抗体医薬(抗体薬物複合体)の工程チェックリスト
検討する工程に印を付けて、規模と用途を書けば、仕様メモにして代理店やメーカーへ渡せます。工程ごとの詳しい説明は工程マップにあります。
2規模と用途
3検討する工程に印を付ける19 / 19 工程
培養・産生
1本培養・上流
ADCの土台となる抗体を、狙った量と品質で安定に得るための起点工程
- 基準の方法
- CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞による流加(フェドバッチ)培養
- ほかの方法
- 灌流(パーフュージョン)培養・NS0/Sp2/0(マウスミエローマ)細胞発現・HEK293細胞発現(一過性または安定)
2ハーベスト・清澄化
培養液から細胞と微粒子を除き、Protein A負荷に適した清澄液を得るため
- 基準の方法
- 遠心分離後の二段デプスフィルトレーション(粗ろ過→精密ろ過)+0.2µmバイオバーデン低減ろ過
- 代表的なメーカー
- MerckSartoriusPallAlfa LavalGEA
- ほかの方法
- Clarisolveによる前処理凝集+単段デプスろ過・連続遠心分離による一次清澄化・音響波(アコースティック)細胞分離
精製
3キャプチャー
培養液中の大量の不純物からFcを特異捕捉し、純度を一気に引き上げる工程
- 基準の方法
- Protein Aアフィニティクロマトグラフィー(バインド&エルート)
- ほかの方法
- プロテインL/プロテインG キャプチャ・陽イオン交換(CEX)キャプチャ・Protein A 膜・繊維(コンベクティブ)キャプチャ
4ウイルス不活化
Protein A溶出後にエンベロープウイルスを酸性条件で不活化する必須のウイルスクリアランス工程
- 基準の方法
- 酢酸でpH3.3〜3.6に調整し室温で30〜60分以上ホールド、その後Trisで中和(pH5前後)
- 試薬・資材
- 中和バッファ(pH中和液)
- ほかの方法
- 界面活性剤(溶媒/洗剤)ウイルス不活化・連続式低pHウイルス不活化
5ポリッシング
残存するHCP・DNA・凝集体・ウイルスを削り、安全な原薬抗体に仕上げる工程
- 基準の方法
- イオン交換
- ほかの方法
- 混合モード(マルチモーダル)クロマトグラフィー・AEX膜吸着体(フロースルー)・連続/マルチカラム(MCC)ポリッシング
6ウイルス除去ろ過
ポリッシング後にパルボ等の小型ウイルスをサイズ排除で物理除去する必須工程
- 基準の方法
- 20nmクラス中空糸ウイルス除去フィルターによる定圧ナノフィルトレーション
- 試薬・資材
- バッファ調製(バッファ供給システム)
- 代表的なメーカー
- MerckSartoriusPallAsahi Kasei
- ほかの方法
- 平膜型ウイルス除去ろ過(PVDF/PES平膜)・次世代中空糸(高流束)ろ過
10限外ろ過・ダイアフィルトレーション
遊離薬物・溶媒を膜で除去し、最終処方バッファーと濃度に整える精製工程
- 基準の方法
- 接線流ろ過(TFF)によるUF/DF(濃縮+バッファー交換、遊離薬物・溶媒クリアランス)
- ほかの方法
- 活性炭処理(チャコール吸着)・脱塩/サイズ排除(SEC)クロマト・疎水性吸着クロマト(樹脂)
コンジュゲーション
7部分還元
鎖間ジスルフィドを部分還元しチオールを露出、DARの起点を精密制御する工程
- 基準の方法
- TCEP(または DTT)による鎖間ジスルフィドの部分還元
- ほかの方法
- DTT(ジチオトレイトール)還元・リジン(アミン)結合系では還元不要・部位特異的結合(操作システイン/酵素タグ)
8薬物リンカーの結合
露出チオールに薬物リンカーを付加し、狙いのDARに合わせ込む結合工程
- 基準の方法
- マレイミド系薬物リンカーの付加(システイン結合型コンジュゲーション)
- 試薬・資材
- ADC薬物リンカー(ペイロード)ADC細胞毒性ペイロード(MMAE/DM1/DXd等)ADCリンカー・ビルディングブロック(vc/SMCC/PEG)コンジュゲーション用 有機溶媒(DMA・DMSO・DMF)
- ほかの方法
- リジン-NHSエステル結合・酵素的部位特異的結合(トランスグルタミナーゼ/Sortase)・再架橋型リンカー(disulfide re-bridging)
9クエンチ(反応停止)
結合反応後に未反応の薬物リンカーをクエンチし過剰ペイロードを除去前に不活化する工程
