6リフォールディング
変性状態のフラグメントを正しい立体へ巻き戻さねば結合活性が出ず、凝集と競合する条件設計が収率を左右。
- 基準の方法
- 段階的脱変性+酸化還元リフォールディング
- ほかの方法
- オンカラム(SEC/IEX)リフォールディング・界面活性剤介在リフォールディング・ペリプラズム分泌へ切替(リフォールド不要)
7ポリッシング
捕捉後に残る凝集体・宿主タンパク・変異体を電荷差で除き医薬品グレード純度に仕上げる工程。
- 基準の方法
- 陽イオン交換
- ほかの方法
- 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)・混合モードクロマトグラフィー・エンドトキシン除去メンブレンアドソーバ(フロースルー研磨)
9ウイルス不活化・バイオバーデン低減ろ過
大腸菌系最大の安全性課題であるエンドトキシンを規格まで落とし、ろ過で微粒子・微生物を除く。
- 基準の方法
- AEX/メンブレンアドソーバによるエンドトキシン・DNA低減 + 0.2 µmバイオバーデン低減ろ過
- ほかの方法
- ウイルス除去ナノろ過・低pHウイルス不活化・エンドトキシン専用アフィニティ/吸着除去
10ウイルス除去ろ過
原料・工程由来の外来性ウイルスをサイズ排除で除去する別の原理の工程
- 基準の方法
- 小孔径ウイルス除去フィルターによるサイズ排除ナノろ過(プレフィルター併用)
- 試薬・資材
- 平衡化/後洗浄緩衝液(製剤近似 pH/伝導度)。プレフィルター(0.1〜0.2µm, 凝集体/粒子除去でフラックス維持)。
- 代表的なメーカー
- MerckSartoriusPallAsahi Kasei
- ほかの方法
- パルボウイルス保持ナノフィルター・二層PESウイルス除去フィルター・汎用ウイルス除去フィルター(レトロ保持)
化学修飾
8PEG化・修飾
小型Fabは腎排泄が速く、ヒンジCysへのPEG部位特異結合で滞留を延ばし投与頻度を下げる。
- 基準の方法
- ヒンジ遊離チオール(システイン)への部位特異的マレイミドPEG化
- 代表的なメーカー
- CytivaNOFJenKemThermo Fisher
- ほかの方法
- 遺伝子融合型半減期延長(PAS/XTEN)・アルブミン結合ドメイン/抗HSA融合・ランダム(アミン)PEG化
製剤・充填
11UF/DF・原薬化・フィル&フィニッシュ
製剤バッファーへ交換・濃縮し安定化剤添加後に無菌充填、凝集・粒子の有無が品質の決め手。
- 基準の方法
- 限外ろ過/透析ろ過
- ほかの方法
- 凍結乾燥(リオフィリゼーション)製剤・高濃度製剤(皮下投与向け)・シングルユース無菌充填/アイソレータ充填
12最終除菌ろ過
充填前バルクの微生物除去のため0.2µm除菌ろ過が必須
- 基準の方法
- 滅菌グレードPES膜による最終除菌ろ過(0.2µm、完全性試験付き)
- 試薬・資材
- 0.2µm滅菌グレードフィルターカートリッジ(PES二層, 0.45+0.2µm)、フラッシング/平衡緩衝液(製剤緩衝液)。
- ほかの方法
- 代替メーカー滅菌グレードPES膜・別構成の滅菌グレードPESフィルター
品質特性・分析
13同定・質量分析
インタクト質量とペプチドマッピングで分子量・全配列・PTMを確認しロット間同一性を担保。
- 基準の方法
- インタクト質量分析
- 試薬・資材
- ペプチドマッピング用プロテアーゼ・消化酵素(MSグレード)還元剤・アルキル化剤(DTT/TCEP/IAA・分析グレード)分析用酵素(IdeS/IgdE/PNGase F・脱グリコシル化/サブユニット切断)HPLC/UHPLC・LC-MS用移動相溶媒(グラジエントグレード)
- ほかの方法
- N末端配列/アミノ酸組成分析・ミドルアップ/サブユニット質量分析・ネイティブMS/CE-MS
14サイズ変異体・SEC
免疫原性に直結する凝集体含量とモノマー純度を測り規格内をロットごとに確認するCQA測定。
- 基準の方法
- サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC/UPLC)によるサイズ変異体定量
- 代表的なメーカー
- AgilentWatersWyattBeckman CoulterTosoh
- ほかの方法
- SEC-MALS(絶対分子量/凝集体)・分析用超遠心(AUC, 沈降速度)・AF4/DLS
15純度・CE-SDS
重鎖断片と軽鎖のジスルフィド結合が正しく組まれ遊離鎖・断片が無いかを定量する鎖完全性評価。
- 基準の方法
- CE-SDS(キャピラリーゲル電気泳動、非還元&還元)
- ほかの方法
- SDS-PAGE(クマシー/銀染色)・還元/非還元ペプチドマップ照合・マイクロチップ電気泳動
16電荷変異体・icIEF
脱アミド等が変える電荷を等電点で分離定量し、酸性・塩基性ピークのロット間安定性を確認。
- 基準の方法
- イメージドキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)
- 試薬・資材
- 両性担体・pIマーカー(IEF試薬)
- ほかの方法
- 陽イオン交換クロマトグラフィー(CEX/WCX)・icIEF-MS/CE-MS連結(オンライン同定)・キャピラリーゾーン電気泳動(CZE)
17結合活性・力価
標的への結合速度論を測り効く分子かを機能面で証明する、出荷判定に必須の力価試験。
- 基準の方法
- 表面プラズモン共鳴(SPR)による結合速度論/相対力価測定
- ほかの方法
- 結合ELISA(相対力価)・細胞ベースバイオアッセイ・バイオレイヤー干渉法(BLI)
18残存不純物・品質管理
大腸菌由来の残存HCP・DNA・エンドトキシンと無菌性を高感度で定量し患者安全を担保。
- 基準の方法
- HCP-ELISA
- ほかの方法
- LC-MS/MSによるHCP同定・定量・組換えC因子(rFC)法エンドトキシン・リガンドリーク/残存PEG測定
18工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ18工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。