核酸医薬(mRNA-LNP)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける20 / 20 工程
合成・反応
1テンプレート直鎖化
切れ残りはリードスルーでdsRNAと過長鎖を生むため、直鎖化率と超らせん残存率を出荷前に確認する。
- 基準の方法
- アガロース/キャピラリーゲル電気泳動による直鎖化率・超らせん残存率の確認
- ほかの方法
- qPCRによる直鎖化率/テンプレート完全性評価・分取クロマト/沈殿による線状化プラスミド精製・UV吸光による濃度・純度確認
2IVT・mRNA合成
Mg2+やNTP比で収量・完全性・dsRNA量が変わるため、AEX-HPLCで反応進行を見て止めどきを判断する。
- 基準の方法
- T7 RNAポリメラーゼによるIVT+陰イオン交換(AEX)-HPLCでの反応モニタリング
- ほかの方法
- ラテラルフロー/迅速IPC・UV(A260)経時測定・co-transcriptional capping(IVTと同時にキャップ付加)
3キャッピング
未キャップmRNAは翻訳されず炎症源になるため、Cap1の正しい付加率をLC-MSで定量する工程。
- 基準の方法
- 酵素消化+逆相/イオンペア逆相LC-MSによる5'キャップ構造同定とキャッピング効率定量
- ほかの方法
- リボザイム/DNAzymeによるキャッピング効率アッセイ・Vaccinia系酵素キャッピング+2'-O-メチル化(Cap1化)・IP-RP-UHPLC/UVによる5'断片プロファイリング
精製
4テンプレートDNA除去
鋳型DNAを分解して反応を止め、安全性不純物となる残存DNAをqPCRで規格内に抑える工程。
- 基準の方法
- DNase I消化によるテンプレート分解+qPCRでの残存DNA定量
- ほかの方法
- 蛍光色素(PicoGreen)による残存DNA定量・イムノアッセイ系残存DNA測定・後段クロマト/TFFによる物理的DNA除去
5捕捉前コンディショニング/緩衝液交換
高濃度の塩・NTP・酵素を含むIVT反応液は親和捕捉に直接負荷できないため
- 基準の方法
- 中空糸TFFによる濃縮・透析濾過(100 kDa MWCO、ssRNA用)で捕捉前の緩衝液交換と脱塩を実施
- 試薬・資材
- 注射用水(WFI)・精製水製造装置
- ほかの方法
- LiCl/酢酸アンモニウム沈殿による濃縮・脱塩・平膜カセットTFFによる濃縮・透析濾過
6キャプチャー精製
ポリA尾部を釣り針にdT樹脂で全長mRNAだけを捕捉し、不完全鎖や酵素を洗い流す精製の中核。
- 基準の方法
- オリゴ(dT)リガンド親和性クロマトグラフィー(ポリA捕捉)
- ほかの方法
- イオンペア逆相HPLC(IP-RP)分取精製・コア/マルチモーダルクロマトグラフィー・セルロース/エタノール処理によるmRNA濃縮・精製
7dsRNA除去・定量
dsRNAは強い自然免疫を誘発し効力を下げるが落ちにくいため、専用除去とJ2抗体での定量が要る。
- 基準の方法
- セルロース/IP-RP-HPLCによるdsRNA除去+J2抗dsRNA抗体イムノアッセイ
- 代表的なメーカー
- Nordic-MUbioBio-RadAgilentMolecular DevicesSartorius
- ほかの方法
- RP-UHPLC/UVによるdsRNA定量・バイオレイヤー干渉法(BLI)によるdsRNA検出・ドットブロット/イムノブロットによる定性確認
8UF/DF・バッファー交換
塩・低分子・エタノールを抜き目的濃度と組成へ整える、LNP化と保存安定性を左右する仕上げ工程。
- 基準の方法
- 限外濾過/透析濾過(UF/DF, TFF)によるバッファー交換と濃縮
- 試薬・資材
- 注射用水(WFI)・精製水製造装置
- ほかの方法
- シングルパスTFF(SPTFF)・サイズ排除/脱塩クロマトグラフィー・透析
製剤・充填
9脂質相・水相調製
微小流体混合の前に水相・脂質エタノール相をN/P比通りに精密調製する必要があるため
- 基準の方法
- mRNA原薬を低pH酢酸/クエン酸緩衝液(pH4〜5)へ希釈調製し、別途エタノールに溶かした脂質相を用意する二相調製(マイクロ流体での急速混合に備える前段)
- ほかの方法
- クエン酸緩衝液系での水相調製・脂質を予混合し単一脂質相として供給
10LNP封入・ミキシング
水相mRNAと脂質相を急速混合し粒子を自己組織化させる、粒径・均一性・封入率を決める核心工程。
- 基準の方法
- マイクロ流体(または乱流ジェット)急速混合によるLNP自己組織化
- ほかの方法