- 基準の方法
- N-アセチル-L-システイン(NAC)添加によるマレイミドクエンチ(未反応マレイミド比で過剰添加)
- 試薬・資材
- ADCクエンチ試薬(NAC・NEM)
- ほかの方法
- L-システインによるクエンチ・N-エチルマレイミド/ヨードアセトアミドによる残存チオールのキャップ
製剤・充填
11フィル&フィニッシュ
壊れやすいADCを凍結乾燥等で安定化し、長期保存に耐える形に仕上げる工程
- 基準の方法
- 無菌ろ過後のバイアル充填と凍結乾燥(リオフィリゼーション)
- ほかの方法
- 液剤(冷蔵 2–8℃)処方・凍結原薬(DS frozen)保管
品質特性・分析
12DAR測定
効き目と安全性を左右する最重要品質特性、平均DARと搭載分布を測る工程
- 基準の方法
- 疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によるDAR・薬物搭載分布測定
- ほかの方法
- UV/Vis(二波長)法によるDAR・逆相LC-MS(native RPLC-MS含む)・ネイティブ/還元サブユニットMS
13質量分析・ペプチドマッピング
薬物が正しい場所に正しい数だけ付いたかを質量で精密確認する構造同定工程
- 基準の方法
- LC-高分解能MS
- 試薬・資材
- ペプチドマッピング用プロテアーゼ・消化酵素(MSグレード)分析用酵素(IdeS/IgdE/PNGase F・脱グリコシル化/サブユニット切断)還元剤・アルキル化剤(DTT/TCEP/IAA・分析グレード)
- ほかの方法
- ミドルダウン/ミドルアップMS・N型糖鎖プロファイリング・脱グリコシル化後インタクトMS
14SEC/純度試験
効力低下や免疫原性の元となる凝集体量と単量体割合を測る純度試験工程
- 基準の方法
- サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)による凝集体・単量体定量
- ほかの方法
- CE-SDS(還元/非還元)・SEC-MALS・分析超遠心(AUC-SV)
15電荷不均一性/icIEF
脱アミドや薬物結合による電荷変化を分け、酸性・塩基性変異体量を測る工程
- 基準の方法
- イメージドキャピラリー等電点電気泳動(icIEF)による電荷変異体プロファイリング
- 試薬・資材
- 両性担体・pIマーカー(IEF試薬)
- 代表的なメーカー
- ProteinSimpleBio-TechneSCIEX
- ほかの方法
- イオン交換クロマト(CEX/AEX-HPLC)・従来型cIEF・CZE(キャピラリーゾーンEP)
16遊離薬物定量
全身毒性の原因となる未結合薬物や分解物を高感度で測り規格内を確認する工程
- 基準の方法
- 逆相HPLC(必要に応じLC-MS/MS)による遊離薬物・関連低分子の定量
- ほかの方法
- 固相抽出+LC-MS/MS・残留溶媒GC(ヘッドスペース)・ELISA(遊離/総薬物)
17力価/結合性試験
標的結合と細胞殺傷力を測り、ロットごとの効力が一定であることを保証する工程
- 基準の方法
- 細胞ベース細胞傷害(抗増殖)アッセイ+標的結合アッセイ(ELISA/SPR)
- ほかの方法
- 内在化アッセイ・FACS結合アッセイ・レポーター遺伝子アッセイ
18工程由来不純物試験
残存HCP・DNA・Protein A漏出を高感度測定し規格以下まで除けたか確認する工程
- 基準の方法
- 宿主細胞タンパク(HCP)ELISA+残存DNA qPCR+Protein A漏出ELISA
- ほかの方法
- HCP LC-MS/MS(直交プロファイリング)・残存DNA 閾値ハイブリダイゼーション・残存溶出/CIP化学物質の管理
19無菌・エンドトキシン試験
注射剤として菌や発熱物質の非混入を保証し、安全な投与を担保する必須工程
- 基準の方法
- 無菌試験+細菌内毒素試験(LAL/カブトガニアメーバ様細胞ライセート)
- 試薬・資材
- 無菌試験
- ほかの方法
- 組換え試薬による方法(rFC/rCR)・迅速微生物試験(RMM)・単球活性化試験(MAT)
19工程を選んでいます。仕様メモでは、宛先・条件・確認したいことを書き足して、PDF やメールで渡せます。
選んだ19工程で仕様メモを作る公開情報にもとづく一般的な整理です。基準の方法とメーカーは代表例で、推薦ではありません。実際に要る工程と装置は、規模と規制の方針で変わります。