- T字/衝突ジェットミキサー(乱流混合)・プレフォームドベシクル(PFV)法・高圧マイクロフルイダイゼーション
11エタノール除去・濃縮
残留エタノールと低pHを除去し生理的pHの最終緩衝液へ交換しないと製剤化できないため
- 基準の方法
- 希釈・中和後に平膜カセットTFF
- ほかの方法
- 中空糸TFFによるエタノール除去・透析濾過・濃縮・高pH緩衝液への即時希釈・中和+透析(小スケール)
12フィル&フィニッシュ
0.2µm除菌ろ過と無菌充填を行い、壊れやすいLNPを凍結/凍乾の条件最適化で安定化する工程。
- 基準の方法
- 0.2µm除菌ろ過+無菌充填(必要に応じ凍結乾燥/凍結)
- ほかの方法
- 凍結(−20〜−70℃)保存での液剤供給・噴霧乾燥/薄膜乾燥・ろ過困難な大粒径系での無菌操作製造
品質特性・分析
13インテグリティ評価
断片化したmRNAは翻訳されず効力が落ちるため、CGEで全長率(%全長)を測り品質指標とする。
- 基準の方法
- キャピラリーゲル電気泳動(CGE)による全長率・スメア解析
- 試薬・資材
- mRNA キャップ/ポリA・完全性評価
- ほかの方法
- IP-RP-HPLC/UVによる完全性プロファイリング・変性アガロース/グリオキサールゲル電気泳動・RIN等の自動スコアリング
14同一性・配列確認
取り違えや変異を防ぎ狙った配列であることを確認する、安全性・有効性に直結する同一性試験。
- 基準の方法
- 逆転写シーケンシング(次世代シーケンス/RT-PCR)による配列同一性確認
- ほかの方法
- LC-MSによるオリゴマッピング/配列確認・RT-qPCRによる同一性確認・制限/プローブハイブリダイゼーション
15ポリA尾部解析
ポリA尾部長は安定性と翻訳効率を左右するため、その分布が狙い通りかをHPLC/MSで確認する。
- 基準の方法
- 酵素消化+IP-RP-HPLC/LC-MSによるポリA尾部長解析
- ほかの方法
- DNAzyme法によるキャップ+ポリA同時解析・高分解能キャピラリー電気泳動・オリゴdT切り出し+ゲル解析
16粒径・ゼータ電位
粒径・PDI・ゼータ電位は体内分布・取り込み・安定性を左右するため、出荷ごとにDLS/ELSで測る。
- 基準の方法
- 動的光散乱(DLS)による粒径・PDI、電気泳動光散乱によるゼータ電位
- 試薬・資材
- LNP(脂質ナノ粒子)粒子特性評価
- ほかの方法
- ナノ粒子トラッキング解析(NTA)・クライオ電子顕微鏡(cryo-TEM)・SEC-MALS/FFF-MALS
17封入率・含量
裸のmRNAは不安定で免疫を刺激するため、含量と粒子内封入率(EE%)をRiboGreenで規格確認する。
- 基準の方法
- Quant-iT RiboGreen蛍光アッセイ
- 装置
- プレートリーダー
- ほかの方法
- CGE-LIF(レーザー誘起蛍光検出キャピラリーゲル電気泳動)・UV(A260)併用の遊離/総RNA定量・サステナブル界面活性剤を用いたRiboGreen改良法
18脂質定量・不純物
脂質比と分解物は送達効率・安全性に直結するため、HPLC-CAD/LC-MSで定量と不純物を追う工程。
- 基準の方法
- HPLC-荷電化粒子検出(CAD)/LC-MSによる脂質定量・不純物プロファイル
- ほかの方法
- RP-HPLC-ELSD(蒸発光散乱検出)・薄層クロマトグラフィー(TLC)・核磁気共鳴(NMR)
19ポテンシー試験
細胞に入れ標的タンパク質を作れるかを測る、製品の真の効き目とロット間一定性を保証する効力試験。
- 基準の方法
- 細胞ベースin vitro発現アッセイ
- 試薬・資材
- ELISA
- 代表的なメーカー
- Bio-RadPromegaMolecular DevicesBDApplied Biosystems
- ほかの方法
- レポーター(ルシフェラーゼ/eGFP)発現アッセイ・qRT-PCRによる細胞内取り込み/発現評価・ウエスタンブロットによる発現タンパク質確認
20一般・安全性試験
pH・浸透圧・外観・無菌・エンドトキシンは注射剤として患者投与に必須の出荷規格項目。
- 基準の方法
- 薬局方準拠の一般試験(pH/浸透圧/外観/無菌試験/エンドトキシン試験(LAL))
- 試薬・資材
- 無菌試験
- ほかの方法
- 組換えファクターC(rFC)法によるエンドトキシン定量・迅速無菌試験(核酸増幅/呼吸代謝法)・サブビジブル粒子試験(光遮蔽/フローイメージング)
20工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ20工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。